夜気(よるき)(5)
神様みたいな人は折角いるけれど、それでも冠を着けないと信じてもらえないくらいの世界だから、もういろいろ乗り越えて乗り越えて、神様になってしまうといい。
10月10日日曜日 晴れ 細い三日月
サイレンの音もない。何事もない。何事もないと人とはこうも自分を見失っていて、記憶の中の通りすがりの人々ですらいなかったように思い出す。
横断歩道は舞台です。どんな風に生きることにしたかそれぞれの人が表しながら歩く。
君の横断歩道は風の中の風。わたし出来るだけ人に当たらないようにまっすぐ。
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夢が叶うことを諦めた心地とは、愛すべき者が同じ空の下のどこにもいないと思い込んでしまった時間と、似ています。
そんなときは、つまらない顔をして喫茶店でストローを噛んでいるだけ。
無理矢理席を立って、未来の絶望的予測を置き去りにして、好きな格好でまた愛情表現を始める。
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あの三日月、頭に飾れたら、誰だって神様みたいに見えるだろう。
五日目。終わり。
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難しいです……。