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ITSを用いた被災地支援DXの提案

現在社会福祉協議会(以下、社協)を中心に商用データベースサービスを使ったDXが進行しています。災害発生時被災地社協の負担は大変大きく、負荷分散のためにもDXは必要です。
さて、被災地で起きる様々なニーズに対応するために社協を中心としてボランティアセンターのコーディネーションが活躍しているのですが、社協が対象とするニーズと対応(以下、シーズ)には制度的限界があり、技術系プロボノがその空隙を補間しています。
しかし、残念ながら全国的な地域社会及び産業の高齢化と衰退のためますます多様な支援の形が求められるようになり、社協のDXだけフォローしていればいいという状況が徐々に厳しくなってきます。また、南海トラフや首都直下地震規模の大災害ではすぐに破綻するでしょう。
一部のセクターに特化したICTツールでは幅広い連携とその管理には限界があります。そこで支援と連携の課題を洗い出し新たなICTツールを提示する必要があると考えられます。
クラウドを利用したICTツールにはいくつかの方向性があります。
一つは一定の形を持った課題を系統だてて整理し、持続的に対応するために情報を蓄積する方向です。これはキントーンのようなデータベースサービスが最適です。
また、物資の調達や保管、運用にも在庫管理の知見を活かしたデータベース作りが適しています。IoTを応用した情物一致で入口と出口の効率化を図ることもできます。
また支援者同士の課題の討議にはSNSが向いています。大規模にフォロワーを整理して管理するなら顧客管理システムを援用する方法もあるでしょう。
しかしこの中で決定的に欠けているのは、課題の発生から解決に至るまでの一貫したトレーサビリティと、情報の見える化です。被災地支援の担い手は特定の福祉団体やNPOに限られるわけではありません。特に大規模災害では特定のセクターだけうまく回ればいいというわけにはゆかなくなります。仮に個々のフォロワーが積極的に動かなくても、オールジャパンで課題を共有し支援の輪を広げる必要があるのです。
以下、一つの提案としてお読みくだされば幸いです。
トレーサビリティの実現にはイッシュートラッキングシステム(以下、ITS)が最適です。構造はいたってシンプルで、マルチユーザーのToDoリストと考えていただければいいと思います。Todoリストの1行にあたる情報管理単位をここでは「チケット」と呼ぶことにします。これはソフトウェア開発現場で用いられるバグトラッキングシステムの慣習に倣いました。しかし既存のITSではいくつかの機能に不満があります。
一つは機微情報の保護と類別情報の開示です。前者は被災者のプライバシー保護や防犯上の留意にあたるため軽々に扱ってはなりません。
しかし一方で全社会的に課題共有を目指すには何らかの情報開示を同時に行わなければなりません。しかし、課題の統計的観察において機微情報は不要です。むしろ定型的にカテゴライズされた情報の方が有用です。これにはチケットごとにタグを適宜貼り付けることで対応できます。

タグ入力のサンプル


機微情報はそれを取り扱い責任をとれる範囲に限定し、タグは逆に積極的に開示します。またワークフローにおける処理時間や進捗状態などの進捗指標も開示します。これもボトルネックを見える化し外部からの支援の調整に役立てます。
皆さんが知っているTodoリストは大抵プレーンテキストや多少の修飾ができるリッチテキストを掲載できるようになっています。しかし、これでは社協などのセクターが内部での管理に利用しているデータベースサービスと連携が困難です。どうしてもチケットを起票するユーザーに定形フォームに入力させたいと考えられる場合があります。そこでスキーマフォームという技術を援用します。メニューで選ぶことによってデータベースサービスが必要とするフォームを表示し入力できるようになるユーザーインターフェースです。

動くサンプルはこちらです。


スキーマフォームを採用することで問合せ、提案、申込、相談、調査報告など多様な情報の取り扱いが効率的にできるようになります。
さてこのような情報の処理を現地のボランティアセンターのメンバーでこなすことは現実的ではありません。そこで新たなボランティア支援の形、バックオフィスを提案します。信頼できるチームに機微情報取り扱いの権限を委譲し、彼らに事務管理のタスクを受け持ってもらうのです。これは紙ではなかなか実現できなかった支援です。
以上大雑把なシステムのスケッチです。私たちはDXをより幅広い支援に結びつけるために今後も考察と提案を進めてゆきたいと考えています。



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