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ゲームと私[作品別編]:ロードランナー&チャンピオンシップロードランナー

『ロードランナー』は私が初めて自分でお小遣いを貯めて買ったソフトだった。

ここで軽く作品の概要に触れておこう。
ロードランナーは元々ブローダーバンド社がパソコン向けに開発したタイトルで、『バンゲリングベイ』『チョップリフター』と合わせて”バンゲリング帝国三部作”と呼ばれる作品のひとつ。ロードランナーとバンゲリングベイはハドソンから、チョップリフターはアイレムからそれぞれファミコンへと移植されている。
ゲーム内容は、帝国の地下から敵兵(ロボット)の追跡をかわしつつ金塊を持ち帰るというアクションゲームで、ちょっとしたパズル要素も盛り込まれている。

ハドソンがファミコンのサードパーティとして参入する際に発売された肝入りのタイトルであり、私もその力の入った広告に惹かれて購入を決めたのだ。

それまでファミコンで発売されていた任天堂の作品とは明らかに毛色の違うそのゲーム内容に私は病みつきになった。アクションあり、パズルありと様々な要素を組み合わせたステージを攻略していくのはまさに快感だった。そしてもう1人、この感覚に取りつかれた人間がいる。私の父だ。

父はとにかく多趣味かつ器用で、新しいモノに対してあれやこれやと興味を示す人だ。子供のためにと買ってくれたハズのゲーム&ウォッチで真っ先にスコアをカンストさせてしまうような人である。父は当時には珍しい”ゲームを嗜む大人”だった。

そんな父もロードランナーにハマった。
ロードランナーにはエディットモードがあり、自作のステージで遊ぶことも出来るのだが、私と父は色んなステージを作っては「いやこれクリア出来ひんやん、どないすんねん(笑)。」などと遊び倒していた。

そして1年後、ランナー君は帰ってきた。『チャンピオンシップロードランナー(以下CS)』として。

CSはパズル要素をより前面に押し出したような内容になっていた。レンガを時間差で掘って脱出経路を確保したり、ロボットを上手く誘導してその頭の上を渡ったりと、攻略にはとにかく頭を使う構成になっていた。発売前に公表されていたステージ1にはそうしたギミックが詰まっていて、そこで基本的な攻略法を身につけてから先に進めと言わんばかりの作りだった。

パッケージ右下のメッセージ。
「警告!ロードランナー未経験者お断り!」
開発側からの挑戦状さながらだ。

そこで私は発売前から予習することにした。
上記のエディットモードで公開されているステージ1のギミックを部分的に再現したのだ。父もこれに乗ってきた。準備は万端である。

そして我ら親子とCSとの戦いは始まった。

CSは1ステージをクリアする毎にパスワードが表示され、50面すべてのパスワードを揃えて応募すれば”認定証”がもらえるキャンペーンを行なっていた。

「やったろうやん!」

アクション要素が強いステージは主に私、パズル要素が強いステージは父と役割を分担しながら日々順調に攻略を進めていく。そしてあの”悪夢”が姿を現した。

最難関とも言われる”悪夢”のステージ31。
このたった1つの金塊が・・・とにかく取れない!

どうやっても金塊に辿り着けない・・・。
そこら中に仕掛けられたレンガに見せ掛けた落とし穴。どこを掘りどこに落ちればあの金塊をモノに出来るのか。数日の間進捗がないままだった。

とうとう父はチラシの裏にマス目を書き出した。
マップを丸写しし、片っ端から掘れるレンガを掘り、落とし穴にハマり続け、それらをすべて書き込んでいった。そして父の執念がついにアリアドネの糸を手繰り寄せた。悪夢は去った。

そこからは早かったように思う。
それまでの経験を活かし一気呵成に攻略を進め、わりとあっさりと最終ステージまで駆け抜けた。

すべてのパスワードを取扱説明書ウラの応募用紙に書き込み、封書を郵送した。
数日後、ついにアレが届いた。

”クリア認定証”ことチャンピオンカード。
(画像はネットより拝借。)

届いたカードのNo.は忘れもしない『2771』。
ちなみにこのカードのNo.3000を所持するのが、のちに映画で高橋名人と雌雄を決する毛利名人である。

父と私で成し遂げたこの出来事は死ぬまで忘れることはないだろう。
それほど思い出深い、楽しい日々だった。

”ロードランナー”・・・。
それは小学生だった私にとっては「父との思い出」そのものなのだ。

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