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小売業の新たな一手

column vol.417

ライフスタイルブランド「UGG」が昨日、「UGG大阪店」を、日本初のコンセプトストアとしてリニューアルオープンさせました。

〈流通ニュース / 2021年9月10日〉

コンセプトストア自体は、昨年ニューヨークの5番街でにオープンした店舗に次ぐ2号店となります。

このコンセプトストアは、今後「リアル」のキーポイントになります。

小売で高まる「体験価値」

リニューアルでは、アパレル・コレクションを豊富に取り揃えて、シューズだけではないトータルスタイルを提案。UGGのライフスタイルブランドとしての世界観がより感じられる店に刷新しています。

ストアを通じて、ライフスタイルブランドとしてのUGGの幅広さ奥深さを紹介し、顧客にプレミアムなブランド体験を提供。

ブランドのルーツであるカリフォルニアをイメージする演出を行っています。

ECはもちろんのこと、日本でも今後はInstagramなどでもお買い物ができるソーシャルコマースが活況を迎えるはずです。

そんな中、リアル店舗は「体験重視」の設計になっていくと思われます。

その最先端の1つが新しい小売形態のRaaSです。

RaaSは「小売のサービス化」と言われ、お店ではメーカーから展示料を取り、接客だけに専念。購入はお客さまにメーカーのECサイトで行なっていただきます。

小売店はさらにメーカーに対し、データや接客から得た顧客の声メーカーにフィードバック。言わばプロデュース業というわけです。

メーカーが直接消費者にECサイトで販売するD2Cに注目が集まっていますが、D2C企業もやはり商品の良さを伝える上で体験の場は貴重と考えるようになっています。

そういう意味では、もともとリアルの場を主戦場としている企業は尚更、商品を売ることと同じぐらいブランドの価値を伝える場としての店舗という認識が重要になるでしょう。

アパレルは生き残りをかけ「OMO」を強化

RaaSは商業施設のOMO(オンライン&オフライン)化の象徴的な存在として、アメリカで数年前から台頭。その牽引役の「b8ta(ベータ)」が昨年日本上陸したことは業界の大きな話題になりました。

そして、OMOと言えば、その商業施設に出店したり、商品を提供するアパレル企業のOMO化も着々と進んでおり、「オンワード」はその牽引役の1つとなっています。

〈LIMO / 2021年9月9日〉

オンワードは今年4月、「ららぽーとTOKYO-BAY」を始め、「イオンモール羽生店」「mozoワンダーシティ店」と3店のOMOストアを相次ぎオープン。

自社サイト「オンワード・クローゼット」の商品を店頭に取り寄せして試着できるなど、店舗とサイトを組み合わせた顧客目線のサービスを掲げています。

注目のサービスは3つあります。

「クリック&トライ」サービスは、「オンワード・クローゼット」で扱う商品を最大5点まで店舗に取り寄せて試着できるというもので、ネット限定商品店頭にはないサイズの商品も取り寄せることができ、お店にない商品を購入前に試すことができます。

そして、「パーソナルスタイリング」サービスには、販売スタッフが画面越しに個別接客する「オンライン接客」と、店舗でスタイリング提案を受けられる「サロン接客」の2種類を用意。

どちらも、接客担当の販売スタッフをオンライン上で選んで指名できます

3つ目の「カスタマイズ」サービスは、人気ブランド「23区」の定番パンツ3型から商品型番、カラー、サイズを選択し、ウエストと裾丈のサイズを自分向けに直せます

しかも、仕上がった商品は自宅に配送されるというので非常に便利ですね。

D2Cブランドの「試着専用店舗」を期間限定展開

先ほど、D2Cブランドが体験を提供する場を求めていると話しましたが、その1つの事例が身長155㎝以下の女性向けブランド「コヒナ(COHINA)」です。

今年5月に4ヵ月限定「試着専用店舗」を東京・表参道に出店しました。

同ブランドは流通用の型紙に合わない小柄な女性をターゲットとしており、スカート丈など、サイズ感へのこだわりが強い顧客が多いことから、試着ニーズが高いと判断したそうです。

店内のマネキン販売スタッフ全て身長が155cm以下で、小柄女性の試着の悩みを解決する工夫が盛り込まれているとのことで、非常に体験価値の高い店舗となっております。

さらに、リアル店舗というと「在庫問題」が小規模D2Cブランドのネックでしたが、試着後にその場で決済し商品は配送される仕組みを採用することで在庫を抱えることなく、課題を解決。

店舗は予想以上に好評だったため、10月末まで期間を延長して展開することになりましたので、もし気になる方がいらっしゃったらぜひお立ち寄りくださいませ。

「小売業の巨人」が配送を強化

これまでもちょくちょくご紹介してきたウォルマートが、また新たな一手を打ってきました。

同店では、先月下旬、アマゾンに対抗して「サービスとしての配送」を開始すると発表。

〈Forbes JAPAN / 2021年8月31日〉

同店ではラストワンマイル配送他の小売業から請け負う新サービス「ウォルマート・ゴーローカル」をアメリカで開始しました。

ラストワンマイル配送とは、利用者の最寄りに位置する基地局から受け取るユーザーまでを結ぶ最後の区間の配送という意味です。

自社の配送ネットワークを活用して、他社の商品を購入者に届けるというわけです。

ウォルマートの広報担当者

「ウォルマートは5,000近い店舗を展開しており、アメリカ人口の90%はウォルマート店舗から10マイル(約16キロ)圏内に住んでいる。そのため、ウォルマート・ゴー・ローカルは、配送プロバイダーがあまり多くない地方郊外のエリアで、すでに強固な存在感を持っている」

と語り、新たな収入源としての自信を覗かしています。

ウォルマートはつい最近も、その圧倒的な店舗数を生かして展開する医療センターについてお話しさせていただきました。

小売業にイノベーションを起こすさまざまな取り組みが溢れており、本当に注目すべき小売業のロールモデル企業です

ウォルマートは断トツですが、小売の世界はここ最近また1つ変革のギアを上げているように感じます。

今後もこの業界をしっかりと注視していきたいと思います。

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