夜気(よるき)(8)
楽しい気持ちと果てしない孤独が瞬時に入れ替わって目まぐるしいわたしたちの夜は子どものときから変わらない。
何故か、ギターを弾くときも、鍵盤を弾くときも胸が痛む。いつからか、一番好きなことをするときに、一番胸が張り裂ける。
届かないもどかしさでしょうか。
呼吸を止めて文字を書く。このわたしの字をどうぞ。
そして、取って置きをばら撒いている君を探す今日も。
10月13日 水曜日 雨、肌寒い日
浴槽にお湯を張って浸かると、指先が、転んだときの擦り傷みたいに痛い。
それは歪んで弦高の高くなったギターを弾き続けていたからと、自分で理由を知っているのがわたしの慰めで、次はプラスチックの鍵盤を弾く。自分の気持ちを洗うような音を探している。
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町の色が暗く沈んだあと、君はよく自分を外側から観察していたせいか、全てにおいて完成されています。
ことあるごとに、外から見る自分に愕然としてしまったわたしとは別の生きもののよう。
卑屈になっているように見える口の動かし方をずっと止めようとしている。鏡を見ていないときにそれは起こるので、どうするのかわからない。
生まれたまま何も押し殺して生きてはこなかったように、君よそのまま自由で。わたしもその顔を取り戻す。
✳︎
眠る人がすることね。窓に夜模様のカーテンを引いて、毛だらけの生きもののようなパジャマを着て、布団をきちんと被ったら、天井も屋根も突き抜けた向こうの空を見透かす目で、いろんな幸せを思い描いておやすみ。
八日目。終わり。
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難しいです……。