夜記(よるき)(11)
夕刻の出る前に書こうとして、なにを書いても気持ち悪かった。
気持ちよく飲み込める言葉を探していたら、出かける時間になって、ノートを閉じて鍵も閉めて、兵隊さんみたいにきちんと歩きました。
10月16日 土曜日 雨(小雨)半月が美しい
近頃、元気のない、暗い顔をして人に接していたのかもしれないと思う。
暗い顔をしていると、人が気を遣ってしまうのだし、なにせふと何かに写った自分の顔が醜くて仕方がなかったので、君よ、わたしは今日は何が起こっても落ち着き払っていることにしました。
いつか君が「自分を許せないだけ」と言ったときと同じく、少しは自分を許して穏やかな面構えで、歩くときは必ず胸を張ります。
*
小魚たちのようにキラキラし始める人々。
食事に行こうと声を掛ける人々。
わたしは自分が人々の前で、所在なさげで落ち着かなかったことに気がついた。
居場所がなくとも、有るかのような顔をしていると、誰しも居場所など探し中で、人の気持ちが見えていなくても、振る舞いと表情と造形から何かを見つけ出して、居場所になるかならないかを判断しようとしている。
ならばわたしも居場所の一つにでもなるようなことをしますよ。計画を立てて。
*
君、明日もまた自分だけの世界を爆発させて、外に煌めきを振りまいて。
おやすみ。
十一日目。終わり。
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難しいです……。