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【美術さんぽ。遠足編】襖絵にドラマあり!東本願寺で非公開の竹内栖鳳を観てきた。
暑い毎日。お盆過ぎても、毎日、暑い。
ネットで『東本願寺: 非公開の白書院・宮御殿・御影堂門の楼上まで~御所から移築した御殿、竹内栖鳳の超大作、世界最大級の木造建築まで~』というツアーを見つけたので、早速行ってきた。
「風がありますから、ちょっとましですね」と、案内してくださる本山僧侶。・・・やっぱり、暑い。
阿弥陀堂(明治28年再建)からはじまり、御影堂(明治28年再建)、そして非公開エリアの大寝殿・白書院・能舞台・宮御殿・御影堂門の楼上などを見学。
(阿弥陀堂、御影堂、御影堂門ほか、6棟が重要文化財)
能舞台では去年、紅白でAdoが歌った。
T.M.Revolutionも来たことがあるらしい。
庭園の池に引く「本願寺水道」の話は、歴史の深さ、当時の技術を思って「すごい~」のため息。
盛りだくさんすぎて書ききれないので、後日。
以下、竹内栖鳳の襖絵と障壁画3点は大寝殿で拝見。
『歓喜 かんぎ』
対照的な画題を示す両脇の水墨花鳥図に対して、着色画で描かれているため、美しく引き立ち、大寝殿を荘厳している。暖かなひだまりで餌を啄む雀が色彩豊かに描かれ、遇法の喜びが表現されている。中央に一部損傷補修の後が残されているが、元々二羽の雀が描かれていたと類推されている。
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雀が遊ぶ様子は、一羽ずつの表情が微笑ましい。
背景を描き込んでいないのに、雀たちがちゃんと空間に存在する。
しかも躍動感があってリズミカル。
残念なのは、説明にあるように、一部損傷修復された跡※がくっきり。
ある日、何者かに切り取られているのが発見されたそうだ。
もともと十羽の雀がいたが、今は八羽。
切り取られた部分は向かい合った二羽がいた。
そんなことがあったからだろうか、ガラス越しの対面。
間近で拝見できるが、映り込みと反射で写真が難しい。
僧侶曰く、真筆の雀の発見をテレビで観たときは、そうかもしれないと息をのんだそうだが、未だ発見されていない。
栖鳳がいかに雀を愛したかは、昨年の展覧会でも取り上げられていたのを覚えている。
この展覧会は素晴らしかった。
『竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー』(京都京セラ美術館・2023)
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ところで、ここまで書いて、(この雀たち、違和感あるな・・・)
よく見る雀には頬に黒い模様があるが、この絵の雀にはない。
頭も赤すぎる・・・。
もしかして「ニュウナイスズメ」かもしれない。
分布的にも京都市内で合っている。
それに、そんなにレアではないぞ。
・・・・・と、結果、これは完全に私の早とちりと判明。
目に見えていたのは、頬の模様。よく見ると頭を傾げているだけ。
ちなみに、ニュウナイスズメは、枕草子に「頭赤き すずめ」との描写あり。
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・・・閑話休題。
2点目。
『風竹野雀 (ふうちくやじゃく)』
こちらもまた胸の高さくらいまで保護されている。
『風竹野雀 (ふうちくやじゃく)』
強い風に吹かれ、大きく枝がしなっている竹林の中を二羽の雀が飛翔しながら争っている姿が描かれ、現世の闘争と煩悩は表現されており、南側の古柳眠鷺とは対照的な表現となっている。
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・・・この雀。めゃくちゃ怒っている。
頬の黒い模様。正真正銘の「スズメ」。
先ほどは失礼しました。。
案内してもらった順に、3点目は『古柳眠鷺(こりゅうみんろ)』
『古柳眠鷺(こりゅうみんろ)』
雪景色に生い立つ柳の古木の上で静かに休む白鷺の姿が、風竹野雀の動態表現に対して静態表現で描かれている。今にも折れてしまいそうな柳の枝先に白鷺が休んでいる姿を通して浄土の静寂が表現されている。
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今にも折れそうな枝にとまっているはずが、現在は保護ガラスの縁にとまっている白鷺。枝だろうが、縁であろうが、白鷺の安心しているたたずまい。
何にも揺るがない浄土の静寂。
時代を超えても変わらぬ静寂。
今にも折れそうな柳とあるが、古木のこの力強さと美しさ。
凛とした緊張感が澄んでいる。
締めくくりに、御影堂門の楼上へ上がって京都市内を見渡す。
正面方向に清水寺。
右手は京都駅。
左手は比叡山。
日は陰りかけているとはいえ、熱風が吹きつける。
晩夏の午後。