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小売業「ショールーム型店舗」の是非
column vol.456
コロナ禍で小売業もOMO(Online Merges with Offline)が進んでしますが、最近ではこの流れを象徴するショールーム型店舗が増えています。
ショールーム型とはRaaSとも呼ばれ、ショッピングではなく体験やPRを目的とした店舗。
出店料(商品展示料)をとり、ショッピングはECで行うことで店員は売り上げから解放されて、商品の価値を伝えることに徹することができます。
アメリカの「b8ta(ベータ)」がそのパイオニアで、日本でも蔦屋家電+など、チラホラショールーム型が増えています。
そして今、このショールーム型の是非が議論されています。
今秋話題のショールーム型店舗
ショールーム型店舗は最近で言えば、9月2日に西武渋谷店にオープンした「チューズベースシブヤ」や、大丸東京店に10月6日オープンした「明日見世」に注目が集まっています。
〈SEVENTIE TWO / 2021年10月15日〉
大丸東京店「明日見世」は、D2Cブランドに特化した20ブランドで、3ヵ月に1度入れ替えを行うそうです。
アパレル、化粧品、インナーブランド、タオルブランドなどが取り揃えられ、ほぼ全ての商品でテスターを用意。
販売員は「アンバサダー」と称してブランドの魅力を伝えていきます。
そごう西武のチューズベースはもっと大掛かりです。
店内は2つの展示エリア、D2Cブランドを展開するFABRIC TOKYOの「インセイン」の第1号店、ラウンジエリアの計4つのスペースからなり、ほとんどが百貨店初登場の51ブランドから構成。
展示エリアの商品は全てその場で購入可能で、QRコードから専用サイトにアクセスし、画面上のショッピングカートに入れ会計後にまとめて商品を受け取ることができます。
もちろんECから購入し自宅配送も可能とのことです。
利用客からすれば、売り上げに必死な販売員がそこにはいないわけで、伸び伸びとショッピングすることが可能に。
ショールーム型はこれからの小売業の一つの形になっていくことは間違いないでしょう。
ビジネスモデルとして成立するか?
百貨店のショールーム戦略やOMOストアはまさに時代の風であることは間違いないのですが、厳しい見方もあります。
ビジネスコンサルタントの小島健輔さんは記事でこのようにお話しされています。
百貨店と出店ブランドの力関係だが、こうしたD2Cブランドが百貨店に頭を下げて、売り上げを上げるために出店しているようには思えないのだ。
つまり、百貨店が何とか現状を打破し時代にマッチする形態を模索する中のトライアルで、どちらかというとD2Cブランド側にお願いをして出店もらっている状況であると指摘しています。
小島さんとしては「タダ同然」の出店(参加)料で出てもらっていると読んでおり、なかなかビジネスとして成り立たないのではないかと危惧しております。
確かにD2Cブランドはそこまで潤沢に資金力があるとは言えず、小島さんの仰ることは現実かと思います。
一方、今後はInstagramのCheckoutなど、SNS内で決済できる時代になってくれば益々ショッピングの基軸はデジタルに移行すると予測できます。
間違いなく、リアル店舗は時流に揉まれ取捨選択はされていくにせよ…、購買の主役がECやソーシャルコマースになればなるほど、その反動としてリアルでの顧客体験は必要とされていくような気がしています。
リアル店舗に求めていること
改めてリアルとオンライン、それぞれに求めていることを整理したいと思います。
生活者起点のリサーチ・マーケティング支援を行う株式会社ネオマーケティングが「リアル店舗とオンラインショップ」をテーマに調査が参考になったので共有させていただきます。
〈FASHIONSNAP.COM / 2021年10月11日〉
まず、「普段の買い物における購入場所」についての質問については、「本・CD・DVD」や「衣服・ファッション小物」など全てのジャンルで「主に実店舗」で購入するという回答が最も多かったそうです。
その主な理由としては、「陳列棚にある商品全体を見たいから」が20%強に。
ネオマーケティング社のご担当者は「各店舗独自のレイアウトの陳列棚から商品を選ぶという体験は、ジャンルにかかわらず、実店舗の魅力」と分析しております。
一方「実店舗とオンラインショップ半々で購入する」と回答した人に、その分け方についてさらに質問したところ、「価格」での判断が最も多く、そこに「緊急性」が続く結果に。
この結果を踏まえると、改めてリアル店舗は商品選択の幅を広げてくれる重要な役割があると感じます。
例えば、私がダウンジャケットが欲しいとします。
ECならばダウンジャケットを検索してその中から商品を決定するでしょう。そして買い物は終了です。
一方、リアル店舗ではダウンジャケットを目的に行っても、店舗に並ぶさまざまな商品を見て、「あっ、そういえば、マフラーが欲しかったなぁ」とか「あっ、あのバッグいいなぁ。今のバッグも長くなったし、そろそろ買い換えても良いかも」などなど、意識していなかったものに対する購買のトリガーをつくることができます。
そして、物の陳列だけではなく、店員の提案やアドバイスから潜在的なニーズが引き出せるかもしれません。
そして、商品価値をその人に合わせて伝えられるのも人ならではのことでしょう。
購買の主軸はオンラインに移ったとしても、やはりリアルの体験の場であったり、人は必要になる。
やはり、リアル店舗はリアルの良さを追求しつつ、多少の失敗はあるにせよ、トライ&エラーを繰り返しながらも、OMOの最適解を探らなければならないと思うのです。
今は、まさに過渡期。
失敗を恐れずにチャレンジすることが次の時代の小売業を築いていく上で重要なことだと信じています。
小売業に限らず、答えのない時代だからこそ失敗許容主義を社会全体で包括していくことが肝要ですね。
各企業のOMO戦略を今後も注視しながら、小売業のマーケティング活動をサポートしていきたいと思います。