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がん経験者向け保険を考える①|思考の流れと保険会社の視点

がん経験者向け保険について考えています。
初回は細かい内容ではなく、一歩引いた目線で眺めてみます。


◆思考の流れ

経験者向け保険は、①再発後に備える機能②新たながんに備える機能があります。

①を定数、②を変数として、①から処理することで、思考がスムーズに流れることを期待します。
高額療養費制度以外の諸制度も、変数とします。

①は原発巣の再発で、一義的に決まります。
②は不明です。通常の保険加入時と同様、性別・年齢から罹患率をベースに考えることになりそうです。
③も不明です。傷病手当金については、前回触れました。

扱いやすいもの(定数)から検討して、扱いにくいもの(変数)は後回しにします。

高額療養費制度の利用も不明と考える場合、国民皆保険との矛盾は抜きにして、高額な医療費に備えてがん保険に加入する流れにはなりそうです。もっとも、がん保険は高額療養費制度を前提にした設計になっており、なんだか迷子になってしまいます。素直に高額療養費制度も定数にします。

*発展的なお話
②は特別な事情があれば、①に盛り込んで定数とみなします。具体的には、遺伝子パネル検査の結果、血縁者が遺伝性腫瘍と判明しているケースが典型です。保険加入の際に保険会社は遺伝性を考慮してはいけないことになっていますが、加入予定者が自ら盛り込んで検討するのは自由です。
いわゆる“がん家系”と思ってしまうようなこともあるとは思います。その場合は、②の比重を少し重くして考えてみてもいいかもしれませんね。

遺伝性腫瘍


◆保険会社の視点

再発は一般に術後3年以内、特に2年以内で好発です。保険会社からすると、経験者向け保険は(未経験者向けと比べて)リスクが高い商品になります。

そこで、保険料を割高にしつつ性別・年齢以外の要素も加えてリスクを抑えた設計にするか、そもそも販売自体しないと考えるのが経済合理的ですしビジネスなのだろうと思います。

がん種・病期でも傾斜をかけた保険料

まずは、MICIN保険。
https://micin-insurance.jp/list/cp03

乳がん・子宮がん・卵巣がん」を対象とした女性のがん経験者向け商品です。上記がんの手術から「6ヶ月経過」と相当早いタイミングで加入でき、ビジネスのリスクは一層高くなります。

もっとも、性別・年齢だけでなく、がん種・病期(ステージ)でも保険料に傾斜をかけた上で「月額保険料一覧」に落とし込んでいます。自賠責保険のイメージで、かなり微調整を加えている印象です。

保障内容は、診断保障だけのプランと、死亡・高度障害保障加えたプランです。対象者・ビジネスどちらにとっても見通しがつく内容だとは思います。

設立は2020年2月4日、少額短期保険業の登録日は2021年6月30日なので、まだ若い会社です。

*がん領域
対象を女性に絞るというのは、ポイントなのかなと想像します。アピアランス(外見)ケアも、初めは女性を念頭にしていました。副作用管理のアプリ開発でも同様です。それはビジネスだけの視点なのか。何事も今が過渡期だと思っています。

*男性向け
保険一般として同じ年齢の場合、女性の方が保険料は割安です。同じ商品を男性向けにも販売すると、保険料がさらに高くなってしまうことは容易に想像できます。次にご紹介する保険との棲み分け、ニッチな需要をアピールしていますし、そういうことなのだと思います。


性別・年齢だけで傾斜をかけた保険料

次に、米国外資のアフラック保険。
CMのイメージが強いですが、日本で初めてがん保険を販売しました。経験者向け商品を複数販売していますが、がん種を限定していません

医療保険ではなく、がん保険を見ていきます。
https://www.aflac.co.jp/gan/exwings/

こちらは保障内容が細かいので、パンフレットも取り寄せました。2024年8月現在の最新版です。

(左)パンフレット・2023年1月版
(右)重要事項など・2023年4月版

性別・年齢だけで一律の保険料にしていますが、「5年経過」を対象とすることでリスクを抑えた設計です。

これを加入者の視点から見た場合、、、

たとえば、性別・年齢・がん種が同じでしたら、ステージ1よりステージ2の方がお得になります。
見方を変えると、ステージ1の加入者は高い保険料になっていると言えそうです。

この点、先ほどのMICIN保険の場合、当該保険の枠内である種公平性が担保されています。ステージ1よりステージ2の加入者の方が、高い保険料になっているからです。

なお、5年経過ではなく「3年経過」で対象になるのは、以下のがん種です。

胃がん・大腸がん・子宮がん・乳がん・前立腺がん・甲状腺がん・皮膚がん(悪性リンパ腫、黒色腫は除く)、卵巣がん、精巣がん

パンフレット(2023年1月版)より
※原文ママ

一見すると健診や検診の対象になっているもののようにも思えますが、そうでもなかったり、それだけでもなかったりですね。

長くなりました。
続きはまたにします。


あとがき(雑談)

保険絡みで。
先月、生命保険買取サービスが報道されました。

以前からあるビジネスですし、傘下に入り社名を変更して販売を続けている後発組です。それをわざわざ配偶者が担当する番組内で取り上げて、親会社の本人も出演する。配偶者が担当しない曜日に扱うというのが一層。。。ただの宣伝です。

バランスを取りたくなってしまうので「株式会社リスク・マネジメント研究所」のリンク先を貼ります。こちらが先発で、あちらはいわばジェネリックです。静岡がんセンターのように、クラシックなHPです!


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