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写植後を考えた訳文の作り方

私の仕事で今メインになっているのがウェブトゥーンの完成品のチェック(QA)です。
QAとして2社と契約しており、日々沢山の作品に触れる中で感じている「些細なことだけどここに気をつけるとクオリティーが上がる」部分について触れていきたいと思います。

「!?」「!!」は半角で入力する


!?または!!と入力したとき、候補にそっくりな結果がふたつ出てきます。
これは実際に入力してもらえると分かるのですが、ひとつは半角でもうひとつは全角です。
翻訳会社によってはガイドラインで指定されているため、半角での入力は当たり前なのでは?と思う方もいるかもしれませんが、ここの指示が統一されておらずぱっと見では見分けがつかないことから全角が使用されている場面に度々遭遇します。
「!?」「!!」を半角に統一する理由は単純で、全角だと対応していないフォントが沢山あるからです。

Adobeフォントのスクショ

上のイメージはAdobeフォントのサンプルテキストに全角で「⁉」を入力したものですが、一部のフォントでエラーが出ているのがわかります。
このように、全角に対応しているフォントは全体の半分ほどで、多くのフォントでエラーが出てしまうのです。

「…」は必ず三点リーダーを使用する

これも多くの会社のガイドラインで記載されているので、ほとんどの方が意識している内容だと思いますがそれでもたまに、三点リーダーではなくピリオドを三つ繋げて使用されている場面に遭遇します。
特に横書きで訳文を入力している場合、ぱっと見では区別がつきにくいのでなぜ使用を控える必要があるのか疑問に思うかもしれません。
ですが写植の行程に入るとその理由は一目瞭然です。

ピリオドでは字間が詰まる上、位置も左にずれてしまうのでこの場合も先ほど同様、写植の際にすべて打ち直して修正する必要が出てきます。

訳文の長さ

訳文の長さは、セリフ一つにつき縦8文字以内/横5行以内が理想と言われています。
5行以内という部分についてはあくまで理想なので、必ずこの通りに収める必要はありませんが、削れるところは削るのがいいと思います。
縦に関しては理想が8文字、最大でも10文字以内という決まりがどこの翻訳会社でもあるはずで、吹き出しを作ったときに卵型になるような訳文が理想です。

左が理想の形。右は改行のしすぎで吹き出しがつぶれてしまっている。

背景の余白を考えた訳文の作り方

漫画翻訳において、背景の余白を考えた訳文作りはとても重要です。
ウェブトゥーンはコマの位置を前後に動かすことができますが、それも全てのシーンに当てはまるわけではありません。
さっきは吹き出しが横長にならないよう訳文を作るのが理想と書きましたが、縦に長すぎるのも注意が必要なのです。

縦10文字/横5行以内に収まった文だが縦に長すぎて圧迫感がある。
やはり吹き出しは卵型が理想的。

短い訳文の改行

1~2行の短い訳文の場合、改行するべきか悩むことはありませんか?
そこで、1行のセリフを改行あり/なしで比べてみました。

5文字までの訳文の場合、改行しないほうが吹き出しの形は綺麗です。
6文字が分岐点で、この場合は改行してもしなくても良さそうに見えますよね。
個人的には3文字/2行になるなら改行なしのほうがいい気がしますし、7文字以上になると改行を入れたほうが吹き出しの形が綺麗です。

これはあくまで理想なので、人名などを無理に改行する必要はありません。
状況に合わせて臨機応変に対応してみてください。

オノマトペの文字数

オノマトペの文字数は、できるだけ原文に近いものが好ましいです。
というのもオノマトペのフォントサイズは基本的に原文と同じ大きさに設定するため、訳文が長いと本来のスペースに収まらずコマからはみ出したり、隣の人物に被ったりして無理やりサイズや位置を変える必要が出てきます。
サイズを変えてしまうと、せっかく迫力を出すために長い訳文を考えたのにむしろ迫力がなくなってしまったり、位置を変えることで違和感が出たりといった不具合が出てくるのです。

オノマトペに「!」を入れると間延びする

韓国語のオノマトペには「!」が頻繁に登場します。
なので訳文にも「!」が入っている場合が多々あるのですが、個人的には「!」は省いてしまったほうが絵との馴染みがいい気がしています。

上の絵は一例ですが、どれが一番しっくりくると感じますか?
ウェブトゥーンのオノマトペは基本的に縦書きで写植するよう、ガイドで決められています。
縦書きの場合「!」を入れることにより、内容と絵の間にスペースが生まれ、どうしてもオノマトペが浮いて見えてしまうのです。
またさっき説明した内容と同様、訳文も長くなるため本来入れたい場所に入らないという問題も出てきます。
あまり短い訳文にすると伝わらないのでは?と感じるかもしれませんが、3番目のような訳でも絵がちゃんと状況を説明してくれるので個人的にはそこはあまり問題ないように思います。

ですがもちろん、絶対にNGというわけではなくオノマトペの位置や余白の大きさによっては違和感が出ないこともあります。
ただ、その辺りの判断が難しい場合は「!」を「ッ」に変えたり、横書きにするよう指示を出するのも一つの方法です。

縦書きだとスペースをとってしまう「!」も横書きだとスペースを抑えられ違和感を軽減できる。

「だんだん小さく」は指示を出さないと伝わらない

「サアァァァ」や「ゴオォォ」といった訳文を考えたとき、頭の中で思い描いているのは左と右のどちらですか?

おそらくなのですが、多くの人が右のように「だんだん小さく」なるようイメージして「ァァァ」や「ォォォ」を使用していると思います。
ですが残念ながら、写植者の多くは日本語がわからないため拗音を一律で小さく設定してしまいがちです。
というのも普段は小さくしないとFBで指摘されてしまうため仕方のないことだともいえますが、やっぱりイレギュラーというのも存在するため、「だんだん小さく」の意味で拗音を使用するときはその意図を写植者にも共有してあげるといいかもしれません。

まとめ

改行や文字数などベテランの翻訳者の方々はその辺りの扱い方が本当に上手だなと見ていて思います。
今回紹介した事例は、どれもすぐに実践できるものなのでいいなと思う項目があればぜひ取り入れてみてください☺

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