お前はシオリエクスペリエンスで真のBLUESのなんたるかを知る
BLUES・・・それは人々の本能に刻まれたなんかのひとつ・・・心の奥底に誰しもが持つなんか・・・MEXICOやCORONA・・・それとは別のなんか・・・心はMEXICOの荒野にいるパルプスリンガーでさえ、現実ではコンクリート・ジャングルの噎せ返るようなSIKKEに襲われSOULまでがコンクリートになってしまい、いつしか真のBLUESを・・・忘れてしまう。
そんなおれたちのSOULをダイナマイトで攪拌しショベルカーで滅茶苦茶にして忘られしBLUESを取り戻す。シオリエクスペリエンスはそういうパワを持ったMASTA-PI-SUだ。
桃之字先生プロフィール:暗黒コラムニスト。逆噴射聡一郎先生の文体を真似てみたがめちゃめちゃ疲れる事に気づいて早くも挫折しそうになっている。好きなシオリエクスペリエンスの回はトレイントレインの回とタイトル回収回
シオリエクスペリエンスとは
ジミヘンが現代に化けて出て、冴えない英語教師に取り憑く話だ。ジミヘンはSHIORIに憑依(Jack in:ジャキーン)してギターを掻き鳴らす。SHIORIはギターが下手だしヘタレだが、ジミヘンがジャキーンしてる間はめちゃめちゃ上手くなる。というかジミヘンそのものになる。
はじめただのヘタレだった彼女は、ジャキーンしてジミヘンをエクスペリエンスすることで自らの魂の叫び──B.L.U.E.S──に気付き、そして自らギターを掻き鳴らす道を選び、そこに待つ創作という地獄へと足を踏み入れる。創作という地獄。音楽に限らずなにかを創るものならぶっ刺さるアレコレが盛りだくさんである。虚無の暗黒、嘲笑、ぶっ壊せないコンプレックスやトラウマ……それらひとつひとつに真正面から向き合うSHIORIとそのバンドメンバーたちの物語を通して、我々もまたMEXICOの荒野で戦い続ける勇気を貰い(たまに死にたくなる)、真のBLUESのなんたるかを知る。そういう作品だ。
バンドものとしてのシオリエクスペリエンス
物語は、SHIORIがリーダーをつとめるバンドが中心だ。とはいえこのバンドも一筋縄ではいかない。そもそも主人公のSHIORIは生徒にナメられまくった冴えない英語教師だ。そんな彼女がバンドをやろうと声をかけるのは吹奏楽部の落ちこぼれ。そこから集まるのは所謂問題児たちで、野球部のエースだったけどドロップアウトした奴、元ヤン暴力女、オカ研のサダコ、ナルシストのアホ、えとせとら、えとせとら……そうして、彼らが結成するバンドもまた爪弾きものとなる。そこに渦巻くのは劣等感やコンプレックス、周囲の嘲笑、しかしそれらは彼らのBLUESによってぶっ壊され、彼らは真の男へと生まれ変わってゆく。我々はそのBLUESをエクスペリエンスして真のBLUESのなんたるかを知るなおここでいう真の男とは魂の性別のことを言っている。
また、冴えないSHIORIたちとは真逆の存在、完全無欠万年金賞の吹奏楽部の存在も忘れてはならない。彼女たちははじめいけ好かない敵役として登場する。しかし(詳しくはネタバレになるのでいえないが)完璧主義のこの吹奏楽部の面々もまた、SHIORIたちのBLUESによって変わってゆくのだ。これもまた一筋縄ではいかない。創作観の違い、師弟関係、忠義、感謝、リスペクト──物語のクライマックスのひとつであり、その結末がもたらす大きなカタルシスに俺たちはBLUESを感じ、理解するのだ。
戦隊ものとしてのシオリエクスペリエンス
BLUESを感じさせられる者は誰かのヒーローになれる。その誰かとは作中の登場人物のことであり、そして第四の壁を越えたお前たち自身でもある。
ヒーローとは他者を救い、奮起させ、そしてどんな苦境にも屈しない者のことである。SHIORIにとってジミヘンはヒーローだ。そしてSHIORIをエクスペリエンスしたバンドメンバーたちにとってSHIORIはヒーローだ。SHIORIのバンドメンバーは互いが互いに救い救われ、奮起させられ、互いに苦境を乗り越えてきた仲間であり、つまり戦隊だ。
彼らは戦隊である。ひとりきりではあまり強くない。だが全員が揃えば無敵のスーパースターになれる。初期能力がめちゃめちゃ高かった獣電戦隊キョウリュウジャーでさえ大きな壁が立ちはだかり一度は挫折しかけた。しかし互いの信頼、救済、奮起、そういった魂の叫び─B.L.U.E.S─がブレイブとなり新たな道が開けた。シオリエクスペリエンスもまた同じである。誰かが挫折しそうになったとき、他の戦隊メンバーがそいつを救い、互いにヒーローなって大きな力を得ていく。対等でありながら互いに憧れあう、そんな戦隊こそがSHIORIとその仲間たちであり、俺たちは「なんだかんだでこいつらはやり遂げる」という安心感を以てこの物語をエクスペリエンスでき、真のBLUESのなんたるかを知るのだ。
お前はBLUESを感じているか
BLUES……魂の叫びであり、日本の名曲TRAIN-TRAINにも記されたその言葉が生まれるきっかけは様々だ。怒り、悲しみ、初期衝動、競争心、闘争心、憧れ、忠義、感謝──それは人によって大きく異なるが、一方でそれが「生まれない条件」は明白だ。それは惰性であり、なにかの奴隷であることである。MEXICOの荒野を歩くおれたちはなにかの奴隷になることなく、常にBLUESを感じBLUESを生み出しBLUESの中に生きるひつようがある。それを忘れてはならない。
この作品はその事実を如実に叩きつけてくる。それも、ドチャクソエモーショナルなドラマと、ハチャメチャに上手い絵が合わさった、バケモノじみた竜巻のようなパワーという形でだ。単なるヘタレだった俺はそのパワーに一度バラバラにされ絶命し、現在絶賛再構成中だ。辛うじて指先が再生したのでこの文章を書いている。そういうパワーがある。
いじょうだ
先日、公式の粋な計らいで第1話全92ページが無料公開された。Twitterで読める。ハチャメチャにキレイな絵でハチャメチャに面白い音楽ドラマが読める。シオリ先生カワイイ。画面から音が聴こえてくる。原曲を知っていればそれが一番良いが知らなくても問題ない。YOUTUBEで聴きながら楽しんでくれ。