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#21|太郎とTARO|2024.12.19

大白小蟹『太郎とTARO』

よんだ。

この本の唯一にして最大のハードルの話から始めちゃうと、マンガで5000円はやっぱり高い。しかも、なるべく前情報入れずに読むのがいいタイプの作品なので、そのハードルを越えてもらうためのレコメンドも難しいというジレンマ。

ひとまず自分は、著書の前作『うみべのストーブ』が好きだったから今回もいいはず、ぐらいの感じで買った。

で、読み終えた現在では、作品が意図するもの的にも、凝った製本(函入り、カラー、ハードカバー)である必然がめちゃめちゃわかるので、その値段にもけっこう納得してる。

本作は、2019年に筑波大学に提出した修了制作(なので書かれたのは前作より前)だそう。アートブックやグラフィック・ノベル、バンド・デシネっぽいところもあるけど、感覚的には、いちばん絵本っぽい。セリフ(言葉)がひとつもないのもそう思った原因かも。

ということで、ここからネタバレする。

シュリンクフィルムを剥がし、函から本書を取り出したとき初めてわかることなのだが、じつは『太郎とTARO』という作品は、右開きの『太郎』と左開きの『TARO』からなる、2冊の本のことなのだ。

赤い肌色の人々を描いた『太郎』、青い肌色の人々を描いた『TARO』。この左右開きのマンガの形式を活かし、文字通りに、双方向異なる目線から描かれるのは、南国のとある島で起きた一つの事件だ。視点がかわれば出来事の意味合いもかわる、と言葉でいうと陳腐だが、メッセージがブックデザインとして、年齢や国を問わずに理解できる、言語に依存しないシンプルなかたちで表現されてるのはすごい。

前作『うみべのストーブ』が「雪」のイメージが強い作品だったので、なんなら寒いところの出身だと思ってたけど、このインタビューで、著者のルーツが沖縄だと初めて知った。

同じく沖縄出身の小説家である豊永浩平氏との刊行記念トークイベント、行きたいけど行けない。

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