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#17|ナラティブに気をつけて|2024.11.21

Apple TV+『ディスクレーマー 夏の沈黙』

みた。

『ゼロ・グラビティ』『ROMA /ローマ』のアルフォンソ・キュアロンが監督脚本をつとめたミニシリーズ。主演は『TAR/ター』のケイト・ブランシェット、脇をケヴィン・クライン、サシャ・バロン・コーエンが固めるほか、撮影監督に盟友エマニュエル・ルベツキらを迎える。

こっからちょっとずつ内容のネタバレする。

物語は、異なる視点人物による3つのパートから成り立つ。ガールフレンドと一緒にイタリアを旅行中の青年、成功を手にした中年の女性ドキュメンタリー作家、そして長年の私立学校教師生活に倦んでいる老人男性。一見無関係に見えるそれぞれの人生が、ある一冊の小説の出版により少しずつ、交わり始める。

Ep1の冒頭には、こんな思わせぶりなセリフがある。

語りと形式に気をつけて その力は真実に近づかせる一方で人を操る強力な武器にもなり得ます〔……〕私たちが操られるのは自身の信念と判断ゆえ〔……〕。

その注意喚起のとおり、本作の「ナラティブ」には、叙述トリック的な、信頼できない語り手的な、ある仕掛けがある。

キュアロンは、本作についてインタビューでこう答える。

もともと私はナラティブ(語り手)によってどれだけ物語が変化し、それが観ている人たちに影響を与えるかについての映画を撮りたいと思っていたんです。一つの物語も、異なる登場人物(語り手)の目線で語られることにより、まったく違った見え方になる。今作では視聴者も含めて、誰もが自分の判断で【ある人物】のストーリーを解釈しますが、やがて自分の想像とは違う現実を突きつけられることでしょう。

原文だと【ある人物】のところに、ふつうに名前が書かれてるけど、そこはいちおう伏せとこうと思う。実際、自分はナラティブにまんまと騙されちゃった。

最近は「物語批判」のことを考えたいと薄ぼんやり思う。

兵庫県知事選のあれこれを横目に書いた回。

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