花酔ひ
薔薇園で強香の薔薇たちに囲まれれば
薔薇酔いするように
桜の、夜目にも浮き立つ白さ、
満開も散り際もー誘われ
異形のモノに囚われるような怖さ、
凄惨とも思う艶やかさ。
長居は心酔わすのだ、狂わすのだ。
いつか読んだ「花酔ひ」をつと思い出す。
日が暮れるのが遅くなり、夕方6時にはまだ外は明るい。
ふと花見客の賑わう声と
それより強く桜たちが呼んでいる気がして
帰路、河岸を歩いた。
30分もしないうちに、夜の帳が顔を出し
慌てて其処をあとにしようとしたならば
肩に花弁が一片。
よく観れば、風に舞い闇夜に雪のような桜が舞っていた。
おいでおいで、と
その甘美な声に耳閉ざし
まだまだ日常を生きなければと強く思うのだ。