がんマニアたちによる研究成果のお披露目会***
米国臨床腫瘍学会(ASCO)と並び、がん領域で影響力のある欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の年次総会が10/20-24開催されました。今年の会場は、スペインのマドリッド。
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ESMO2023は、注目すべき発表が多かったです。
①抗がん剤/分子標的薬/抗体薬物複合体+②免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が、さまざまながん種で採用される流れは続きそうです。①薬剤で直接攻撃する+②活性化したT細胞にも攻撃に加わってもらう、というイメージです。ICIとの併用は、すでに日本でも標準治療になっているがん種もあります。今後も適応拡大していく方向です。
また、同じく適応拡大中のエンハーツ®(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)をはじめとする、抗体薬物複合体(ADC)にもやはり注目が集まりました。
そして、最大の注目は進行性尿路上皮がんの発表でした。これまでの治療の歴史を大きく変えてしまう内容に、マニアたちは全員衝撃を受けたはずです。ADC+ICIにより、尿路上皮がんに新しい時代がやって来るのだなあと感じました。
もっとも、単剤であっても分子標的薬はほどほどに、抗がん剤やADCはそれなりに副作用があります。ICIとの併用により、同程度かそれよりも重くはなります(し、最終的には患者さんごとに多少差はありますね、というのがより適切な表現になります)。
そこで、副作用管理と症状を抑える支持療法が、一層重要になってきますし、腫瘍内科医の存在感もより増すことになるだろうと考えます。
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今回のさまざまな発表を受けて、日本の患者さんの元に届くのは、1〜2年後かなと思われます。薬剤はどうしても時差が出てしまいます。2022年までに発表された治療法や治療薬については、承認されて患者さんに届いているものもありますね。
がん種によって進歩の程度差はありますが、着実に前進しているという事実と、毎年研究成果をお披露目して世界中で共有する場があることを知っていただきたく、時期をずらしてテンション抑えめに書いてみました。
この瞬間も、世界中で新薬の研究や治験が行われています。
昨日、アステラス製薬が『第2四半期決算概況』の公表後、パドセブ®の副作用管理についてリリースもありました。ESMOでのインパクトを受けてのことだと思われます。
薬物療法、特に新薬の場合には、製薬会社作成の『患者さん用冊子』に列挙された副作用(免疫チェックポイント阻害薬では、免疫関連有害事象)を覚えるくらいまで熟読することが大切です。
そして、少しでも違和感があったら勘違いでも構いませんので、通院先に連絡をしてくださいね!
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