懐かしいは快と不快の中間である
蛍光灯が照らす帰り道、隣の家からはおでんの匂いがする。おでんの匂いは冷たい空気と相性が良い。そう思った。
人間の感情はほとんどを快か不快かに大別できる。何故ならば人間の感情の発達が不快と快を出発点にしているからである。
現在の発達心理学では、幼児期に不快から快が分かれ、それを元に不安と安心、かなしいと楽しいといった細分化が行われるとされている。
ここで面白いのは、人間が感情を定義付ける時、不快の感情が先である点だ。
人間は不快な状況をまず認識して、心地よい状況を後から追認する、人よりたくさん悲しいことや苦しいこと、不快なことを感じてきた人はより豊かな情緒を身につけることができると言える。
懐かしさについては快とも不快とも、どちらとも表現しにくい感情である。どのように分類すれば良いのか疑問に思った。
気になったので、心理学の本で調べてみた。
どうやら、懐かしさとは快と不快の中間であり、ビタースイートと表現されるらしい。
苦くて甘い記憶、それが懐かしさの定義である。
感情は全て人間の生命維持と紐づけることができる。懐かしさもその紐付けが可能で、この懐かしさという感情が人間の情緒に果たす役割はネガティブな状態にある感情を、過去のポジティブな状況を思い出させて、ニュートラルに戻す働きである。
言い換えると、懐かしい記憶をたくさん持っている人は精神的な安定性が高いと言える。教え子たちに、懐かしいと感じられるような場所や経験を沢山積ませてあげたい。
さて、早く帰ってご飯を食べよう。今日はおでんが良いな。