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第17回 北アルプス国際芸術祭 その2
こんにちは、vibrance建築と街担当のタツです。
前回に引き続きフラッと行った北アルプス国際芸術祭のレポートの続きをしていきたいとおもます。
土の泉 淺井裕介
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大町エネルギー博物館の大きな壁面に神話の世界が広がっています。
地元の土を塗料として民俗学的な壁画が書かれている作品です。エネルギー博物館には黒部ダムを作るときの大きなコンクリートバゲットが外部に展示されています。その迫力が記憶にある時にこの壁画を見ると、沈んでしまった村の神話がそこに再現されてるかもしれないと妄想してしまいます。
今だと川崎の岡本太郎美術館でも淺井さんの展示が見られます。足元で踏み締める作品も展示されているのでぜひ体験してみてください。
ささやきは嵐の目の中に
ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット(カナダ)
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木崎湖の脇に城址跡近くにある鎮守の森に設置された作品です。細い土の道を歩いていくと、何やら幻想的な物体が目の前に広がってきます。近づくと、どうやらそれはメガネのレンズの原型が糸に連なってぶら下がってるものでした。構造はとてもシンプルでかつ物自体もありふれたものですが、こうして幕状に連ねると日常的な風景が一瞬にして異空間として認識されます。展示を見ている人たちすらこのレンズを通すことで展示されているモノの一部として見えてきます。そもそもここは深い森の中、異界の入り口かなとも思えなくはない世界になっていました。
記憶の眠り 佐々木類
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国の重文の旧中村家住宅でも展示がありました。作品の前に古民家が素晴らしかったのでしばらく色々と見学させてもらいました。ここは江戸時代に建てられた合掌造りの奥座敷を持つ庄屋さんのお宅です。(小屋を扠首構造にするのは古代から使われていた技法なので合掌造りの小屋を作るのは何も高山に限ったものではありません。)蔵もある由緒ある名家だったのでしょう、普段使わない=賓客用の奥座敷まで設えてあります。ガイドさんの話ではここらあたりは麻造りが盛んだったようで、庄屋であるこの家はその作業場も兼ねた大きな土間も作られていました。その土間を使って暗闇を作り、そこにボワーッと緑に浮かぶ作品がありました。地元の雑草を摘んできてそれをソーダガラス同士でくっつけて作られた作品です。この地域を表現することもさることながら、中村家住宅という場を意識して作られた美しい作品でした。
ちなみに中村家の解体修復の記録も売られていて、私はホクホクしながら買ってきました。建築的にも民俗学的にも面白い記録ですので、立ち寄りの際は購買をお勧めします。
黒い跡 ソ・ミンジョン(韓国)
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普段は室内ゲートボール場として使われている大きな空間に発泡スチロールでできた雪原と、そこに燃え落ちた樹木がうもっています。この場所が冬のみ使われるからなのか、雪の上の風景がガンと眼前に迫りきます。ここでこの木を焼いてこの雪原を溶かしたのかなと思って、ガイドさんに聞きましたがそれは違ったようです。そこはちょっと残念でした。
源汲・林間テラス 川俣正
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この作品は今回の芸術祭用に新設されたわけではなく、2018年竣工の「北アルプスエコパーク」の新設に合わせて地元の学生と作られたプロジェクトです。実はアートバスの作品巡りから漏れていて、個人的に宿から歩いて見に行きました(幸い宿からは歩いて30分ほどの位置にあったので朝の散歩を兼ねてぶらぶらと行ってきました)。実は元々、川俣さんの作品は大好きなので芸術祭のリストを見た瞬間にここは外せないとチェックしていました。川俣さんの作品はなんなら作り続けることに意義のあるもの、作ってること自体が意義のあるものなので、ここももっと自律的に増殖させていければもっといいものになると思うのですが予算等あるので仕方ないのでしょう。しかし、森の中に自分たちで道とテラス的なものを機に合わせて作ってあるだけなんですが、その存在自体が美しい。ここの上を歩いて座って振り返って、また歩いての楽しいこと。バスの時間も気にしないでいいので2時間ほどここで一人のんびりと滞在して遊んでいました。多分、いつでもここはあるはずなので、立ち寄って見てはいかがでしょう?歩いてなんぼの作品で、本当に心が震えます。