「解り合えないこと」の原因
column vol.352
一昨日、幸せの軸が人間関係にあるという話をしましたが、一方で人間関係を良好に保つことは難しいものです。
何時間も一生懸命に話し合っても解り合えないということはよくあります。
特に、相手の意識を変えたいと思う時ほど難しくなります。最終的には「自分が変われば、世界(相手)も変わる」と自分を律する人もいれば、相手を恨む人もいます。
そもそも解り合えない原因って何なんでしょう。
「確証バイアス」によるすれ違い
私たちが物事を認識する上でバイアスがかかることがありますが、「確証バイアス」という言葉をよく耳にしませんか?
ご存知の方も多いでしょうが、仮説が本当かどうか検討する際に生じるバイアスです。
〈現代ビジネス / 2021年7月3日〉
つまり、私たちは身の回りのことについて予測しながら認識しています。
例えば、物語を読んでその内容を理解する時に、次にどういう話がくるのかを予測しながら話を把握しています。
さらには、文章から推測される登場人物の気持ちも読み取りながら読んでいるわけで、認識するという行為においては主観が支配しているのです。
当然、会話も同じで、基本的には相手の話を主観で聞いており、だからこそ相手の意図を100%把握することなど、相手になり変わらなければ不可能だと言えます。
ましてや、ケンカや言い争いなど、相手に対してネガティブな感情を持った状態で話し合って解り合えるわけがありません。
お互いが感情的になった時の話し合いなど、解り合うどころか、傷つけ合うだけなのではないでしょうか。
相手を尊重する「BYAF法」
ですから、子どもや部下を教育する場面でも、「何で怒るんだよ」「上から目線かよ」「こっちの気持ちも分からないで」などなど、ネガティブな感情を持たれた時点で、反感の方が勝ってしまうのは必然です。
そこで、メンタリストのDaiGoさんがオススメするのが「BYAF法」です。
〈PRESIDENT Online / 2021年6月21日〉
BYAFは「But You Are Free」の略で、日本語にすると、「~ですが、あなたの自由です」となります。
例えば、このように話します。
「A案とB案、調査でB案の評判が上回っていましたが、課長はどう思われますか?」
つまり、「決めるのはあなたです」ということですね。
勉強しない子どもに対して
A:「将来のためにも勉強しなさい」
と言うのと
B:「将来のために勉強した方が良いと思うけど、最終的には自分らしい人生を送ってくれたら良いけどね」
と言うのでは印象が違うと思いませんか?
ちなみに、西イリノイ大学の研究では、相手に説得したい内容を伝えたあと、最後の1行に「But You Are Free(~ですが、あなたの自由です)」のニュアンスを加えるだけで、話し手の望む「イエス」が返ってくる確率が2倍になったと報告されています。
あくまで判断するのは自分。その心のゆとりが提案する側の意見を肯定的に捉えられるということでしょう。
「心のゆとり」も有限
とはいえ、子どもに対しても、部下に対しても、そんなに理想通りの接し方ができるわけではありません。分かっているけど…、人間だもの。私も同じです。
そんな時、心の支えになると感じたのが、ひろゆきさんの「心のゆとりも有限」という言葉です。
〈DIAMOND online / 2021年7月7日〉
時間が無い、忙しい、体調が悪い、なぜか機嫌が悪い…などなど、人は常に不完全です。
相手のために努めていたとしたら、「何で分からないんだ」とイライラするのも人間です。
だから、不完全な自分を責める必要はないと思います。
ただ、一方で不完全な自分を認識できれば、不完全な相手に対しても許容しやすくなるのではないでしょうか。
少なくても、相手を責める気持ちがある時は、それが険となって言葉や態度に現れてしまい、相手が余計な確証バイアスを生み出すだけです。
天文学の父と呼ばれるガリレオ・ガリレイが
「人に物を教えることはできない。自ら気づく手助けができるだけだ」
という言葉を残していますが、これぐらい悟った気持ちで相手と接していると、相手と解り合えることも増えるのかなと、不完全な自分を思い浮かべて思う今日この頃です。
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