クレイジー上司はド天然
私の上司はクレイジーである。
50代で2人の子どもの父親でもある彼は一家の大黒柱として日々仕事に勤しんでいる。細かいことはちょっと苦手で未払いの取り立てと営業が得意で中2みたいな絡みをする憎めない奴である。
そしてクレイジーであると同時にマイペースで天然でもある。
磯丸水産に部署のみんなで飲みに行くことになったとき、
一番最初に到着し、他の人が誰もまだ来ていないにも関わらず待たずにビールを注文して一人で飲み始めていた。
時間ちょうどに私が行ったときにはすでに2杯目だった。
異常なハイペースで飲み続けた挙げ句、酔っ払って椅子から落ちて尻もちをついてしまった。
翌日「なんでかわかんないんだけど腰が痛いんだよね」と言うので椅子から落ちてましたよと言ったら全く覚えていなかった。
さらに帰り際に隣の席にいた外国人観光客にだる絡みして外国人を困らせていた。これも覚えていなかった。
お会計は財布に入っているだけの現金を出してくれ、太っ腹でありがたいなと思っていたら家に帰って奥さんにしっかり怒られたらしい。
また別の日には顔面に大怪我をして出勤してきた。
前日の夜、飲みに行った帰りに駅の階段から落ちたそうなのだが、
落ちたときの記憶がなく家に帰って奥さんのリアクションで怪我をしていることに気づいた。家で鏡を見たら血まみれだったらしい。
これも飲み過ぎで奥さんに怒られた。
そんなクレイジー上司は釣りが趣味。
インスタのフォロワーが500人ほどいて、釣り場に行くと見知らぬ人にインスタ見てますと声をかけられるほどその界隈ではちょっとした有名人らしい。
釣りに行った日は朝6時頃に海と釣れた魚の写真を部署のグループラインに連投してくる。
18時頃には刺し身と芋焼酎の写った写真も送ってくる。
10件とか写真とコメントを連投してくるラインはまるでギャルである。
私を含んだ女性陣は面白がって返信するが
男性スタッフは全スルーである。
それを気にせず毎回連投してくるからもう強靭なメンタルすぎて笑えてくる。
以前、クレイジー上司が社長や役員たちと新規部署立ち上げの決起会と称して少し高級なレストランに食事に行った。
我がクレイジー上司は新規部署の立ち上げにも関わり、2つの部署を掛け持ちすることになった。
その新規部署に新卒の女の子が入社してきたのだが、社長たちとの食事会は新卒の子が入社する前から計画されていたため、食事会メンバーには新卒ちゃんは名を連ねていなかった。
私もおいしいご飯食べたいです〜!
その日は予定ないので私も食事会行きたかったです〜!
と言いながら残念そうにクレイジー上司を見送った。
クレイジー上司的にはおっさんたちとご飯なんか食べたくないだろうと思っていたが、
思いの外コミュニケーションを取りたいタイプだった彼女を呼んでもいいか食事の場で社長に聞いたところOKが出たと電話がかかってきて、急遽新卒ちゃんが合流することになった。
お店の場所を知らなかったので電話で上司からお店の名前を聞き、
電話をつないだままネットで店名を検索すると店の外観の写真が出てきたので
「あ、赤い屋根のところですね」
と確認すると電話の向こうから
「えっ!?なんでわかるの!?」
とめちゃくちゃ驚かれた。
思わず
「私、透視できるんです」
とボケてみたら
「えええ!?」
と半分信じてしまったので
「うそです、ネットで調べました笑」
とすぐ種明かしをしたら
「なーんだ、あーびっくりしたーネットかー。じゃあ新卒ちゃんに場所伝えてね。はいはーい」
と言って足早に電話を切られた。
この早く電話を切りたい感じ、少し父親に似ている。キャラは全然違うけど。
きっと明日も天然でマイペースな我がクレイジー上司は絶好調。