赤ちゃん連れて外歩くのが怖かった
Twitter(いつの間にかXになったね)を隙あらば眺める日々を送っていた私は、人々というのは常に何かしらに対して怒っているものだと思っていた。
政治に、職場に、違う国の人に、自分とは違う性別の人に。
妊娠をした頃からか、「子連れ様」という言葉がよく目につくようになった。
子どもが騒いでいるのに知らんぷりしている(ように見える)親だったり、子どもがいるのを良いことにワガママを通していたりする様子とともに、毎日のように様々な怒りの声が投稿されている。
なぜか赤ちゃん連れや妊婦に対して罵声を浴びせたり、物理的な攻撃をしたりしてくる人がいるという注意喚起も何度も目にした。
世の中が、外が、怖くて仕方なかった。
しかし赤ちゃんが産まれると、定期的な検診やら予防接種やら、保育園を見つけるための見学やらで外出は避けられない。
それ以外にも、育児書などでは赤ちゃんを抱っこやベビーカーで散歩に連れて行こう!と書いてある。
まだふにゃふにゃの小さい生き物を連れて怖い外へ出ることは本当に勇気がいった。
抱っこ紐のバックルを何度も確認して、ぐずってもすぐあやせるようにおもちゃをたくさんぶら下げて。
普段の何倍も周りを警戒しながら赤ちゃんと家を出た。
赤ちゃんと一緒に歩く外は、なんとも平和だった。
道ゆく人がこちらを見てニコニコしている。
いつも会釈だけしか交わさないマンションのお掃除のおじさんが、「かわいいねぇ、何ヶ月?」と話しかけてくれた。会うたびにお話をして、赤ちゃんも見かけると「あ!」と、教えてくれるようになった。
近所のスーパーのおばさんは買い物に行くたびに赤ちゃんに手を振ってくれた。お母さんも大変ね、無理しないでね。とあたたかい言葉を添えて。
バスを待っていたら後ろに並んだ高校生が赤ちゃんにいないいないばあをしていた。赤ちゃんがやたらとご機嫌だったのはあなたのおかげだったのね。
電車ではイカつい見た目のお兄さんが席を譲ってくれて、譲ってもらった席の隣にいた、海外から来たというお姉さんは娘にガチャガチャのおもちゃをくれた。サメをかぶったネコちゃんというなかなかシュールなフィギュアだが、赤ちゃんは目をキラキラさせて嬉しそうにしていた。
赤ちゃんを連れてレストランへ入ると、「このサラダのお豆腐、別のお皿に入れたら赤ちゃん食べられるかしら?」と聞いてくれた店員さん。食事中もテーブルの近くを通るたびに気にかけてくれたのがあまりにも嬉しくて、また別の日に訪れたら私たちのことを覚えていてくれていた。そして何も言わずにお豆腐をサービスしてくれた。
なんだ。お外怖くないじゃん。世の中、みんないい人ばっかりだ。よかった。
ありきたりな言い回しだけれど、世の中捨てたもんじゃないな。
素敵なことを気づかせてくれてありがとうね、赤ちゃん。
そして、Xに入り浸るのもほどほどにしようと思った。