
「小売業」未来を照らすトピックス
column vol.88
昨日ニュースを見ていたら、百貨店の中間決算が報告されていて、やはり新型コロナウイルスによる外出自粛の影響を受けて、どこも大幅な赤字となっていました。
高島屋が3月から8月までで、昨年対比34.4%減少し2973億円に(最終的な損益は232億円の赤字)。また、大丸松坂屋百貨店やパルコを運営するJ.フロントリテイリングは41.5%減少し3195億円に(最終的な損益は163億円の赤字)。
コロナがいかに大きなインパクトを残したか感じることができます。
高島屋は「2023年までにEC売上倍増」を目標に掲げており、オンラインシフトは高島屋以外の会社でもますます進んでいきそうです。
ということで、今日はオンラインシフトの最新事例をご紹介したいと思います。
「カスタマイズとデジタルを重視!」 の次世代店舗
まずはリーバイスの事例です。アメリカで「NextGen」というカスタマイズとデジタルに力を入れた店舗を増加させているようです。
〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2020年10月13日〉
新型コロナウイルスが続く中、安全を最優先しており、新たな店舗ではカーブサイド・ピックアップやパーソナル・ショッピングの予約、オンラインで購入した商品を店舗で受け取るサービスも提供しています。
そして、「カスタマイズ」や「お直し」は個性やサスティナブルであることを重要視するZ世代に刺さりますし、デジタルを使った「体験型ショップ」は、まさに今のトレンド。日本での展開も楽しみですね。
実店舗が無いのにフォロワー約1400万人!
続いては中国からの話題です。ファストファッション「SHEIN」がアメリカの10代の若者の間で大人気とのことです。
〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2020年10月13日〉
米投資銀行パイパー・サンドラーの調査によると、高収入世帯の10代の若者が好きなeコマースサイト・ランキングで、SHEINは2位(アメリカ48州9800人の10代の若者を対象に調査を実施。平均年齢は15.8歳)。
さらには、インスタグラムのフォロワー数が約1,400万人もいるのですが、なんと実店舗はありません。代わりに、さまざまな都市でポップストアを展開しているそうです。
ここで注目したいのが「ポップストア」を効果的に使っているということ。オンラインでは表現できない世界観やリアリティを体験できるための装置となっています。
以前もご紹介しましたがRaaS(Retail as a Service)のキーとなるのが「体験」です。これこそがリアルの真骨頂。D2CブランドがRaaS店舗にこぞって出店したいのはまさにこの魅力にあります。
OMO(Online Merges with Offline/オンラインとオフラインを併合)こそが小売業の未来。オンラインシフトとともに、オフラインの価値を再設定できるかが肝となるのです。
モノを売ろうとしない「オウンドメディア」
最後は日本から。ユナイテッドアローズ(UA)の事例です。UAのオウンドメディア「ヒトとモノとウツワ」はモノを売ろうとしないオウンドメディアとして注目されています。
〈WWD JAPAN〉
CSRを取り扱ったファンづくりメディアなのですが、ビームスやベイクルーズグループの販売員、そしてノースフェイスの企画担当者など、競合他社の人たちが登場するところに大変共感を持ちます。
「UAの活動に限らず読者にとってファッションそのものに興味を持つきっかけになってほしい」という想いは、とても素敵です。
以前、【「競争」から「共創」する社会へ】という記事を書きましたが、まさに企業の垣根を越えて業界全体を盛り上げることが必要になると強く感じています。
ぜひ、この時の記事も併せて読んでいただけると幸せです。
小売業を約20年間支えてきた人間として「商業施設や小売店に元気になってもらいたい」と想いで始めたnoteですが、最近「Go to」などの影響もあり、私の周りでは少しずつ復調傾向にあります。
クライアントも皆さんの顔にも以前よりかは笑顔が戻ってきている。もちろん、まだまだ課題山積ですが、ポジティブな面にも目を向けて、気持ちを高めながら、これからも小売業を支えていきたいと思います。