お人好し
わたしも小鳥に生まれてきたら、木の枝に鈴なりの木の実みたいにとまって、鈴なりみたいな声で歌いたい。小鳥になってもわたし一人じゃ鈴なりにはならないけれど。
枝を振るわす風にもなりたい。
なりたいと思うことしか出来ないけれど。
令和四年のおみくじは「迷わず慎ましく進め」と口を揃えて申します。
呑気なわたしは命も時間も有用だったことに出来る程残ってはいないと肝に銘じます。
寒い街角に、日本語の話せない人が立っていて、わたしにカードを見せました。
カードには日本語で「生活が苦しいのでお菓子を買って下さい。お願いします」と書いてありました。
わたしが財布を出そうとすると「駄目!」と横から声がしました。知らない女の人でした。
目を丸くしていると「最近多くて…。キリが無くなってしまうから、いいから離れて」と言いました。
あったかくて優しい響きがしたからわたしは(お金を受け取ろうとしている人から目を離さずに体だけ離れて、情けない顔をしていたでしょう。そして「駄目!」と言った彼女に頭を下げて)お礼を言いました。「いいの。見てたら咄嗟に言ってしまったの」と彼女は言って歩き去って行きました。
後ろ姿をよく見たら、買い物したビニール袋をぶら下げていました。
生きて行くのは大変ね、みんな。彼女ならきっと誰もが楽じゃないと知ってるんだろう。
わたしは嬉しかったから、今日はこれを書き残しておきます。やっぱり、心は取り戻せる。(涙は出したくなくても出てしまうけど)
たまに、何が本当かわからなくなるけれど、わたしは心があると感じたものの方を信じて。
令和4年1月12日付
11.729光年彼方へ枯渇しても愛を湧かす人を見つけた
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難しいです……。