夜記(よるき)(16)
朝、目が覚めたら壁掛け時計が3時40分ごろで止まっていた。
外を見たら明るかった。携帯電話を見たら6時過ぎだった。
単三電池を探して、見つけて、入れ替えて、人の生存確認みたいに時計のチクタク音を確認したら生きていた。6時9分に合わせた。けど早めにしておこうと思って6時15分にして壁に掛けた。
10月21日 木曜日 (昨日のわたしは手書きで曜日を木曜日と書いている。木曜日のつもりで生きていたから、今週は木曜日が2回もあって水曜日がない)
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携帯電話がなかったら時報も聞けない。
時計なしで時間がわかるとしたら、町の正午と午後5時のチャイム。時間がわからなくならないようにしてくれているこの世はすごいので、たまには時計なしで時間を教えてもらうことにする。
もし時計なしで時間がわからなくなったら、日時計を作ろうかと思います。
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電話を全然見ていないけれど、本当は時々鳴る電話の音が楽しみです。
夜になって、読んだよ!のマークがいくつ集まったかを知るのも楽しみ。
誰かに連絡をしなければいけない大事な用事がもっとたくさんあって、作れたら良いのにな。
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歌うとき、自分の声の何を信じようかと考えて、わからなくなる。
わたしは自分の声を信じていないし、知らない。聞こえて納得するまで。言葉は?言葉は、まだ出来ていないわたしの好きな形の本の中に書いてあるのを引っ張り出してくる。
その本には、イメージや物語や感情が適切に書いてあるように感じられる。そしてそれはわたしの頭の中の本だから、誰かの頭の中の本には恐らくもっと別の世界のことが書いてある。
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みんなはいつの間にそんなに立派になったのだろうかと考える。わたしも立派になりたい。
上手くいき終わって伸びしろがなくなったりはしないと証明してして下さい。
イメージが爆発するだけして取り戻せなくなる前に、イメージをするわたしがどこかに行っていなくなって悲しかった。
蘇ると喪った時間が悲しくなる。
イメージは愛情だから、按配が届かないとコンビニの店員さんにありがとうと言えない人になってしまうのも悲しいよ。
16日目。終わり。