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アスフレ観戦記『22-23季に向けたオフシーズン』

アースフレンズ東京Z(アスフレ)の22-23シーズンが、いよいよ始まります。このオフシーズン、彼らがどんな準備をしてきたのか。振り返ってみましょう。

1.右肩下がりと疲弊

皆さんご存知の通り、Bリーグ開幕以降、アスフレの成績は右肩下がりです。運営会社の代表でもあり、オンコートの編成も担っている山野さんは、その改善策として、毎年のようにチームを解体。様々な方法を試し、再建を図っていました。

しかし、成績が示すように、改善の兆しは一切ありません。『勝ち負けが全てじゃない』とは言いつつも、未来が一向に見えてこない応援には、コアなファンでさえ、限界の色を隠せなくなっていました。

2.過去を抱え続ける

ファンのそんな空気を察したのか。はたまた、ご自身で限界を感じたのか。山野さんは編成から身を引き、ゼネラルマネージャー(GM)の採用を決断しました。

新しいGMは、衛藤晃平さん。
プロのコーチ経験が豊富ですが、おそらく、パワハラ加害者としての方が有名でしょう。

ヘッドコーチ経験
・2006-2008 金沢大学男子バスケットボール部
・2010-2011 富山グラウジーズ(bjリーグ)
・2013-2015 新潟アルビレックスBBラビッツ(WJBL)
・2015-2017 バンビシャス奈良(B2)
・2017-2019 香川ファイブアローズ(B2)

香川ファイブアローズでヘッドコーチ(HC)をしていた頃、選手やスタッフへの暴言・暴力が発覚。リーグから職務停止処分を科され、HCを辞任。バスケ界から離れていましが、山野さんに拾い上げられるかたちでアスフレに入団。フロントスタッフ業務を経てのGM就任です。

パワハラの内容(リーグ発表の抜粋)
・被害者
選手、スタッフ
(精神的に追い詰められ、体調を崩した方もいる)
・暴力行為
選手に対する飛び蹴り、平手打ち、胸ぐらをつかむ等
・暴言
暴力行為の際に暴言を吐く、精神的になじる等
・制裁内容
1年間の公式試合に関わる全職務の停止

この人事に対しては、チャンスを与えた山野さんを称賛する声だけでなく、厳しい批判の声も少なからずありました。まぁ、パワハラの内容がかなり酷かっただけに、バスケ界への復帰を許せない人の気持ちも、十分理解できます。

衛藤さんも、そういった拒絶反応があることを理解していた筈です。だって、GM就任時コメントは、大半がお詫びで埋められていましたから。

・衛藤さんのコメント
先般、私のインティグリティに反する行為により、ご迷惑をおかけした当該選手、リーグ、クラブ関係者並びに、ファン、パートナーの皆さまに、この場をお借りして、改めてお詫び申し上げます。
そして、なによりも、私を信じ、関わってくださっていた当該選手をはじめとした選手スタッフの皆さまに心よりお詫び申し上げます。
(後略)

ようやくGMが決まったのに、未来へ向けた議論がほとんどなく、本人から出る話も、周りから出る話も、パワハラのことばかり。衛藤さんは、バスケ界にいる限り、過去の過ちをずっと抱え続けていくのでしょう。

日本のプロスポーツ界は、とにかくイメージが大切です。Bリーグのオフシーズンを、悪い意味で賑わせた不倫騒動が典型的な例ですが、個人的なことでさえ、内部の人には潔白であることが求められます。普通のチームならば、過去の過ちを抱え続ける人を採用するのは、明らかなリスクです。

それでも、少なくとも私には、衛藤さんを受け入れることに、あまり抵抗はありませんでした。ちょっと突飛な理由ですが、アスフレを真に変えるのには、そんなに悪くない人選だと考えていたからです。

山野さんが繰り返して用いている解体は、言わば過去を捨てる行為。良いものも、悪いものも、1シーズンで積み上げた全てを放棄。敢えてゼロから始めることで、変化を与え易くしています。決して間違った手法ではありません。

但し、大きな変化を与えるのには、優秀な選手やコーチングスタッフが必要なため、相応の資金が必要です。しかし、アスフレには、そんな資金ありません。どんなに解体を繰り返しても、見た目か変わるだけで、戦力が上がることはなかったです。どんどん進む他クラブとの差は、開く一方でした。

山野さんが過去を捨てる解体を繰り返した結果、低迷に陥ったアスフレ。それを再建するのは、過去の過ちを抱え続ける衛藤さん。何の因果か、両者には過去の扱い方に明確な違いがあります。

この違いによって、チームビルディングは変わる気がしました。

3.現実を見ろ

その期待通り、衛藤さんは就任早々に改善点を示してくれました。シーズン終了後のGM就任で、時間はあまりなかったでしょうが、どうやらフロントスタッフとして働いていた時から、色々と肌で感じていたことがあったようです。

以下は、衛藤さんがyoutube動画で挙げた問題点の抜粋です。

衛藤さんが挙げた問題点の抜粋
『理想と現実に大きなギャップがあるとは思っていました。去年でいえば、国際化に舵を切りましたが、あれだけの外国籍・スタッフを抱える環境はなかった。皆がバスケットに集中させることができなかった』

話題に出てくる『理想と現実のギャップ』に関しては、これまでのアスフレ観戦記でも何度か触れています。

アスフレ観戦歴4年になりますが、古田体制もそう、東頭体制もそう、ウーゴ体制もそうです。掲げた理想と目の前の現実には、いつだって大きなギャップが存在していました。

例えば、東頭体制におけるコンバート。世界の大型化に則って、日本人ビッグマンをウィングにコンバートしました。しかし、コンバートさせたからといっても、スキルを教えられるコーチは資金的に雇えませんし、練習に打ち込める専用施設もなかったです。

選手の能力に大きな変化はなく、結局はポジション表記が変わっただけ。勝利に繋がる施策とはなりませんでした。

そういった事例の改善策として、衛藤さんが提示したのは、現実を踏まえたチームビルディングです。理想を認めたうえで、今は現実との橋渡しが必要であると主張しています。

youtube動画で衛藤さんが話したことの抜粋
『やりたいバスケとすべきバスケをもっとクリアにしなきゃいけいない。理想はすごくよくわかるが、現実を見た時の優先順位を明確にすべき。理想と現実の間に、僕は入っていきたいと思っています

具体的な方法・手段までは示されていませんが、この主張には十分に納得感がありました。

東頭さんのコンバート以外にも言えることですが、理想は決して間違っていません。どれも現代バスケの潮流にフィットしていましたし、目指す地点としては適切です。

しかし、如何せん現実の方が低すぎました。アスフレは、主に資金面の問題で、戦力や環境を十分に用意できません。結果的には、力を持たない現実が、理想に振り回されてしまいます。

衛藤さんの言うとおりです。アスフレがまずやるべきことは、現実の低さと真正面から向き合い、認めることだったのかもしれません。

4.育成を排除

チームビルディングの起点は低い現実。ここまでの話で、それは理解できました。では、今シーズンの終点はどこになるのでしょうか。

山野さんは、衛藤さんに『30勝』を課しています。2桁勝利すら怪しくなっているチームが、GMを雇っただけで30勝。何と虫のいい話。数年後という条件付きならまだしも、単年だと流石に現実的ではありません。まさに『理想と現実のギャップ』に該当するため、30勝は一旦スルーしましょう。

現実的な終点、というか必達の終点は、どう考えても『降格回避』です。今シーズンは、いよいよ降格精度が復活。シーズンの成績の下位2チームは、自動降格となってしまいます。

生き残るために必要なのは、言うまでもなくオンコートの実力です。今シーズンのB2は、B3から強豪が昇格してきたり、B1から戦力獲得が相次いだり、さらにレベルが上がっています。現状維持では、間違いなく降格です。

アスフレには、彼らと戦って生き残れる力があるのか。ここからは、今シーズンのロスターを見ながら、実力を評価してみます。

結果的には、今シーズンも解体が選択され、顔ぶれはガラッと変わりました。色々と思うところはあるのですが、至極妥当な選択です。

昨シーズンのロスターは、ウーゴ体制用にカスタマイズされたもの。ウーゴさんはシーズン途中で契約解除されていますし、そもそも契約解除の理由が成績不振。勝ちを求めているのですから、継続は選択できません。

大きく変わったロスターは、年齢層に特徴があります。若手が減少し、ベテランが一気に増加。平均年齢は、昨シーズンよりも上がっています。

これまでのアスフレは、”表面上”育成型のクラブです。ロスターの大部分は若手が占めるため、競争力は成長という不確定要素に頼らざるを得えませんでした。

しかし、降格制度の復活する今シーズンは、成長を待っている余裕なんて一切ありません。育成を最小限に留め、ベテランで確かな競技力を確保しようとしているのでしょう。

5.大誤算

但し、オンコートは実力主義の場です。平均年齢が高くても、勝てるとは限りません。今度は役割別に、年齢関係なく実力を評価してみます。


◎ハンドラー

22-23シーズン ハンドラーの契約動向
◎継続
 ・栗原 翼(在籍4季目)
 ・岡島 和馬(在籍2季目)
◎新規
 ・城宝 匡史(愛媛オレンジバイキングス) 
 ・井手 優希(山口ペイトリオッツ)
 ・木村 啓太郎(バンビシャス奈良)
◎退団
 ・増子匠(横浜エクセレンス)
 ・久岡幸太郎(香川ファイブアローズ)
 ・マーク・バートン(不明)

まずは、ハンドラー。

オフェンスに長けた増子の代わりには、オフェンス力で長年サバイブしてきた城宝。ゲームコントロールを担ってきた久岡の代わりには、ベテランの域に突入した木村。アウトサイドからのスコアに優れたバートンの代わりには、B3で平均8.8得点を叩き出していた井手。

主力3人が退団する大事でしたが、新規契約選手で上手くカバーできています。選手のタレントに見劣りは一切ないです。

とは言っても、満足はできません。ハンドラー(PG)は、そもそもアスフレの弱点です。現B1滋賀の柏倉が移籍して以降、常に相手の後手に回っており、低迷の原因と言っても過言ではありません。ちょっとやそっとのプラスではダメ。勝つためには、絶対的なプラスが必要です。

そこで期待したいのが栗原と岡島。若手である彼らならば、まだまだ成長できる筈です。先輩たちを喰うぐらいの活躍をして、チームにプラスαを与えて欲しいです。


◎ウィング

22-23シーズン ウィングの契約動向
◎継続
 なし
◎新規
 ・大矢 孝太朗(新潟アルビレックスBB)
 ・藤岡 昂希(青森ワッツ)
 ・鎌田 隼(ルーキー)
 ・鹿野 洵生(FE名古屋)
 ・ルブライアン  ナッシュ(仙台89ERS)
◎退団
 ・髙木 慎哉(湘南ユナイテッドBC)
 ・パット  アンドレー(不明)
 ・ビリシベ  実会(不明)
 ・重野  凱紀(不明)

次にウィング。

スコアリングマシーンのナッシュはもちろん、キャリア通算3P成功確率36.1%のシューター鹿野と、身体能力に優れたウィングディフェンダーの大矢を獲得できたのは、本当に大きいです。選手のタレントは、ここ数年で一番充実していると言っていいでしょう。

と想定していたのですが、物事はそう簡単に上手く進みませんでした。シーズン2週間前に来日したナッシュが、メディカルチェックで引っ掛かり、契約解除になってしまったのです。

代わりの選手は短期契約ですぐさま確保できましたが、チームのスコアリーダーとなる筈だった選手を失った影響は、少なからず残ってしまうでしょう。


◎ビッグマン

22-23シーズン ビッグマンの契約動向
◎継続
 なし
◎新規
 ・イライジャ トーマス
(Taoyuan Leopards 台湾) 
 ・レジナルド ベクトン
(横浜ビー・コルセアーズ)
◎短期契約(新規)
 ・ロバート サンプソン
(山口ペイトリオッツ)
◎退団
 ・マーク・エディーノエリア
 (Hereda San Pablo Burgos スペイン2部)
 ・ジョシュア・クロフォード
(秋田ノーザンハピネッツ)
 ・坂井 レオ(立川ダイス)
 ・山ノ内 勇登 ウィリアムズ(ラマー大学)

最後にビッグマン。

外国籍選手のタイプが昨年とは異なるため、比較が難しいのですが、DFの改善は大いに見込めます。

退団したクロフォードは、スピード(クイックネス)不足が深刻でした。ローテーションが遅れたり、スピードのミスマッチを狙われたり、DFの穴となっていたため、ウーゴHCはゾーンDFを多用せざるを得なかったです。

一方、今シーズンの外国籍選手は、ナッシュの代わりに短期契約したサンプソンも含め、アスレチック能力に長けたタイプです。リムプロテクトに優れているのはもちろん、平面の展開にもそれなりに対応できます。

懸念事項は、層の薄さです。サンプソンの短期契約が終わると、ビッグマンは2名しかいません。ベクトンは、昨シーズンのB1で2番目に平均ファール数が多かった選手。控えがいないのは、ちょっと心配です

とはいえ、予算的にはもう限界なのでしょう。少数で何とかやり繰りしながら、戦っていくしかなさそうです。


ロスターを役割別に見てみましたが、最後の最後にナッシュの件で不測の事態が発生したものの、選手のタレントは昨シーズンよりも確実に上がっています。

あとは、彼らが良い感じでケミストリーを構築できれば、降格回避できるとは言えませんが、降格争いに参加する権利は貰える筈です。

6.東頭体制との相似

しかし、実はそのケミストリーが、現時点で最大の不安要素になっています。外国籍選手の合流遅れによって、チームが揃った光景をまだ一度も見られていないからです。

チーム合流日(チーム公式ツイート日)
・ベクトン:8/25
・ナッシュ:9/12
・トーマス:9/23
・サンプソン:9/20

多くのチームは、7月~8月上旬くらいが外国籍選手の合流時期。一方、その頃アスフレは、まだ契約発表すらできていませんでした。おそらくですが、合流だけが遅れたのではなく、 構想から契約に至るまでの過程が全体的に遅れていたのでしょう。

アスフレよりもタレントが豊富なチームが、アスフレよりも練習期間を長く取って準備しているのですから、序盤に大きく負けが込むのは覚悟しておくべきです。ただ、ここ数年のように敗戦を重ねてしまうと、挽回が極めて困難になってしまいます。

・20試合での勝敗
19-20シーズン(東頭体制2年目):4勝16敗
20-21シーズン(ウーゴ体制):3勝17敗
21-22シーズン(橋爪体制):???

降格争い戦線に残るためには、なるべく早期で戦えるチームを構築しなければなりません。選手だけでなく、コーチングスタッフの手腕が問われる事態です。

おそらく今シーズンは、ロスターのタレントを充実させるため、コーチングスタッフの予算を下げています。人数的にも、経験的にも、ちょっとパンチに欠ける顔ぶれとなっていますが、大きな問題を抱えたチームを上手く導いてくれるでしょうか。能力が未知数なだけに、心配が募ってしまいます。

22-23シーズン チームスタッフ
・ヘッドコーチ 
 橋爪 純
 初めてのヘッドコーチ。これまではアナリスト、アシスタントコーチを経験。

・アシスタントコーチ 兼 S&Cコーチ 兼 通訳
 久川 貴之
 20-21シーズン、熊本で橋爪さんと同僚。
 兼任しすぎ。

・アスレティックトレーナー
 荒谷 恭介
 ラグビー界で仕事をされてきた方。

・マネージャー
 髙栁 美咲
 経歴は東京女子体育大学としかないので、新卒の方?

・アドバイザー
 トーマス・ウィスマン
 昨シーズンは、群馬のHC

6.東頭体制と相似

ちなみに、コーチングスタッフの予算を絞るのは、これが初めてでありません。2シーズン前の東頭体制2年目も、勝負に拘ると宣言し、同様の選択がありました。しかも、シーズン途中ではありますが、その時もウィスマンさんとアドバイザー契約を結んでいます。

その結果は言うまでもありませんね。捨てたくなるような歴史を繰り返すのか。それとも、タイムリープ系物語のように、誰かの奮闘で違う結末を迎えるのか。

今シーズンはそこに注目しています。

7.勝利の価値

以上がオフシーズンの話です。新GMの衛藤さんによって、山野さんのチームビルディングが正され、チームは大きく変わりました。本来ならば、花丸で称賛するところなのですが、実は心に引っ掛かるものがあります。

それは、チームの特色が著しくなくなったことです。

当人の意向もあるでしょうが、チームの顔たる選手が退団。育成を最小限に留め、ロスターの中心は若手から中堅・ベテランへ移行。ロスターの構成は、ウーゴさんや東頭さんが指揮していた頃に比べれば、至って普通。

それらが勝利のためであることは、頭で理解できます。しかし、自分が間近で見てきたものが、次々に不要と判断されていく光景には、心が追いつきませんでした。ちょっと切なかったです。少なくとも私は、勝利以外のものに惹かれ、アスフレを応援していましたから。

まぁ、そいういった結果に依らない要素は、これからなのかな。演出チームをUmeさんがコントロールしているように、ZgirlsをFukaさんがコントロールしているように、衛藤さんがオンコートをコントロールしながら、新しいアスフレらしさを創っていくのでしょう。

8.最後に

今シーズンから、チームは新しい道を歩みます。このタイミングで、これまでの選手やコーチングスタッフ等に改めて感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

結果は出なかったけど、皆さんと共に歩めたことは、本当楽しかったです。大切な思い出として心にしまっておきます。

では、新しいチームへのエールと、過去のチームへの感謝を込めて。
Go Win Z ! ! !

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たつぼん
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