心地よい「毒」
column vol.229
うっせぇうっせぇうっせぇわ♫
18歳の女性シンガー「Ado」さんが歌う『うっせぇわ』が旋風を巻き起こしています。私の妻も、最近イヤなことがある度に「うっせぇうっせぇうっせぇわ♫」と歌っているので、私の頭の中でリフレインが止まりません。
しかし、このヒット曲について、子どもたちが「歌詞を真似したら困る」など、大人世代から反対の意見も多く寄せられているそうです…。
上下社会を生きる若者(子ども)たちの鎮魂歌
〈現代ビジネス / 2021年3月1日〉
ジャーナリストの島沢優子さんのこの曲を
「日本社会のマウント体質へのレジスタンスであり、若者たちの鎮魂歌なのかもしれない」
と考察されています。なるほど、面白いですね。
上下関係が厳しく、子どもを尊敬しない。そういった社会で生きる若者や子どもたちが持つ閉塞感を打ち破る歌として人気が集まっているという感じでしょうか?
なるほど、そうすると子どもが親に何か言われて「うっせぇうっせぇうっせぇわ♫」と返すのは
「いつまでも子ども扱いしないでよ。でも、リアルなトーンで言ったら、親が可哀想だし、冗談半分なテンションで反抗しようっと♫」
という心使いにも感じます。
要するに、子どもたちがうっせぇわを歌うのは、親に愛と気遣いを持ちつつも、頭ごなしに押さえつけられることへのストレスと小さな反撃。
うっせぇわを歌うことを禁止するよりも、リスペクトを伝えた方が歌わなくなるかもしれませんね。
2分40秒のブラックアニメがヒット
テレビ東京系のストップモーションアニメ「PUI PUI モルカー」が快進撃を見せています。
〈日経クロストレンド / 2021年2月16日〉
モルカーとは「モルモット+カー」。モコモコ姿の車のキャラクターです。
朝7時半からという早朝の放送枠、2分40秒という短さにもかかわらず、最新話の放送後には毎回ツイッターでトレンド入りをし続け、ユーチューブの見逃し配信では再生回数が380万回を超える回もあるそうです。
人気の理由は、ブラックだから。
子ども向けのアニメでありながら、スマホを見ながらモルカーを運転する運転手や、銀行強盗をした上にモルカーを盗難する犯人、路上にゴミを不法投棄する運転手など、とにかく愚かな人間たちが次々登場。
キュートに社会風刺する作風に、大人たちがウケているそうです。
私も観てみましたが、まずとにかくビジュアルが可愛い。そしてやわらかい雰囲気。言葉もなく、だからこそ、ふんわり感じさせるブラックユーモアを肯定的に捉えられるのかもしれません。
百聞は一見に如かず。ぜひ作品を観てみてくださいませ。
冒頭のうっせいわも、歌詞だけ見ていると、結構な社会批判にも関わらず、音楽と歌い手の妙が、とても受け入れやすい状況を作っています。
やはり、同じ毒なら心地よい方が良い。クリエーター(アーティスト)の創造力(想像力)が活きた作品ですね。