![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50287718/rectangle_large_type_2_a1800892fd69a8ab49349659b4b328fb.jpg?width=1200)
「働き方」の過渡期
column vol.273
ITmediaビジネスオンラインの【「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか】という記事に色々と考えさせられました。
〈ITmediaビジネスオンライン / 2021年3月9日〉
OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、2019年における日本人の平均年収は3万8617ドル。
米国(6万5836ドル)、ドイツ(5万3638ドル)など先進国から大きく下回っていおり、お隣の韓国(4万2285ドル)と比べてみても、まあまあ低い状況です。
この原因について、個人的に考えさせられた点が2つあります。
「勤勉」には副作用がある
『愛国という名の亡命論』の作者であるフリージャーナリストの窪田順生さんは、日本人の勤勉さは美徳であると前置きしつつも、それによる副作用を指摘しています。
「決められた仕事を忠実にこなすことや、命じられたことをコツコツと続けることは得意だが、頭がコチコチなので何か問題が発生した際に対応を変えられない。柔軟な姿勢でルールや規則を根本的に見直したり、これまで長く続けてきたことをスパッと止めたりすることができないのだ」
確かにマジメさだけが取り柄の私も、ついついルールや定石に縛られると自覚しています。
当社は私と先輩の2人で副社長を務め、二人三脚で経営をしているのですが、私はマジメ(理想主義)、先輩はファジー(等身大主義)と全く相反する特性をお互いが持っているから、とても上手くいっています。
勤勉さに対して気をつけなければならないのは、その熱が高まれば高まるほど、組織は拘縮化してしまうということです。
簡単に言うと息苦しくなり、勤勉であることが目的になってしまう可能性が高いのです。恐らく、なかなか日本の超過労働が改善しないことも、勤勉さゆえ…なのではないかと感じます。
「がんばっていると思われたい」から、ついつい業務がかさんでしまう。そして、時間が無くなり、新たな挑戦が滞ってしまう。当然、勤勉さが充満する組織の中では、失敗を恐れる気持ちも高まります。
勤勉さを美徳に感じている私だからこそ、バランス感は常に気をつけています。
「ずっと上がらない」賃金
「デフレで成長できない」「法人税が高すぎる」など、日本の賃金が上がらない原因は数多あるとは思いますが、日本以外の先進国や、経済成長を果たしている新興国はちゃんと上がっているのが事実です。
この原因にも「勤勉さ」が介在すると窪田さんは指摘します。
一例として、このように語られています。
「例えば、コンビニは顧客のためだと、他国ではありえないほどの豊富な食品や製品を取りそろえ、鮮度がなくなれば廃棄、売れないモノはすぐに引っ込める。そんな過剰サービスが一見すると、モノにあふれた豊かな社会を演出しているが、その高度にはりめぐらされたインフラを支えるため、作業員、ドライバー、コンビニオーナーやバイトは低賃金重労働を強いられている」
クリエイティブの世界でいえば、クライアントに対して複数のデザイン案を提案することが各社の定石になっています。
最低3案ぐらいは当たり前。中には、提案する案の多さをウリにしている企業もあります。
ただ、よくよく考えてみると、何のためのデザイン案かです。マーケティングの目標を叶えるためのデザイン案であって、勤勉さを伝えるためのデザイン案ではないのです。
であれば、成果を出せるデザイン案の構築と、それを裏付ける方法論を開発していく方が得策です。
A:デザイン案はこの一案ですが、必ず目標売上の120%を達成させます!
B:成果が出るか分かりませんが、皆さまが検討しやすいように100案のデザイン案を用意しました
クライアントはどちらの企業を選びたいかということですね。
Aの道を選べば、価格競争や過当な労働提供から解放されるやもしれません。
特に最近はデジタルコミュニケーションが増えてきたいので、成果の見える化ができるようになりました。当社でもこの成果分析をもとにPDCAサイクルを回していくというやり方が徐々に定着し、そのことで新規顧客との繋がりが広がってきています。
もう少し、このムードを高めたいと思い、コロナ禍でも今期はイノベーションを促進するために、賃金のベースアップを踏まえた予算計画を行うことに決めました。
今までは年度末の収支と次の期の予測でベースアップをするかどうかを決めていましたが、(もちろん無理のない程度の上げ幅で)まずは賃金を上げてしまおうというわけです。
もちろん、社内でこの事実をはっきりと伝えます。
売上予測をABC予測で行い、A(確実)、B(ほぼ確実)、C(提案次第で受注)で明確にした上で、ベースアップを図ります。
売上を見込めたら賃金を上げる(期待)ではなく、賃金を上げたうえでダメだったら下げる(損出)。「得られる利益よりも、失うことによる苦痛の方が大きい」というプロスペクト理論にもとづいたベースアップ計画です(笑)。
下げないどころか、さらに来期はベースアップしていくために、本質を見極め、自社の付加価値を高めるためにイノベーションを引き起こしていく。
コロナ禍だからこそ、攻めの一年にしたいと考えています。
就活生が企業選びに重要視する点とは?
最後は、これから希望を持って社会に飛び込もうとする就活生の話です。
今、就活生が重要視するのは「リモートワークができるかどうか」のようです。
〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2021年4月12日〉
2022年卒業の就活生ら1220人が回答したアンケート(ベネッセiキャリアが2021年2月から3月に実施)では、全体の15%が「コロナの影響で希望の勤務地に変化があった」と回答。
そのうち3人に1人が「東京など大都市から、それ以外のエリアも検討するようになった」と答えています。
さらに、「就職活動をするにあたり、勤務先はリモートワークができる企業がいいですか?」という質問には、「リモートワークができる企業の方がいい」が22%、「できればリモートワークできる企業の方がいい」が36%。
リモートワークができる企業を希望する就活生は約6割に上りました。
記事を読んでいても、組織へのロイヤルティよりも「個」の集合体としての組織という輪郭がくっきりと見えてきます。
今後は、企業は1つの人格として存在するというよりは、プラットフォーム(ユニット)に近くなっていくのでしょうね。
戦後復興経済の成功体験が未だ色濃く残る日本。いよいよコロナ禍によって、次の働き方のステージへ進化していくのでしょうか?
働き方の過渡期である今、どのように経営の舵をとっていくのか。結構重要なターニングポイントと言えるでしょう。