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[映画レビュー]トム・ハンクス主演『オットーという男』(2023年米国)

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#トム・ハンクス
#オットーという男

多分この映画の主演がトム・ハンクスでなかったら観なかったと思う。出だし部分から、ホームセンターの店員に難癖をつける。どうと言うこともないのに、主人公は怒りをぶつけるのだ。逆の立場で仕事をしてきた自分にとって、この手の客にはウンザリさせられる。しかしアカデミー主演男優賞をニ回も獲っているトム・ハンクス。彼に期待して見続けたというのが、本当のところである。

*原作は、小説『幸せなひとりぼっち』
スウェーデン人のフレドリック・パックマンの処女作となる小説。2012年に書いたもので、本国ではベストセラーになったと言う。パックマンの経歴はちょっと変わっている。大学で宗教学を学んでいたが中退。それ以降、トラック運転手、フォークリフト作業員、レストランの手伝いなどを転々とした。そうした中で、文筆活動を始める。

この小説、スウェーデンではかなりの評判となり、出版から3年後の2015年には映画にもなった。『Ove(オーヴェ)という男』というタイトルで封切りとなる。主人公オーヴェは鉄道会社の整備員をやってきた59歳の男。会社を解雇され、妻にも先立たれた。そこにイラン人家族が、自宅の向かいに引っ越してくるという設定だった。

*終活がテーマのひとつ!
人生の終わりを意識した活動、これを終活というが、主人公のオットーは自分で自分の最後を迎えようとしていた。つまり、本気で亡くなった妻の元へ旅立とうとして、自殺つもりでいたのだ。回想シーンで、妻ソーニャとの出会いから旅行中の事故についても描いている。オットーには良すぎた妻だった。

その妻ソーニャを半年前に亡くしてしまい、会社も退職となった。親族や子供すらいない。完全な一人の身。全くこの世には未練がなかった。そんなところに、向かいの住宅にメキシコ人家族4人が引っ越してくる。全く文化の違うファミリーは、人との壁を作らない人たちだった。

妻の名はマルソル、夫はトミー、そして2人の娘アビーとルナ(5歳と3歳くらい)。困り事があるとオットーに頼ってくる。かなり偏屈で嫌われ者のオットーだが、メキシコ人夫妻は意に介さない。いろんなことに聞いてくる。そして、お節介なところもあり、交流を求めてきたのだ。

*見どころが、「自殺方法」?
オットー、いろんな方法で自殺を試みるが全て失敗する。そしてそれが新たな人との交流となるという設定。なぜかネガティブなイメージが起きなかった。何もすることがなかったら、やはり死にたいんだろうな!こんな印象をもつ。だが結果としては、これが生きることにつながるという不思議を描いている。

とにかく怒りっぽくなっているオットー。周囲との間に壁をつくり、孤独というものがあるんだろう。だがやはり食生活にも偏りがあったり、運動不足があったり、睡眠の質が悪いということも重なると、なりやすいと言える。考えてみるとオットーの向かいにいるマルソルのお陰で元気がでるのだ。

料理をつくり、やたらとオットーに渡す。もらったオットー、何気なく食べてしまう。自分の娘たちの面倒までオットーに見させる。偏屈ではあるがキホンは人の良いオットー。困った人を見ると、助けてあげようとするのだ。亡くなった妻ソーニャは、そんな女性だった。多分オットーは妻から学んだようだ。

*老人がやるべきこととは?
この映画、一つ一つのシーンが学びとなると言っていい。老人がやるべき事は人との交流である。新たな人との出会いは、脳を活性するのだ。他人の手伝いをすることも老人にとっては良いおこないである。人助けは、幸福感をあげることに直結すると言える。

人に物事を教えてあげることもオススメのひとつ。高齢であれば知識は若い者の何倍も蓄えている。それを若い世代に教えてあげるのだ。そのことで次の世代が育っていく。そうやって人類は歴史を築いてきた。これこそが、老人パワーのチカラともいうべきものだろう。

*まとめ
オットーに関わった人たちは、黒人やメキシコ人、そしてトランスジェンダーと多彩だった。そんな世の中ではあるが、そうした人たちとの交流こそ大事と言えることをあらわしている。できることならもっともっと人との交流を深めていくべきと考える。

私もこのことを常に考えて行動してきた。コロナ禍前まで、約8年間、地域住民と朝市をやってきたのだ。残念なことに未だ再開の目処はたっていない。だが、もう一つの事業、健康麻雀教室は続けている。人と人との交流の場を広げることこそ、「幸福をえる道」と考え、おこなっているのだ。

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