「滑り1つで、周りを黙らせる滑りにこだわっている」
怒りの逆転金メダル!
王者ショーン・ホワイト選手が、自ら平野選手のもとに駆け寄ってきてハグしたシーンは感動的でした。しかも、「みんな私にどんなレガシーを残すのかと質問するけど、今日、それを目の当たりにしたと思う」と、平野選手を絶賛したことに胸を打たれた。
実況の「時代が変わりました。時代は受け継がれました。」というのも感動的だった。
「トリプルコーク1440」を組み込んだ構成というのは、平野選手がオリンピックで初めて成功させたらしい。
その偉業もさることながら、インタビューでの落ち着きにいつも感心する。
今回のオリンピックでも、2回目の点数の低さに納得いってなかったみたいだけど、金メダルを確定させた後のインタビューでは、怒りを表に出さず、落ち着いて受け答えしていた。
彼の言葉というのは、またまた落ち着きのある言葉ばかりで驚いた。
若いのに達観したものの見方をしているし、若いから力がみなぎっている。
忘れていた感情を私に思い出させてくれた。
「滑り1つで、周りを黙らせる滑りにこだわっている」というのも、その言葉の1つ。
「有言実行」はかっこいいとは思う。
実現できない可能性もあるのに、「私はこれを成功させます」と宣言する。そして実際にそれを成功させるというのは、かっこいいことだ。
平野選手もこう言ったらしい。
そして今回のオリンピックでそのうちの1つを成功させた。
有言実行もかっこいいけど、私は「不言実行」に憧れていたというのを思い出した。
誰にも事前に宣言せず、実は水面下で着々と準備を進め、夢が叶った時にそれを初めて打ち明ける。
20代の頃、そういうことをする人を「かっこいい」と思っていて、自分もそうなりたいと思うようになった。
それに、仕事ってテストの点数みたいに数値化できるものではなく、「成功」の形は多種多様だ。
例えば、一言で「資料作りがうまい」といっても、その内容は様々。
要点が簡潔にまとまっている
構成に無駄がない
文章が分かりやすい
データを効果的に取り入れている
色使いがオシャレ
作業時間が短い
上司から資料作りがうまいと褒められている人がいる時、あまりに絶賛されていると、負けず嫌いの自分が顔をのぞかせ、「私だってうまく作れるのに」とか「私の方がうまく作れるのに」と思ってしまう時がある。
つい、「その言い回しより、こう言い換えた方が分かりやすいのに」「その色使いより、この色使いの方がきれいなのに」「私ならこういう構成にするけどな」などと口を出したくなる。
これは、裏を返せば、私が褒められた時に、そうやって難癖をつけてくる人がいるということ。
自分が資料を作って見せた時に、何の言いがかりもつけられないくらいに完璧な仕事がしたい。
ダメ出しもされたくないし、私もあれこれ言い訳して苦しい正当化はしたくない。
10年くらい前は、そんなことを思っていた。
いつしかそのポリシーが消えかけていた。
平野選手の言葉を読んで、その時の気持ちを思い出せた。
年配の偉人や歴史上の偉人の名言から学ぶことも多いけど、若い人からの言葉にも学ぶことは多い。
滑りにも感動したし、本人の信念にも感動した。
金メダル、本当におめでとうございます。