新人教育問題は“バラバラ”でしんどい
2020年に入って、あっという間に1月が終わろうとしていますが、あっという間に4月になって新卒の初々しい姿を見ることになるのでしょうね。
僕もあっという間に40歳になりましたが、初々しさを失わないよう、今日も筋トレしています。
企業では新卒向けの研修プログラムづくりが進んでいます。
TATEITOでもそのお手伝いをさせていただいていますが、今年は新人研修に動画を活用したい、しようという企業も増えた気がします。
実際、TATEITOへの相談も、サービスを導入いただく企業も増えているので、そうなのでしょう。
新人研修に動画を活用する背景には、ビジネス環境の変化に伴う、大きな課題があります。
その課題から生まれているのは、研修の非効率さと、モチベーションの低下です。
通年採用だから教育も終わりなく続く
"新人"は4月に入社する新卒だけではありません。中途採用はもちろん、派遣やアルバイト、インターンなども含めると、1年中新人がいます。
その対応が課題となっていることは、前回も書いた通りです。
通年採用が当たり前になりつつある中で、この全ての新人に研修やオリエンテーションを実施するにはコストも時間もがかかります。
例えば、製造業のA社さんは、実際に自社で実施している新人教育にかかるコストを試算したところ、年間で約650万円がかかっていました。
また、広告代理店B社さんは、8時間の入社オリエンテーションを毎月のように実施していました。
オリエンテーションは人事担当者で持ち回り制にしていましたが、担当が回ってくると、他の業務の時間が削られてしまいます。
また、毎回同じような話をしなくてはならなりません。
「それが仕事でしょ」と言えばそれまでですが、毎回同じ話をし続けるしんどさは、仕事へのモチベーションを下げることはあっても、上げることはないでしょう。
OJTも同様です。
新人が入って、OJTで育てたら、また次の新人が入ってOJT…の繰り返し。教育に強いやりがいを持っている人であっても、終わりの見えないOJTの繰り返しに疲れ果ててしまいます。
新人でも持っているスキルや知識はバラバラ
先ほどのB社さんのオリエンテーション担当が「しんどい」と思っていたのは、単に同じことを話すことのしんどさだけではありません。
その話を聞く人が「知ってる」と話すことが「しんどく」なります。
新人、といっても、入社時期がバラバラなだけではありません。「知ってる」ことも量もバラバラです。
中途の業界経験を持つ新人はもちろん、インターンとして働いていた新卒の新人であれば、入社オリエンテーションや新人研修で学ぶことも「知ってる」ことが多くなります。
僕も研修講師やセミナーで登壇することが多くありますが、話を聞く人がその話を「知ってる」と、話すことが「しんどく」なります。
これは聞いている方も同じで、研修にかける時間に価値が見出せなければしんどくなります。
社内研修ではマネージャーや"できる人"が研修講師を担当することが多くなりますが、その人が研修をした時にも同じことが起こります。
ただ、だからと言って新人研修として、基礎から学ばなくてはいけないことを伝えなければ、今度は経験の無い、わからない新人がしんどくなります。
新人のスキルや知識のばらつきが拡大していく中で、同一の研修を一律で実施していくことは、コスト負荷をかけ続けるだけではありません。
研修を行う側も、受ける側もしんどくなり、その質自体を低下させていくことになります。
その解決策の1つが動画学習です。
先ほどの製造業のA社さんは研修の講義部分を動画化しました。研修で行う実務の前に学べることは動画で理解しておいてもらう&復習もできるようにすることで、実技の時間をより濃いものにしようとしています。
また、広告代理店B社さんでは、新任の部長が「オリエンテーションは誰が話しても同じであれば、全部動画にしようよ」と提案。オリエンテーション全てを動画化し、それを新人に視聴してもらうようにしました。
退職・採用無限ループの渦中でやるべきことは
A社さん、B社さん共に共通していることは、新人研修を受ける側はもちろん、提供する側のことも考えて、対応、変化していこうとしていることです。
その大きな理由の1つが、人材流動性が高まっていることです。
終身雇用が前提の世界では、そもそも辞める人も多くありませんでした。さらに、育てるべき人も決まった時期に、ほぼ同じような経験を持っている人が集まって入ってきたので、一点集中 × 集合型の研修が機能していました。
そして、教育に時間をかけることもできました。
しかし、転職が当たり前になった今、入ってくる人だけでなく、辞めていく人も当然増えます。新人に早く戦力になってもらわなければ、仕事も会社も回らなくなってしまいます。ゆっくり育てる時間などありません。
これまで書いてきたように、入る時期もバラバラ、そのスキルや知識もバラバラの新人に対して効果的な教育を提供し、早期戦力化を行わなくてはならないのです。
さらに厄介なことに、教えるべき内容もどんどん変わります。
うまく戦力化するための仕組みがなければ、一律に人を育てることは難しく、企業にとって、その人たちがコストとしてのしかかるばかりです。
一方で "できる人" には仕事が集中し、負荷は高まり続けます。
そんなところに「研修で教えて欲しい」とお願いし、なんとか時間を工面して対応しても、「知ってる」人へ教えるしんどさと、「また次回も…」と、なれば、今いる企業で働くことが嫌になるのも当然です。転職を考える一因にもなります。
この "できる" 人が辞めてしまうことは、企業にとって大きな損失です。
また、入ったものの、その企業で十分活躍できずに辞めていく人というのも、採用したコスト、これからまた新たに採用コストに跳ね返ってきます。
採用する→辞める→採用する→辞める…の無限ループです。
この流れは完全にはなくすことはできませんし、それが当たり前になっていくと思います。
ただ、このループの中で価値を生み出す力を企業も個人も高めることができなければ、当然のことながらいずれも衰退していきます。
今の日本の生産性の低さや、成長を危惧する話は溢れていますが、その要因の1つが教育だと僕は思っています。
効率が悪く、モチベーションを下げる一方の教育を続けていれば、衰退は避けられません。
動画学習を使うかどうかという手法論ではなく、その課題に気づき、変わることに組織がチャレンジしていくことが必要です。
先に挙げたような課題は簡単に解決できるものではありません。
そのチャレンジをサポートし、組織の成長と、そこで学び、働く人たちの力になれるよう、僕もTATEITOもがんばります。