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~fünfzig(フュンフツィヒ)~ act.2 / 酔ってトラックにはねられたら改造人間にされていた件

市川寛次いちかわかんじ(50)は改造人間である、らしい。

酔ってトラックにはねられた彼は謎の地下組織により
改造しゅじゅちゅ…改造手術を受け、仮面ライダー
モドキとして蘇ったのだ!

ナレーション:中江新人

「地獄からの使者、クモオトーコッ!」

♪デッデレーデデレッ!

「ちょっと待て!ふざけるな!

ご丁寧にジングルまで流しやがって!」


あまりの事態に大声を張り上げてしまった。
「何をごちゃごちゃ言っているfünfzigフュンフツィヒ?オレは貴様を
連れ戻すために遣わされたショッ・カンの改造人間、
クモオトーコッ!大人しく着いてきてもらおうか。」
「市川さん!スゴいですよほら!スパイ○・・・。」
「それ以上は言うな!仲谷くん!」
「は、ハイ・・・。」

情報が渋滞しすぎてまったく理解が追いつかない。
えーっと、なんだ・・・。
「おい、聞いているのかfünfzigフュンフツィヒ。」
「それだ。そのヒュンケルだかヒュッケバインだか
言っているのは何だ?俺の事なのか?」
「お前のコードネームだよ。聞いていなかったのか?
50歳のオッサンだったからドイツ語で”50”、fünfzigフュンフツィヒ
教授は名付けたそうだ。間違っても不死騎団長でも
なければ凶鳥の眷族でもない。」
教授・・・あの時の老人か。
それにしても詳しいなコイツ。軽くぶち込んだネタを
こうもキレイに返されるとは。

「それで、お前たちショッカーだかジョッカーだかの
目的は一体なんだ?」
コイツ、聞けば何でも答えてくれそうだ。
今のうちに聞けそうな事は全部聞いてしまおう。
「おい貴様!我らを侮辱する気か。ショッカーなどと
下らない作り話と一緒にするな。我らショッ・カンは
宿敵であるソウギーとソン・ゴを倒し、やがて全土を
統一して帝室の威厳を取り戻すのだ!貴様はその為の
重要な駒となるべく生み出された戦士なのだぞ!」

・・・え?俺の聞き違いか?

「お前、今”蜀漢”と言ったか?」
「そうだ。我らは1800年も前から帝室を復興すべく
戦う”おとこ”達の意志を受け継ぐ者だ。」

・・・は?何だこれ?
仮面ライダーかと思ったら三国志混ざってきたし。
仮面ライダービルドって最初そんな三つ巴だっけ?
頭イタくなってきた。
いや待て待て。「曹魏と孫呉を倒し」って言った?

「という事は、お前たちの他にも曹魏と孫呉、まだ
2つの地下組織があるって事か?」
「組織ではない!帝室だ!貴様、なめているのか!」
あー、やっぱりあるのか。これは面倒な気がする。

「あの、市川さん。何の話をしてるんですか?」
「仲谷くん、キミ、三国志は知ってるか。」
「無双とかゲームくらいでしか知らないです。」
「そうか。暇があったらネカフェで横山光輝よこやまみつてる先生の
漫画を読むといい。全60巻あるけど。」
「わ、わかりました・・・。」

「おい貴様!我らの元に戻るのかどうかはっ・・・。」
「その前にもう一つだけ聞きたい。お前はなんだ?」
「さっきから言っているだろう。オレは!」

「キノコ狩りの男、クモオトーコッ!」

♪デッデレーデデレッ!

どこかで聴いた事があるイントロに合わせ、怪人は
腰を低く落とすと腕を左右に忙しく動かしポーズを
取っていた。
・・・さっきと二つ名変わってないか?

「ふざけるな!なんでここでス○イダー○ンが出て
くるんだよ!!MAR○ELに怒られるだろうがっ!」
「何を聞いていたんだ貴様は!クモオトーコッだと
言っているだろうが!最初に出てくる怪人はクモと
相場が決まっているじゃないか!」

なるほど、そういう事か。「怪奇蜘蛛男○パイ○ーマン」ってか。

アホか!!


仲谷くんとアイコンタクトを取り、玄関のほうへと
視線を送る。
どうやら彼もその意図を汲んでくれたようだ。
2人で横並びに蜘蛛男と対峙する。
「もうえぇわ。ありがとうございました~。」
そのまま2人で玄関からはけていく。

(*´꒳`ノノ゙☆パチパチパチパチ

蜘蛛男が拍手で送り出してくれた。


「アイツがバカで助かったな。」
「そうですね、市川さん。」
階段を降りながらこの後の事を考える。
「市川さんの家に行ってみますか?」
「君は俺の家を知ってるのか。」
「えぇ、市川さんが呑み過ぎて1人じゃ帰れない時に
何度か送っていきましたから。」
「ハハハ、それは申し訳ない。」
「でも惜しいなぁ、仮面ライダーとス○イダ○マンの
対決が見られたかもしれなかったのに
。」
そうしてマンションから出たその時である。

「心配せずとも見せてやるぞ、その対決。」


蜘蛛の糸にぶら下がり、逆さ吊りの状態で蜘蛛男が
突如目の前に現れた。
「うぉっ?!」
「逃がす訳ないだろうが!」
蜘蛛男の蹴りが襲いかかってきた、何ら防具もない
頭を狙って!
「くっ!」
咄嗟に両腕でカバーしたものの、その強烈な威力に
数メートル吹っ飛ばされた。
「うぐぅっ。」

・・・強い。
これが完全な改造人間の力なのか。
当たり前だがこれまでの戦闘員とはレベルが違う。
まともにやって勝てる見込みはない。
どうすれば・・・。

「貴様、オレをナメているのか?何故変身しない?」
蜘蛛男は予想だにしない言葉を口にした。
「・・・何?今、何と言った?」
「何故変身して戦わないのかと聞いている。」

・・・え?「変身」ってどういう事?
”これ”って今、変身してる状態じゃないの?

「あの~すみません。つかぬ事をお伺いしますが。」
「いい加減にしろfünfzigフュンフツィヒ。また質問か。」
「そうおっしゃらずに。同じ改造人間の先輩じゃ
ないですか~。」
「・・・よかろう。これで最後だぞ。」
上手くいった。これでいい情報が引き出せれば・・・。
「俺のこの姿は”変身前”って事ですか?」
「そんな事も知らんのか。貴様のその姿は”素体”だ。
その姿を経て真の強化人間の姿へと変身するのだ。」
「それって洗脳されてたりする必要はあります?」
「ない。貴様の腰にも”アーキテクト”が装着されて
いるだろう。それがあれば変身は出来るハズだ。」

物陰で仲谷くんが今の会話を録画してくれている。
あとは・・・。

「それで、どうやって変身するんですか?」
「そこまでは知らん。個体によるからな。」
「ちっ、使えないヤツ。」
思わず本音が漏れた。

「貴様ぁ!もう連れ帰るのはやめだ。死ぬがいい!」
言うが早いか、蜘蛛男は口から粘液を吐いた。
「うおぉっ!!」
間一髪飛び退くと、粘液がかかった辺りでは道路の
アスファルトがぐずぐずに溶けている。
「おいお前!スパイダーマンはそんな事しないぞ!」
「知るか!オレはクモオトーコッ!だ。」
「市川さん!伏字忘れてます!」
いかん、このうえ○ARVEL社からも刺客が放たれては
とてもとても困る。

「ソイツは東映版スパ○ダーマ○なのでM○RVELは
大丈夫だと思います。」
「でもコミックス版○パイダーバースには出てるじゃ
ないか。それに東映とMA○VELとの提携で生まれた
番組だし。」
「あー、それもそうですね。」
「き・さ・ま・らぁ~!!スパイダー・ストリングス!」
もうやってる事が完全に東映版ス○イダーマ○だ。
飛んで来た蜘蛛の糸をMATRIXのネオばりにリンボー
ダンスよろしくかわそうとしたが、そのまま背中から
倒れて頭を打った。
「あ痛!」
どうにかあの糸に絡め取られる事だけは避けられた。

・・・が、しかし。
仰向けに倒れた所へ蜘蛛男が上から降ってきた。
どてっ腹を両足でモロにスタンプされる。
「がはぁっ!!」 
反吐を吐きのたうち回る。
改造人間なのに吐くものがあるのも驚きだが。
「終わりだな、fünfzigフュンフツィヒ。」
蜘蛛男がその腕を頭めがけて振り下ろそうとした、
その刹那。
「うわぁぁぁ~!」
仲谷くんが蜘蛛男に体当たりを仕掛けた。
「何のつもりだ仲谷、大人しくしていろ。」
体当たりにも微動だにしない。やはりその強靭さは
ケタ違いのようだ。
「仲谷よ、お前は大事な”検体”なのだ。」

・・・何?
コイツら、仲谷くんまで狙っているのか?

仲谷くんに腕を伸ばそうとする蜘蛛男の足に必死に
しがみついた。
せめて彼だけでも逃がさないと。
「往生際の悪いヤツめ!」
蜘蛛男が俺を振りほどこうとする。と・・・。

プシュー!!


スプレーの音がした。
「ぎゃああああぁ!!」 
「うわっ!」
あまりに突然蜘蛛男が暴れ始めたせいで、俺は振り
ほどかれてしまった。
蜘蛛男が顔の辺りを押さえ苦しんでいる。
「ぐおぉぉ、ゆ、許さんぞ・・・。」
「何があったんだ?」
「これですよ、殺虫剤。」

・・・え?
そんなカンタンな事でいいの?

「最後の手段だ・・・逃げるんだよォ~仲谷くん!」
「わぁ~~ッ!なんだこの人ーーッ!!」

俺たちは蜘蛛男がもがき苦しんでいる間にとっとと
逃げる事にした。

《続く》

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