見出し画像

[読書録]嫌われる勇気(岸見一郎、古賀史健 著)

 ”人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである”

 本書は、世界的な大ベストセラーになったので、読んだことがある人も多い本だと思います。noteでも多くの人が記事を書かれています。
 アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)について、青年と鉄人の対話形式で話が進んでいきます。
 どうすれば人は幸せに生きることができるかという哲学的な問いに、鉄人がシンプルかつ具体的な答えを提示してくれます。

 対人関係の悩みがある人はもちろん、他人の言動にもやっとすることがある人、自分の考え方をアップデートしたい人におすすめです。

 本書で扱われている事例をいくつか紹介していきます。

・トラウマを否定せよ

 青年は、引きこもりの友人の話を鉄人にします。その友人は外に出たくても出られない状態であるといいます。青年は過去にあった出来事がトラウマでそうなってしまったのだといいます。
 ただ、鉄人はそれを否定します。過去にあった出来事が原因なら、同じような出来事を経験した人がみな引きこもりになってしまいますが、実際はそうなっていないといいます。
 さらに、外にでないという目的のために、過去の出来事を利用しているとも言っています。 
 人は物事には理由(原因)があると考えがちです、ただ、それは後から過去の出来事で自分の目的にかなうものを選んでいるということになります。
 要するに、後から物事に意味づけするのは自分であるということだといいます。

 結構、衝撃的な話だと思いました。自分も行動した方がいいとわかっていても、何等かの理由をつけて、言い訳をして、自分自身を納得させているところがあると思います。勉強や運動などしない理由、食事をする理由、モノを買う理由。自分がした方がいいとわかっていることを自制してしまうことに過去との出来事を利用しているとしたら、このあと、未来にいいことがあると信じで、自分自身で意思決定する前向きな行動の方がいいのではと思いました。 

・承認欲求の否定=他人のために生きない、

 青年は、親の期待に応え、今の職業に就いたという話をします。親に認めてほしかったそうです。
 それに対して鉄人は、他人から承認される必要はないといいます。また、承認欲求には危うさがあるといいます。褒められることを目的にすると、褒められないとわかると不適切な行動もとるようになるということです。
 また、他人の期待にばかり応えようとすることは、他人の人生を生きているのだとも言います。

 これも結構、衝撃的な考えだと思いました。子供のころ、親の手伝いをして褒められたいと思ったことある人も多いと思います。ただ、ありがとうの一言だけだったり、自分が思ったような反応がなかったとき、承認欲求が満たされず、やる気を失った経験した人も多いと思います。極端な例かもしれませんが、テストもいい点を取って褒められることを目的にすると、点数を取るたえにカンニングしてしまうかもしれません。
 アドラー心理学は個人心理学ともいわれる通り、自分に焦点を当てています。普段生活していると、他人に影響されて行動しているなと思うことあります。ただ、他人ではなく、自分がどうしたいかを考え、自分で判断することで、自己を承認することで、生きるのが楽になると思います。
 noteでも何度か書いていますが、昇進試験を受けることを断っています。上司からの期待や、世間体を抜きにして、自分はどうしたいかを考えて判断しており、自分が納得していることに十分満足しています。
 他人の人生を生きないを実践してみると、生きやすくなると思います。

・課題の分離=他人の課題に踏み込まない 

 承認欲求を否定し、他人の人生を生きないという流れから、課題の分離につながっていきます。
 ここでは、勉強しない子供に親はどう対応するかという話になります。青年は無理矢理でも勉強させるといいますが、鉄人は強制させられた子供は勉強を好きにはならないといいます。勉強するという課題は誰の課題か?それは、子供の課題です。課題というのは、その結末を最終的に引き受けるのはだれかということで考えます。勉強しなかったことで最終的に影響を受けるのは子供ということです。
 では、親はどうすればいいのか、鉄人は、子供が勉強したいと思ったときに援助をする用意があることを伝えておくことだといいます。 

 子供のころ親から勉強しなさいと言われた記憶はありませんが、たぶん言われていたら逆にやらなかったと思います。受験の時に参考書が欲しいといえば買ってくれたし、勉強に関することでの支援は十分だったのだと、本書を読みながら思いました。
 また、大人になって誰に言われなくても、自分のためになると思ったら勉強して資格を取ったりもしているので、他人に強制されて勉強をしたり、しているふりをするようでは、誰も得をしないそんな風にも思いました。

 一方で、まだ理解できていない部分もあります。サラリーマンとして働いていると、これは誰の課題なのかわからなくなることがあります。部署が分かれているので、役割(課題)の分離ができているようですが、相互に関係しあっており、自分の仕事が他部署へ影響するとき、境界線があいまいでそこにもやっとしたりします。また、その仕事がうまくいかなかったときの最終的に影響を受けるのは会社?それとも、会社が倒産したら自分が最終的に影響を受ける?なんてことを考えるとわからなくなってきます。
 同期に「自分1人が働かなくて会社はつぶれない」「解雇もされない」といって、あまり仕事をしない人がいます。この考えだと彼の課題はどこにあるのでしょうか?

最後に

 「禅」「ミニマリスト」「片づけ」の本について記事にしてきて、今回はアドラー心理学でした、実際は、本書の方を先に読んでいて、そこから上記の本につながっています。
 本書の内容は自分の考えを否定されているような衝撃がありました。いろいろなビジネス本を読んでも、言っていることが似ていたり、言いたいことが先にわかってしまう場合が多いのですが、本書はそう言ったことがなく、自分の考えが他人中心になっていたと思わされました。
 本書を読んで、承認欲求に囚われないようにしたり、課題の分離を心掛けて、自分はどうしたいかを考えるようになりました。今、ここを生きるといって自分を見つめなおしている「禅」の考えや、自分に必要なものだけ持って生活する「ミニマリスト」も、モノに支配されないように取捨選択を実行する「片づけ」の本も、本質は似ているように思いました。

 「空気を読む」とか「同調圧力」とか、周りに合わせる的な言葉は、好きではなかった学校生活を思い出されますが、大人になった今、他人の人生ではなく自分の人生を生きられるように、考え方をアップデートするのもいいかもしれません。


いいなと思ったら応援しよう!