トム・ハンクス主演『この茫漠たる荒野で』(原題 News of the World )
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この映画の時代背景、ちょうど日本では戊辰戦争(1868〜1869)が終わったのときの話し。アメリカでは南北戦争(1861〜1865)が終わって、5年くらい経った南部の開拓地が舞台となっている。日本で幕末に、尊王攘夷派が台頭。西国雄藩は、あのグラバーなどの商人から大量の武器を購入した。これらの銃火器のほとんどが南北戦争で不要となったものだ。アメリカと日本は、おおきく見るとかなりつながっていたと言える。
*映画の基本情報
本国米国では、2020年に公開されているが、日本での劇場では行われなかった。たぶんコロナ禍が猛威をふるっていたことも影響したのだろう。ただ、おおくの批評家が好印象を持ったようだ。
いま日本で観れるのはNetflix。いつもこのストリーミング・サービスでなにか面白い映画はないか!探していて、たまたま見つけたものだ。西部劇嫌いの妻も、最後まで観て「いい映画だった!」との一言があった。ジャンルは西部劇というより、ヒューマンドラマと言ったほうがいいかもしれない。
*あらすじ
南北戦争で敗れた米国南部地方が舞台。南軍の元大尉ジェファーソン・カイル・キッド(トム・ハンクス)が主役だ。彼は南部の田舎町から街へと渡り歩き、新聞のニュースを人々に読み聞かせることで生計を立てていた。それというのも、もともとの仕事は地方新聞を発行していたということ。教養のない人々に、社会の仕組みや、人としてのあるべき姿を教えていたのだ。
そんな道中に、壊され横たわった荷馬車を発見する。少し前へ進むと、馬車の御者である黒人が、首にロープをかけられ、木に吊るされていたのだ。その馬車のなかには、先住民の衣服を身にまとった白人の少女がおり、近くには一通の書類が目にとまった。なかを見ると、少女の名はジョハンナ、家族が殺され、親族の所へ連れていく途中だとある。通り掛かった部隊の指揮官に話すと、近くの軍検問所へ連れて行くように言われた。
ところが、その検問所にいってみると、担当者は不在で、3ヶ月は帰ってこないと言う。仕方なくキッズ自らが送り届けることにするのだが…。600キロメートルもある道中、様々なアクシデントが待ち構えていた。……さて、この先どうなるのか……?
*監督はポール・グリーングラス
。サスペンス・スパイ映画「ボーン」シリーズで有名な監督。元CIA暗殺者ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)がCIAの陰謀と戦いながら、自分のアイデンティティーを取り戻していくストーリー。はらはらドキドキの展開に目が離せない。
グリーングラス監督の特徴は、カット割が格段に多いこと。また手持ちのカメラを利用し緊張感を醸しだす。また、少ない会話で物語を構成していくのも、この監督ならではの手法と言える。
ただ今回の映画では、ほぼ緊迫したアクションがないため、そのような方法は取らなかったようだ。淡々と話しを前に進めていていく!それでいてどこか心温まる作品に仕上げた。
*この作品、訴えたかったこと!
アメリカ社会、いまだに移民問題や人種差別がまかり通っている。また、もともとアメリカの土地は先住民(インディアン)のものだった。大航海時代以降、ヨーロッパから次々に白人が押しよせた。そうして行ったのが、先住民への迫害と殺戮、これを際限なく繰り返していった。
ヨーロッパ人は、綿花の供給先を、新大陸アメリカに求めた。多くのアフリカ人を奴隷として拉致し、アメリカに送り込んだのだ。そして、黒人奴隷による綿花栽培が始まり、多くの白人は多額の利益を得ることになる。
南部に入植した白人、彼らのほとんどは貧しい家の生まれ。そもそも教養がない。当然のこと、酷い仕打ちを黒人奴隷に与える。しかし、そんな土地にも教養あるキッズのような人物がいたのだ。彼は人々に知識を与える!それを天職とした。
*この作品の評価
ストーリーとしては予想通りの展開となり、初めからこうなることがわかったような作品。しかしそれでいて、徐々に目が離さなくなった。トム・ハンクスの演技も良く、少女役のヘレナ・ゼンゲル(ドイツ人12歳)もよかった。
批評価の多く、87%から支持されたという。ゆっくり進むストーリーに、観たものの心をグッとつかむものがあったとされる。南北戦争中に、妻を疫病で亡くしたキッズ。何もかも失ったと思っていたが、思いがけないところから生き甲斐を見つけるという展開。これに心を動かされたということだろう。
まとめ
この映画が日本のシアターで上演されるなかったのは残念と言うしかない。どこもパッとしたところがないように思えたが、見終えたとあと爽快感がのこる。コロナ禍だったからこそ、やって欲しかった作品とも言えるようだ。まだ観ていない方にはオススメする。
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