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映画レビュー、ショーン・コネリー主演『小説家を見つけたら』

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この映画を見ようと思ったのは、好きな俳優ショーン・コネリーが出演していたため。なぜか親しみを覚えていた役者でもあるショーン・コネリー。出演していた作品でいえば「アンタッチャブル」や「ザ・ロック」。この2作はずば抜けて心にとまるものがあった。

彼こそ真の「親父」、そんな思いがいまだにある。スコットランドの労働者出身の家に生まれたコネリー。演技の世界で名をなし、国王からナイトの称号まで授与された。生涯にわたりスコットランドを愛しつづけた人物としても有名だ。そんなコネリーが出演する作品、この映画に期待するものがあった。

*あらすじ  (ネタばれ有り)
舞台となるのは、犯罪者が多いことで有名なニューヨーク、ブロンクス。ヒョンなことから、16歳の黒人少年ジャマールと、家に引きこもる独居老人フォレスターが親交もつという話し。このお年寄り、過去に処女作でピュリツァーを受賞した小説家でもあった。

バスケ仲間にそそのかされ、肝試しに謎めいた老人宅へ侵入するジャマール。しかし、自分のリュックをなぜかその家に置き忘れる。翌日、少年が老人宅前を歩いていると、そのリュックが足元に投げ返された。中身を確認する少年。すると毎日書き綴っていた小型手帳の全てに、赤線で添削が入っていた。よく書けている箇所、ダメなところと、その理由である。少年は的をえたそのレビューが気になり、その老人宅のドアをノックする。

話していると、50年前に突如姿を消した著名な作家だとわかった。老人は条件付きで、その少年の作文指導をすることになる。自分の存在を他言しないこと、そして自分のところで書いたものは外へ持ち出さない。これを守れ!と言う。

この少年には、もう一つの才能があった。バスケットボール選手としての能力だ。地元の高校から私立の有力高校への紹介があり、しかも学費免除だという。少年は行くことを決める。

作文指導の教員クロフォードから、高校内での作文コンテストに作品をだすよう課題が提出された。少年は、老人の家で題材を探し、机の上にあったタイトルをその作品につけてしまう。しかし、それは老作家が過去に雑誌に発表したものだった。

指導教員クロフォードは、以前その作品を読んでいたのだ。明らかに盗用である。だとすれば即退学処分となる。校長はバスケの試合で活躍すればこの問題はなかったことにすると少年に伝えた。しかし、少年は反発し、ワザとミスを犯す。チームも敗れてしまう。

老作家に助けをもとめる少年。しかし、ルールを破ったことで起きたことと断った。その後、その少年が書いた手記が、少年の兄から老作家に届けられる。一読するや、老作家は、学校のコンテスト会場に赴くのだった。

そして、自分の名がフォレスターであることを明かし、なんの前ぶれもなく、書き留めた文章を朗読。するとすぐに、拍手で会場が覆われる。そして一言。この文章はジャマール少年の書いたものだと告げた。校長は少年の不始末を不問に伏すとした。

老作家フォレストは、余命いくばくもないガン患者だった。自分を救ってくれたのは、君との交友だったという手紙が、少年ジャマールの元に届けられた。

*率直な感想
引き込まれたのは、映画で出てくるそれぞれのセリフ。これが実にいい。この映画の肝になっているようだ。さすがに小説家を題材とした作品である。それぞれの言葉遣いが、秀逸と言えるだろう。

問題は、そのタイトルにあると見た。邦題の『小説家を見つけたら』では、観たいと思う人が少ないのではないだろうか。映画を最後までみて初めて意味がわかってくるからだ…。


ここでいう「小説家」には、2つの意味がある。引退していた文豪としての小説家、つまり老作家フォレスター。そして、16歳で才能豊かなジャマール少年。

世間では、著名な作家「フォレスタ」はどこに行ったか?小説愛好家のなかでは、関心事の一つだった。なぜ、フォレスターは身を隠したのか。兄や家族を失ったことへのトラウマがあったようだ。

それが、少年ジャマールとの交流のなかで癒されていく。そしてまた、その少年への指導により、自分の身につけていた知識を、次世代へとつなげることとなった。

ジャマール少年の危機を助けたフォレスト。だが、一番助けられたのは、この老作家の方だった。フォレストは、癌でほどなく逝去。しかし、清々しい気持ちで旅立ったと言える。

人はなぜ、高齢になっても生き続けるのか!の答え。それは次世代への橋渡しということだろう。そしてそこにこそ人間としての英知があるということだ。そのような意味において、この作品はそのことをよく教えてくれた。

あえて一言いえば、タイトルを邦題なら「作家フォレスターを見つけたら」とするか、原題とおりに「ファインディング フォレスター」で良かったのではないか。この方がハッキリすると思う。

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