映画『Cloud』の感想 続き
『Cloud』は黒沢清監督作品としては、わかりやすいと思う。
あらすじとしては・・・(ネタバレ)
前半は、主人公である真面目な若者(菅田将暉)が工場勤務をしながら転売屋をしている姿を丁寧に描いている。
しかし主人公は悪気はないし、自覚もないんだけど、多くの人から恨まれてしまう。
工場勤務を辞めて、都会から田舎に引っ越して転売屋一本で頑張る。
しかし主人公を恨む連中から拉致されて殺されそうになる。
しかし助っ人が現れて、助っ人と一緒になって拉致した連中と銃撃戦をして勝つ。
敵は全員撃ち殺す。
この映画がリアリティはあんまりないし、ツッコミどころが満載だと思う。
特に後半の銃撃戦。
でも、とても魅力的な映画だと思う。
前半は「転売屋という職業の善悪は?」・・・という倫理的な問題を観客に突きつけている社会派映画と見せかけて、後半は単純なアクション映画だったりする。
佐野(奥平大兼)がこの映画では主人公を助けるスーパーマン的な役割だけど、「なぜ主人公を助けるのか?」はよくわからない。
佐野は特殊な組織で暗殺のベテランだった過去がある設定らしい。
しかし詳しくは説明されない、匂わせるだけ。
佐野が「主人公の引っ越し先の地元の若者」というのは嘘だったのか?
それなら、「佐野の地元の後輩が主人公の家の窓を割った犯人だった」シーンは何なんだったのか?
銃撃戦の後半は、前半に描かれた設定はあんまり関係ない感じ。
ただ主人公を恨んでいる人達ぐらいの感じ。
どこから拉致犯人達は銃を調達したのか、銃の使い方はどこで学んだのか?
主人公も最初だけは銃を撃つのを怖がるけれど、すぐに銃の達人になる。
『Seventh Code』の前田敦子の役のように暗殺のプロだったというオチではない。
『予兆 散歩する侵略者』の夏帆演じる役の方が銃に関してもリアリティはある。
大きなツッコミ所としは主人公の彼女(古川琴音)は、主人公を救出するために来たはずなのに、落ちている銃を拾い、主人公を銃で脅してクレジットカードを要求する。
そして銃の使い方を知らなかったので、逆に殺されてしまう。
間抜けな峰不二子な感じ。
主人公の彼女なら銃で脅す必要もないし、暗証番号を知らなければ意味がない。
最後のシーンでは主人公が佐野と一緒に車に乗りながら会話をする。
現実の世界というよりも地獄巡りをしているような雰囲気。
『叫び』や『クリーピー 偽りの隣人』にもそんな車のシーンがあった。
この映画の古川琴音は『カリスマ』の洞口依子な雰囲気がある。
追記
黒沢清作品で若者を主人公にした映画はいくつかある。
しかし『 Cloud』と比べるとわかりにくい。
『アカルイミライ』
『大いなる幻影』
『回路』
『散歩する侵略者』
『ニンゲン合格』
『リアル 完全なる首長竜の日』
などなど