![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69493578/rectangle_large_type_2_c86170bafacd407f0db2fb582ca90035.png?width=1200)
埋められた子
怒ってなんかいなかった。仕返ししようなんて、ちっとも。
お姉さんたち、わたしを埋めるのが変な楽しさでいっぱいだって、顔を見ればわかったよ。
汚いことばは、傷付いてしまう。大声で放って笑ってしまうのも、変な楽しい気分が止められないからね。お姉さんたち。
わたしは砂からも人からも逃げたい。泣くとお姉さんたちがもっと笑う。
悲しいけれどお姉さんたち、わたしを埋めてもあなたの妹は、明日から教室でもてはやされたりしない。
ともだち、どうして嘘をついた。一度だってあなたを、嗤ったりしなかったのはこのわたしだったのに。
でも大丈夫。よくあることだから。悪いことなんかしなくたって、辛い日があるのはよくあることだから。
ひとりで砂に埋まってるのは淋しい。校庭がこんなに淋しい場所に見えるなんて知らなかった。
あなたも、生きてるだけで嗤われて、お外がこんな風に見えたんだろう。だけどわたし、助からなくちゃならない。
身を捩って穴の内側で、砂を掘ろう。吐きかけられた唾はくっついて汚い。早く抜け出して顔を洗って、何もなかったように家に帰ろう。日が暮れる前に助からなくちゃ。家族に、明日もみんなに、会いたい。楽しそうな人に「楽しいか」と聞いてはいけない。つまらなくなって、もっと楽しくなろうとするから。
砂場に埋まってるのは楽しくない。地面から、首だけ出しているわたしはきっと面白いな。自分で見てもきっと、笑ってしまうんだろう。地面から首から出して泣いてるなんて、おかしい。
砂から出ろ。砂から出てよわたし。服を綺麗にして。
掘って、掘って、掘って、小さいわたしは砂場に立ったよ。
日が暮れて、叱られる。けど言わない。
もう淋しいのは嫌いだから、淋しかったことは言わない。
普通の顔して、ちゃんと帰ろう。これでまた、みんなに会える。もう会えないかと思ったけど、またみんなに会えるから。
11.729光年彼方へ枯渇しても愛を湧かす
いいなと思ったら応援しよう!
![愛群(あいぐん)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/167221812/profile_06483ff7866f10a81a84b6dcceec2258.png?width=600&crop=1:1,smart)