My history ⑥
日体大時代の続きです。
よろしければお付き合いください。
寮生活
僕が1年生の時に入っていた日体学生寮は、百数十年の伝統を誇る「教育寮」と呼ばれるところで、さまざまな部活動に所属する学生が入寮しています。
6階建で、1部屋2人から4人で構成という構成。部屋割りは2年生が1人、1年生が1~3人と決まっています。
僕は、前期はフェンシング部の先輩と体操競技部の同級生と相部屋、後期は少林寺拳法部の2年生の先輩との2人部屋で、部屋っ子たちとはとても仲良くなりました。
朝は点呼から始まります。
1階のエントランスに大きな太鼓が置いてあって、4年生の幹部が叩くのですが、朝6時にこの太鼓の合図で整列準備が始まります。
この太鼓は「エッサッサ」を行うときの集合体制をつくる時のリズムと同じリズムで叩かれます。(※エッサッサについては後ほど解説します)
で、この太鼓のリズムなんですけど、まずドーンと1回、大きく叩かれます。
僕は部屋は最上階の6階だったのですが、1階で叩かれた太鼓の音は、6階の窓ガラスまでビリビリと揺れるほど、寮中に響きわたります。
だんだん間隔が短くなって、最後にドドーンと大きな音で締めるんですけど、この太鼓がなり終わるまでの間に、寮生は各部屋から出てきて、各階ごとに2列横隊で整列を終えなければなりません。
その後、軍隊式の点呼があり、朝の掃除が始まります。
廊下の清掃は掃き掃除の後、全員で濡れ拭きの雑巾がけをしますが、この時は廊下の西側から東側に向かって2列縦隊で列を作ります。雑巾がけの準備なので、四つん這いの姿勢です。
上級生の寮委員が「前進」と号令をかけたら、左前、右前、左前、右前と交互に雑巾をすべらせながら、そのリズムにあわせて1、2、1、2と掛け声をしながら進んでいきます。
東の端まで到達すると、寮委員が「回れ右」の合図で、向きを変えます。
寮委員が「流し」という号令で、今度は膝と腰を浮かせて一直線に雑巾をかけて走ります。
これを5往復くらい繰り返すのですが、朝と夜の2回この掃除があります。
寮生の中で誰かが問題を起こすことがあると、この「前進」という雑巾がけが永遠と続くことがあります。
例えば、門限破り。寮生は夜8時50分が門限と決まっています。
1秒でも過ぎると、当事者はボッコボコに殴られます。
そして、この集団生活では全てが連帯責任で、他の寮生もペナルティを受けます。
この雑巾がけも2時間とか続くと地獄で、膝が擦り切れて出血する人も出てきます。
僕らの中では、この寮を「日体刑務所」と呼んでいました。
僕も無実の罪で懲役1年の実刑でした。笑
日々の生活が厳しくて、プリズンブレイク(寮抜け)を企む人もいましたけど、結局それば見つかれそいつは半殺しだし、逃げられても学校にもいられなくなるし、また残った人たちに迷惑がかかるから、結局断念するのです。
他にも食事や入浴時の細かい規則など沢山ありますが、前回の上下関係のお話で重複するところが多いので割愛します。
エッサッサ
先程も少しだけ触れましたが、「エッサッサ」とは「日体大独特の応援スタイル」で、日体大の前身の体操学校時代(大正時代)に原型となるものが始まったそうです。
その後、時代と共に少しずつ変化して『離合集散』の美を表現しながらをより勇壮なものへと仕上がっていきます。
「月明かりに獅子が月に向かって咆哮する様子を表現したもの」との説明が加えられていてます。
元々応援のために始まったエッサッサは『演じて見せるエッサッサ』として、寮生によって引き継がれている伝統で、エッサッサは寮生の代名詞となっているのです。
日体大では毎年秋に体育研究発表実演会というものを開催していて、新体操やチアリーディング、空手や少林寺拳法、柔道などの各競技者がパフォーマンスをするのですが、その実演会のトリで寮生のエッサッサが披露されます。
この実演会出演のため、寮生は約2か月間、早朝からエッサッサの訓練をします。
演武時間は入退場を含めても5分くらいなのですが、エッサッサはその態勢をキープしてやりきるために、かなりの筋力と筋持久力が必要です。
ですから、その姿勢を保てるための訓練と、集団演武として動きを全員で揃えるの訓練をするわけです。
トレーニング的に言うと「左ランジのボトムでキープ」の姿勢をとらなければならなくて、この一番深いところで1時間キープというヤバい訓練をありました。(しかも左ランジだけ。。トレーナーの観点からはバランス悪すぎです。笑)
そのキープなんですけど、耐えられなくでだんだん重心が高くなってくる人を寮委員が見つけると、走ってきて飛び蹴りをくらわします。
見せしめのようにやられるので、みんなそれを見てはビビりながら耐えるのですが、僕はある日、熱っぽくて、このキープがあまりにもしんどかったので、わざと重心を高くして寮委員に飛び蹴りをしてもらいました。笑
凄い勢いで走ってきて蹴り飛ばされるので倒れます。が、この倒れた瞬間だけはキープから解放されて休めるのです!
蹴られる痛みよりキープの脚の痛みの方がつらいから、「蹴られた方がマシという究極の選択」です。笑
そんな訓練を2ヶ月ほど耐えたあと、本番を迎えます。
エッサッサは、上半身は裸、エッサパンと呼ばれる白い短パン一丁、頭に白い鉢巻という伝統的なスタイル。
実演会本番を終え、退場して袖に吐けていった後は、みんな感極まってめちゃくちゃ泣きます!
僕も厳しい訓練を乗り越えて、本番で見ている人たちに感動を与えることができた達成感で、しばらく涙がとまりませんでした。
この時は裸の男たちが、先輩後輩関係なく号泣しながら抱き合うんですよ。
自分でもあんなに泣くと思わなかった。。
文字だけではイメージしにくいところもあると思いますので、エッサッサと集団行動の動画をYouTubeで見つけましたので、リンクを貼っておきますね。
最近の学生がやっている映像ですけど、当時とそんなに変わらないので、是非ご覧になってください。
次回はこの学生時代に経験した「コーチ」についてお話をしたいと思います。
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。