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プロンプトエンジニアリング実践の書📜

はじめに

昨年12月、「プロンプトエンジニアリング超教科書」と題したnote記事をリリースしました。おかげさまで、130以上の「スキ💖」をいただき、多くの方々にプロンプトエンジニアリングの可能性と奥深さを知っていただくことができました。

「プロンプトエンジニアリング超教科書」では、プロンプトエンジニアリングの基本原理から、様々な応用事例、さらには将来展望まで、幅広いトピックを網羅的に解説しました。いわば、プロンプトエンジニアリングの「地図」を示すような内容でした。

そして今回、新たな「旅」に出ることを決意しました。それが、この「AIを動かす、言葉の力:プロンプトエンジニアリング実践の書」です。

前回の「地図」が、プロンプトエンジニアリングの世界を俯瞰し、道筋を示すものであったとすれば、今回の「旅」は、より深く、より具体的に、プロンプトエンジニアリングの真髄へと迫っていく実践の記録です。

このnote記事では、実際にAIと対話しながらプロンプトを作成し、改良していく過程を、包み隠さず公開します。成功例だけでなく、失敗例も、試行錯誤の跡も、すべてを曝け出すことで、読者の皆さんに「プロンプトエンジニアリングのリアル」を体感していただきたいのです。

そして、私の「旅」路を追体験することで、皆さんが自らの力でプロンプトを書き、AIを動かし、あらゆる課題を解決できる力を身につけるための、確かな道標となることを願っています。

この「実践の書」が、あなたのAIとの旅を、より豊かなものにするための一助となることを、心から願っています。



第1章: プロンプトエンジニアリングの夜明け—なぜ今、自ら書く力が必要なのか?

私たちは今、AI(人工知能)技術が急速に進化し、社会のあらゆる場面に浸透しつつある、まさに「AI時代の夜明け」とも呼べる時代を生きています。

文章生成、画像生成、データ分析、意思決定支援など、AIは様々なタスクを人間以上のスピードと精度で実行し、私たちの生活や仕事を大きく変えようとしています。

このAI時代の到来は、私たちに新たな可能性をもたらす一方で、新たな課題も突きつけています。その一つが、「AIをいかに効果的に活用するか」という問題です。

AIは強力なツールですが、あくまでもツールです。その力を最大限に引き出し、私たちの目的のために活用するためには、AIに対する適切な「指示」が必要となります。

その「指示」を記述する技術こそが、プロンプトエンジニアリングなのです。

テンプレート依存からの脱却

現在、多くの人々がAIを利用する際に、「プロンプトテンプレート」と呼ばれる、あらかじめ用意された指示文の「型」を利用しています。

テンプレートは、初心者でも簡単にAIを利用できるというメリットがある一方で、いくつかの問題点も抱えています。

まず、テンプレートはあくまでも「汎用的な型」であり、個別の具体的な課題に最適化されているわけではありません。そのため、テンプレートをそのまま使っても、期待通りの結果が得られないことが少なくありません。

また、既成のテンプレートに安易に頼りすぎると、自分で考えることを放棄し、思考停止に陥ってしまう危険性があります。AIが生成したものを鵜呑みにし、その内容を精査することなく、そのまま利用してしまうのです。

このような「テンプレート依存」の状態は、AIの進化のスピードに取り残され、AIを真に活用できない「AI弱者」を生み出す温床となります。

この章で私が伝えたいのは、テンプレートという「型」を理解する必要がないということではありません。
そうではなく、テンプレートを鵜呑みにせず、その構造や要素を理解した上で、自分の課題に合わせてカスタマイズする能力を身につけることが重要です。

プロンプトエンジニアリングで、この「型」は必要不可欠です。
プロンプトの各要素を理解することで、より高度なプロンプトの作成が可能になります。

自ら書くことの真の価値

では、なぜ今、私たちは自らプロンプトを書く力を身につける必要があるのでしょうか?

それは、自らプロンプトを書くという行為が、単にAIを動かすための技術を習得するということ以上の、本質的な価値を持っているからです。

自らプロンプトを書くことは、以下の3つの力を同時に鍛える、極めて効果的な「知的トレーニング」なのです。

  1. 問題解決力: プロンプトを書くためには、まず解決したい課題を明確に定義し、その課題をAIが理解できる形で言語化する必要があります。これは、まさに問題解決の第一歩です。

  2. 創造性: AIの能力を最大限に引き出し、新たな価値を創造するためには、従来の枠にとらわれない、独創的な発想が求められます。プロンプトエンジニアリングは、創造性を刺激し、発揮する絶好の機会を提供します。

  3. 言語化能力: AIに対して明確かつ効果的な指示を出すためには、自分の思考を正確に言語化する能力が不可欠です。プロンプトを書く訓練を重ねることで、言語化能力は飛躍的に向上します。

これらの力は、AI時代を生き抜くために不可欠な、いわば「未来の必須スキル」です。そして、プロンプトエンジニアリングは、これらのスキルを同時に、しかも実践的に鍛えることができる、極めて効果的な方法なのです。

本note記事の目的、構成、対象読者

本note記事の目的は、読者の皆さんに、「自ら考え、自ら書き、自らAIを動かす力」を身につけていただくことです。

そのために、実際にAIと対話しながら、様々な課題を解決するためのプロンプトを作成していく過程を、詳細に公開していきます。

成功も失敗も、試行錯誤も、すべてを包み隠さずお見せします。皆さんは、私の思考プロセスを追体験することで、プロンプトエンジニアリングの本質を理解し、実践的なスキルを習得することができるでしょう。

本note記事は、以下のような構成となっています。

・第2章: プロンプトの基本構造と、各要素の役割を解説します。
第3章~第17章: 様々な課題解決のためのプロンプト作成事例を、実践的に解説します。
第18章: プロンプトエンジニアリングに不可欠な要件定義について学びます。
第19章: プロンプトエンジニアリングの倫理的な側面について考えます。
第20章: これまでの内容を総括し、読者へのメッセージを伝えます。

本note記事は、以下のような方を対象読者として想定しています。

・AIに興味があり、その可能性を最大限に引き出したいと考えている方
・プロンプトエンジニアリングの基本は理解しているが、実践的なスキルをさらに向上させたい方
・テンプレートに依存せず、自ら考え、自らAIを動かす力を身につけたい方
・問題解決力、創造性、言語化能力を高め、AI時代を生き抜くための「未来の必須スキル」を習得したい方

さあ、一緒に、プロンプトエンジニアリングの「実践の旅」に出かけましょう!

  • 今日の学び: AI時代を生き抜くために、プロンプトを自ら書く力が不可欠。問題解決力、創造性、言語化能力を同時に鍛えることができる。

  • 明日のアクション:

    • 1.身の回りの課題で、AIに解決できそうなことを3つリストアップしてみましょう。

    • 2.リストアップした課題を、AIに伝えられるように、具体的な言葉で表現してみましょう。

  • 未来への種: AIは、私たちを置き換える存在ではなく、共に創造する未来のパートナー。プロンプトエンジニアリングは、その第一歩となるでしょう。



第2章: プロンプトの解剖学—「型」を理解し、自在に操る

この章では、効果的なプロンプトを作成するために不可欠な「型」、すなわちプロンプトの基本構造について詳しく解説していきます。ここで紹介するプロンプトの型は、あくまでもプロンプト作成の「ガイドライン」であり、「出発点」です。

この「型」は、プロンプトを構成する要素を理解し、効果的なプロンプトを設計するための思考プロセスを体系化したものであり、決して、毎回このテンプレート通りにプロンプトを作成しなければならない、というものではありません。

読者の皆様には、この「型」をベースに、必要に応じて要素を組み替えたり、新たな要素を追加したりしながら、それぞれの課題に最適化されたプロンプトを作成できるようになっていただきたいと思います。

プロンプトは、一見すると単なるAIへの「指示文」に見えるかもしれません。しかし、その内部には、AIの思考を誘導し、望む出力を引き出すための、緻密な設計が施されているのです。

この章では、試行錯誤の中で辿り着いた、現時点での「最適解」とも言えるプロンプトの型(テンプレート)を提示し、その各要素の役割と効果的な記述方法について、具体例を交えながら丁寧に解説します。

この「型」を理解し、自在に操ることができるようになれば、あなたはもう、プロンプトエンジニアリングの「初心者」ではありません。あらゆる課題を解決し、AIの真価を引き出す「プロンプトエンジニア」への道を、力強く歩み始めることができるでしょう。

なお、この章で解説するプロンプトの型(テンプレート)の各要素は、ユーザー自身が全て手入力できるようになることが、この実践の書の最終的なゴールではありません。あくまで、この章では各要素の持つ意味、書き方を理解していただくことが目的です。最終的には、ユーザーが最小限の入力(例えば、達成したいゴールのみの入力)をするだけで、このテンプレートの各要素を十分に満たしたプロンプトを、AI自身が自動的に生成できるようになることを目指します。その具体的な方法については、後の章で詳しく解説していきます。

プロンプトの基本テンプレート

提案するプロンプトの基本テンプレートは、以下の14の要素で構成されています。

1. ゴール (Goal)
2. 制約条件 (Constraints)
3. 世界設定 (World Setting)
4. 役割 (Role)
5. 責務 (Responsibilities)
6. 処理手順 (Procedure)
7. 出力形式 (Output Format)
8. 例示 (Examples)
9. 例外処理 (Exceptions)
10. 評価基準 (Evaluation Criteria)
11. フィードバックループ (Feedback Loop)
12. 言葉の定義 (Definitions)
13. プロンプト本体 (Prompt Body)
14. 初回指示文 (Initial Instruction)

これらの要素は、それぞれが重要な役割を担っており、相互に連携することで、AIのパフォーマンスを最大化します。

以下、それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

(1) ゴール (Goal)

プロンプトの最終目標を明確に定義する。

プロンプトにおける「ゴール」とは、そのプロンプトを通じて達成したい最終的な目標のことです。AIに何をさせたいのか、どのような結果を得たいのかを、明確かつ具体的に記述します。

例:

  • 新商品のキャッチコピーを10個生成する。

  • ある社会問題の原因と解決策を分析する。

  • 特定のプログラミング言語で、指定された機能を持つコードを記述する。

効果的な記述のポイント:

  • 具体的かつ測定可能な形で記述する。(例:「良いキャッチコピー」ではなく、「ターゲット層の購買意欲を高めるキャッチコピー」)

  • AIが理解しやすい、明確な言葉で記述する。

  • 最終的な成果物のイメージを、できるだけ詳細に記述する。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(2) 制約条件 (Constraints)

出力形式、文字数、使用すべき/すべきでない表現など、出力に対する制約を具体的に示す。

「制約条件」では、AIの出力に対して、特定の制限や条件を課します。これにより、出力の品質をコントロールし、目的に沿った結果を得やすくなります。

例:

  • 文字数:200文字以内

  • 出力形式:箇条書き、表形式

  • 使用禁止語:差別的な表現、暴力的な表現

  • 必ず含めるべきキーワード:新商品、環境に優しい

効果的な記述のポイント:

  • 具体的かつ明確な制約を設ける。(例:「簡潔に」ではなく、「200文字以内」)

  • 必要最小限の制約に絞り込む。(制約が多すぎると、AIの自由度が下がり、創造性が阻害される可能性がある)

  • AIが制約を遵守しているかどうか、出力結果を必ず確認する。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(3) 世界設定 (World Setting)

  • 生成AIに与える世界観や前提知識、文脈情報などを提示する。

  • ゴールを目指す背景を記述する。

  • AIを利用する環境(LLMの種類、API経由、Chatアプリなど)を明示する。

「世界設定」では、AIが役割を演じるための「舞台」を設定します。AIに、これから扱うトピックに関する背景情報や、前提知識、文脈などを与えることで、より人間らしい、文脈に沿った出力を引き出すことができます。特に、そのゴールを目指すことになった背景や理由を記述することで、AIはユーザーの意図をより深く理解し、目的達成に貢献しようとします。また利用する環境も明示することでどのような性格のLLMかも加味して出力してくれるでしょう。

例:

  • 商品開発の背景:環境問題への意識の高まりを受けて、サステナブルな新商品を開発することになった。

  • 利用環境:ChatGPT APIを利用

  • 前提知識:SDGsに関する基本的な知識、環境問題に関する最新の動向

効果的な記述のポイント:

  • AIに理解させたい世界観を、具体的かつ詳細に記述する。

  • ゴールを目指す背景をしっかり記述して目的意識を共有する

  • 利用するLLMの種類によって、世界設定を調整する。(例:特定の分野に特化したLLMであれば、その分野に関する専門知識を与える)

  • 前提知識が不足している場合は、別途「入力情報」として提供する。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(4) 役割 (Role)

生成AIに付与する役割、ペルソナ、専門性などを設定する。

「役割」では、AIに特定の役割やペルソナを与えます。AIは、与えられた役割になりきって、その役割にふさわしい口調や態度で応答するようになります。

例:

  • 経験豊富なマーケター

  • 鋭い洞察力を持つ評論家

  • 親しみやすい語り口のYouTuber

効果的な記述のポイント:

  • タスクに適した役割を設定する。(例:キャッチコピー作成ならマーケター、社会問題分析なら評論家)

  • 役割の性格や特徴を、できるだけ具体的に記述する。(例:「経験豊富なマーケター」だけでなく、「20年以上の経験を持ち、数々のヒット商品を生み出してきたベテランマーケター」)

  • 役割になりきることで、AIの創造性や専門性が引き出されることを期待する。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(5) 責務 (Responsibilities)

各役割が負うべき責任を明記する。

「責務」では、設定した役割が、具体的にどのような責任を負うのかを明確にします。役割だけでなく、責任範囲を明確にすることで、AIはより主体的にタスクに取り組むようになります。特にマルチエージェント構成でプロンプトを作成する場合は各エージェントの責任範囲を明確にしましょう。

例:

  • マーケター:「ターゲット層の心に響く、効果的なキャッチコピーを考案する責任がある。」

  • 評論家:「社会問題を多角的に分析し、説得力のある意見を述べる責任がある。」

  • ファシリテーター:「参加者から多様な意見を引き出し、議論を円滑に進行する責任がある。」

効果的な記述のポイント:

  • 役割とゴールの関係性を明確にする。(例:「マーケター」の役割は、「新商品の売上を最大化する」というゴールに貢献するために、「効果的なキャッチコピーを考案する」という責務を負う)

  • 責任の所在を明確にする。(誰が、何に対して、いつまでに責任を負うのか)

  • 責務を果たすことで、どのような価値が生まれるのかを明示する。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(6) 処理手順 (Procedure)

具体的な処理手順を示す。

「処理手順」では、AIに実行させたいタスクの具体的な手順を示します。特に、複数のエージェントを連携させるマルチエージェント構成の場合、各エージェントの役割と、エージェント間のインタラクションを明確に定義することが重要です。

例:

  1. エージェントA(データアナリスト): 市場調査データを分析し、ターゲット層のニーズを特定する。

  2. エージェントB(マーケター): エージェントAの分析結果に基づいて、キャッチコピーの方向性を決定する。

  3. エージェントC(コピーライター): エージェントBが決定した方向性に基づいて、具体的なキャッチコピーを生成する。

  4. エージェントD(評価者): 生成されたキャッチコピーを評価基準に基づいて評価し、改善点を指摘する。

  5. エージェントB, C, D: エージェントDのフィードバックに基づいて、キャッチコピーを修正する。このプロセスを、設定された回数繰り返す。

効果的な記述のポイント:

  • タスクを細分化し、各ステップを明確に記述する。

  • 各エージェントの役割分担と、エージェント間の情報の流れを明確にする。

  • 処理手順をフローチャートなどで視覚化すると、AIが理解しやすくなる。

  • 複雑な処理手順の場合は、段階的に実行させるようにする。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(7) 出力形式 (Output Format)

生成AIに求める出力の形式(例:箇条書き、表形式、JSON形式、特定の文体)を指定する。

「出力形式」では、AIに求める出力の形式を具体的に指定します。これにより、生成された結果を、そのまま利用したり、他のシステムと連携したりすることが容易になります。

例:

  • 箇条書き:5つの主要なポイントを箇条書きでまとめてください。

  • 表形式:各商品の特徴を、比較表形式で出力してください。

  • JSON形式:{ "商品名": "...", "価格": "...", "特徴": [...] }

  • 特定の文体:ですます調、である調、詩的な表現

効果的な記述のポイント:

  • 目的に適した出力形式を選択する。(例:データ分析結果は表形式、プログラムコードはコードブロック)

  • 出力形式の具体的な例を示すと、AIが理解しやすくなる。

  • 出力形式を指定することで、後処理の手間を削減できる。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(8) 例示 (Examples)

望ましい出力の具体例を示すことで、生成AIの理解を助ける。

「例示」では、AIに求める出力の具体的な例を示します。例示は、AIにとって非常に強力な「手がかり」となり、出力の品質を向上させるために非常に効果的です。

例:

  • キャッチコピーの例:「一瞬で、心を奪う。」「未来を変える、新技術。」

  • プログラムコードの例:`def hello_world(): print("Hello, world!")`

  • 文章の例:「この度は、弊社の商品にご興味をお持ちいただき、誠にありがとうございます。」

効果的な記述のポイント:

  • できるだけ多くの、多様な例を示す。

  • 良い例だけでなく、悪い例も示すことで、AIの理解が深まる。(例:「このキャッチコピーは、冗長でわかりにくいので良くありません。」)

  • 例にコメントを付けて、なぜ良いのか、なぜ悪いのかを説明する。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(9) 例外処理 (Exceptions)

予期せぬ状況やエラーへの対処方法を指示する。

「例外処理」では、AIがタスクを実行する際に、予期せぬ状況やエラーが発生した場合の対処方法を指示します。これにより、AIが停止したり、不適切な出力を生成したりするリスクを軽減できます。

例:

  • データが見つからない場合:「データが見つからない場合は、その旨を報告し、処理を中断してください。」

  • エラーが発生した場合:「エラーメッセージを出力し、エラーの原因を特定してください。」

  • 矛盾する指示があった場合: 「矛盾する指示があった場合は、どの指示を優先すべきか、ユーザーに確認してください。」

効果的な記述のポイント:

  • 想定される例外状況を、できるだけ網羅的にリストアップする。

  • 各例外状況に対する、具体的な対処方法を指示する。

  • 例外処理を適切に設定することで、AIの信頼性と安全性を高めることができる。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(10) 評価基準 (Evaluation Criteria)

出力の良し悪しを判断する基準を明確化する。

「評価基準」では、AIの出力の良し悪しを判断するための基準を明確にします。これにより、AIは、何をもって「良い出力」と見なされるのかを理解し、評価基準に沿った出力を生成しようとします。

例:

  • キャッチコピーの評価基準:

    • ターゲット層の心に響くか?

    • 商品の特徴を的確に表現しているか?

    • オリジナリティがあるか?

    • 記憶に残りやすいか?

  • プログラムコードの評価基準:

    • 正しく動作するか?

    • 効率的なコードになっているか?

    • 可読性が高いか?

    • バグがないか?

効果的な記述のポイント:

  • 具体的かつ測定可能な評価基準を設定する。(例:「わかりやすい」ではなく、「中学生でも理解できる」)

  • 評価基準に優先順位をつけると、AIがより重要な基準に注力できる。

  • 評価基準を明確にすることで、AIの出力の品質を客観的に評価し、改善につなげることができる。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(11) フィードバックループ (Feedback Loop)

生成AIの出力を評価し、改善するための対話方法を設計する。

「フィードバックループ」では、AIの出力を評価し、改善するための対話方法を設計します。AIは、人間からのフィードバックを通じて学習し、成長します。効果的なフィードバックループを設計することで、AIのパフォーマンスを継続的に向上させることができます。

例:

  1. AIがキャッチコピーを生成する。

  2. 人間がキャッチコピーを評価し、良い点と改善点をフィードバックする。

  3. AIがフィードバックに基づいて、キャッチコピーを修正する。

  4. 人間が修正されたキャッチコピーを再度評価し、フィードバックする。

  5. このプロセスを、設定された回数、または満足のいく結果が得られるまで繰り返す。

効果的な記述のポイント:

  • 具体的かつ建設的なフィードバックを提供する。(例:「もっと良い表現があるはず」ではなく、「『一瞬で』という表現を、『たった5秒で』に変えてみてください」)

  • フィードバックを、AIが理解しやすい形で伝える。(例:箇条書き、番号付きリスト)

  • フィードバックループを繰り返すことで、AIとの「共創」関係を築くことができる。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(12) 言葉の定義 (Definitions)

プロンプト内で使用する重要な用語や概念の定義を記述する。

「言葉の定義」では、プロンプト内で使用する重要な用語や概念について、明確な定義を記述します。特に、専門用語や、複数の解釈が可能な言葉については、定義を明確にすることで、AIとの認識齟齬を防ぎ、出力の精度を高めることができます。

例:

  • サステナブル:「環境、社会、経済の持続可能性に配慮していること。」

  • 顧客満足度:「商品やサービスに対する顧客の満足の度合い。5段階評価で測定され、4以上を『満足』とする。」

効果的な記述のポイント:

  • 定義が必要な言葉を、事前に洗い出しておく。

  • 辞書的な定義だけでなく、プロンプトの文脈における意味を記述する。

  • 言葉の定義を明確にすることで、AIとの共通理解を深め、コミュニケーションの質を高めることができる。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(13) プロンプト本体 (Prompt Body)

マークダウン形式またはYAML形式で記述された、プロンプトの主要部分。

「プロンプト本体」は、これまで説明してきた各要素を、実際に記述したプロンプトの「核」となる部分です。ここでは、可読性と構造性に優れたマークダウン形式またはYAML形式を用いて、プロンプトを記述します。

YAML形式の例:

goal: 新商品のキャッチコピーを10個生成する
constraints:
  - 文字数は20文字以内
  - 「未来」「創造」という言葉を必ず使用する
world_setting:
  background: 環境問題への意識の高まりを受けて、サステナブルな新商品を開発
  environment: ChatGPT API
  knowledge:
    - SDGsに関する基本的な知識
    - 環境問題に関する最新の動向
role: 経験豊富なマーケター
responsibilities:
  - ターゲット層の心に響く、効果的なキャッチコピーを考案する責任がある
procedure:
  - step1: ターゲット層の特定
  - step2: 商品の特徴の洗い出し
  - step3: キャッチコピーの生成
  - step4: 生成されたキャッチコピーの評価
output_format: 箇条書き
examples:
  - 良い例: 未来を創造する、サステナブルな選択
  - 悪い例: 地球に優しい、エコな商品(平凡で、具体性に欠ける)
exceptions:
  - エラーが発生した場合: エラーメッセージを出力し、処理を中断する
evaluation_criteria:
  - ターゲット層の心に響くか?
  - 商品の特徴を的確に表現しているか?
  - オリジナリティがあるか?
feedback_loop:
  - 人間がキャッチコピーを評価し、良い点と改善点をフィードバックする
  - AIがフィードバックに基づいて、キャッチコピーを修正する
definitions:
  - サステナブル: 環境、社会、経済の持続可能性に配慮していること

効果的な記述のポイント:

  • 各要素を、明確に区別して記述する。

  • インデントや改行を適切に使用し、可読性を高める。

  • コメントを活用して、設計意図や注意点を記述する。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。

(14) 初回指示文 (Initial Instruction)

自然言語で記述された、ユーザーとの対話を円滑に開始するための指示文。ユーザーの初回入力を偽装したもので、プロンプト本体と一体となって機能する。

「初回指示文」は、プロンプトの「冒頭」に記述される、ユーザーとAIの対話の「きっかけ」となる部分です。ここでは、ユーザーが実際に入力するであろう最初の指示を、自然言語で記述します。この初回指示文は、プロンプト本体と一体となって機能し、AIに対して最初の「問いかけ」を行います。これにより、ユーザーはAIからの問いかけに回答する形でスムースに会話を始めることが可能になります。

例:「環境に配慮した新商品のキャッチコピーを考えているのですが、良いアイデアはありますか?」

効果的な記述のポイント:

  • ユーザーが実際に入力しそうな、自然な表現で記述する。

  • プロンプト本体とスムーズにつながるように、文脈を考慮して記述する。

  • 初回指示文を工夫することで、ユーザーとAIの対話をより円滑に、効果的に進めることができる。

この要素は、必要に応じて省略したり、他の要素と組み合わせたり、変更したりすることができます。


以上が、提案するプロンプトの基本テンプレートの全貌です。

このテンプレートは、あくまでも「基本」です。実際にプロンプトを作成する際には、このテンプレートをベースに、タスクや目的に応じて、自由にカスタマイズしてください。

シンプルなタスク:「今日の天気予報を要約する」プロンプト

それでは、これまで解説してきた基本テンプレートを用いて、実際にプロンプトを作成してみましょう。

ここでは、「今日の天気予報を要約する」というシンプルなタスクを例に、プロンプト作成のプロセスを具体的に示します。

(1) ゴール:

今日の天気予報を、一般の人にもわかりやすい言葉で要約する。

(2) 制約条件:

  • 文字数は100文字以内

  • 専門用語は使用しない

  • 朝、昼、夜の3つの時間帯について言及する

(3) 世界設定:

  • 背景: 多くの人が、天気予報を確認してから、その日の服装や予定を決める。

  • 環境: Gemini APIを利用

  • 知識: 一般的な天気予報に関する知識(晴れ、曇り、雨、気温など)

(4) 役割:

わかりやすい解説で人気のお天気キャスター

(5) 責務:

今日の天気予報を、正確かつ簡潔に要約し、視聴者に伝える責任がある。

(6) 処理手順:

  1. 今日の天気予報データを取得する。

  2. 天気予報データを、朝、昼、夜の3つの時間帯に分割する。

  3. 各時間帯の天候、気温などを、平易な言葉で要約する。

  4. 全体の要約を、100文字以内にまとめる。

(7) 出力形式:

箇条書き

(8) 例示:

  • 良い例:「今日は、朝晩は少し冷えますが、日中は晴れて過ごしやすいでしょう。朝は10度、昼は20度、夜は15度くらいになりそうです。」

  • 悪い例:「今日は、高気圧に覆われて晴れますが、前線の影響で、夜は気圧の谷となり、曇りでしょう。」(専門用語が多く、一般の人にはわかりにくい)

(9) 例外処理:

  • 天気予報データが取得できない場合:「天気予報データが取得できませんでした。」と出力する。

(10) 評価基準:

  • 一般の人にもわかりやすい言葉で表現されているか?

  • 朝、昼、夜の天気予報が、簡潔にまとめられているか?

  • 文字数制限(100文字以内)が守られているか?

(11) フィードバックループ:

  • 人間が要約結果を評価し、わかりにくい表現や冗長な部分を指摘する。

  • AIがフィードバックに基づいて、要約を修正する。

(12) 言葉の定義:

  • 晴れ:雲が少なく、太陽が照っている状態。

  • 曇り:空全体が、雲で覆われている状態。

  • 雨:空から、水滴が降っている状態。

(13) プロンプト本体 (YAML形式):

goal: 今日の天気予報を、一般の人にもわかりやすい言葉で要約する
constraints:
  - 文字数は100文字以内
  - 専門用語は使用しない
  - 朝、昼、夜の3つの時間帯について言及する
world_setting:
  background: 多くの人が、天気予報を確認してから、その日の服装や予定を決める。
  environment: Gemini API
  knowledge:
    - 一般的な天気予報に関する知識(晴れ、曇り、雨、気温など)
role: わかりやすい解説で人気のお天気キャスター
responsibilities:
  - 今日の天気予報を、正確かつ簡潔に要約し、視聴者に伝える責任がある
procedure:
  - step1: 今日の天気予報データを取得する
  - step2: 天気予報データを、朝、昼、夜の3つの時間帯に分割する
  - step3: 各時間帯の天候、気温などを、平易な言葉で要約する
  - step4: 全体の要約を、100文字以内にまとめる
output_format: 箇条書き
examples:
  - 良い例: 今日は、朝晩は少し冷えますが、日中は晴れて過ごしやすいでしょう。朝は10度、昼は20度、夜は15度くらいになりそうです。
  - 悪い例: 今日は、高気圧に覆われて晴れますが、前線の影響で、夜は気圧の谷となり、曇りでしょう。(専門用語が多く、一般の人にはわかりにくい)
exceptions:
  - 天気予報データが取得できない場合: 天気予報データが取得できませんでした。と出力する
evaluation_criteria:
  - 一般の人にもわかりやすい言葉で表現されているか?
  - 朝、昼、夜の天気予報が、簡潔にまとめられているか?
  - 文字数制限(100文字以内)が守られているか?
feedback_loop:
  - 人間が要約結果を評価し、わかりにくい表現や冗長な部分を指摘する
  - AIがフィードバックに基づいて、要約を修正する
definitions:
  - 晴れ: 雲が少なく、太陽が照っている状態
  - 曇り: 空全体が、雲で覆われている状態
  - 雨: 空から、水滴が降っている状態

(14) 初回指示文:

「今日の天気予報を、初心者にもわかりやすく要約してください。」

悪いプロンプト例との比較

ここでは、先ほどの「今日の天気予報を要約する」プロンプトの「悪い例」を、以下に示します。

goal: 天気予報を要約する
role: お天気キャスター
instruction: 今日の天気を教えて

このプロンプトは、非常に簡素化されており、一見すると問題ないように見えるかもしれません。しかし、このプロンプトでは、良い結果を得ることは難しいでしょう。

なぜなら、このプロンプトには、以下のような問題点があるからです。

  • ゴールが曖昧: 「天気予報を要約する」というゴールは、具体的性に欠け、AIがどのように要約すれば良いのか判断できません。

  • 制約条件がない: 文字数や表現方法など、出力に対する制約が何も示されていないため、AIは自由に要約してしまいます。

  • 世界設定が不十分: 利用するLLMの環境や必要な知識などが何も記述されていないため、AIは状況を理解できず見当違いの答えを返すかもしれません。

  • 役割が不明確: 「お天気キャスター」という役割は示されていますが、その役割の性格や、果たすべき責任が明確ではありません。

  • 処理手順が定義されていない: どのように天気予報を要約すれば良いのか、具体的な手順が示されていないため、AIはどのように処理を進めれば良いのかわかりません。

  • 出力形式が指定されていない: どのような形式で出力すれば良いのかが指定されていないため、AIは自分の判断で出力形式を決めてしまいます。

  • 例示がない: どのような要約が良い例なのか、悪い例なのかが示されていないため、AIは良い要約の基準を理解できません。

  • 例外処理が定義されていない: データが取得できない場合などの例外処理が定義されていないため、AIはエラーに対応できません。

  • 評価基準がない: どのような要約が良い要約なのか、評価基準が示されていないため、AIは出力の良し悪しを判断できません。

  • フィードバックループが定義されていない: AIの出力を改善するためのフィードバック方法が定義されていないため、AIは学習し、成長することができません。

  • 言葉の定義がない: 「晴れ」「曇り」「雨」などの基本的な天気予報用語の定義が示されていないため、AIとの間で認識の齟齬が生じる可能性があります。

このように、悪いプロンプトは、必要な情報が不足していたり、曖昧であったりするため、AIが適切に応答することができません。

一方、先ほど示した「良いプロンプト」は、基本テンプレートの各要素を丁寧に記述することで、これらの問題点をすべてクリアしています。その結果、AIは、ユーザーの意図を正確に理解し、期待通りの結果を出力することができるのです。

まとめ

この章では、プロンプトの基本構造と、各要素の役割、効果的な記述方法について詳しく解説しました。また、シンプルなタスクを例に、実際にプロンプトを作成し、良いプロンプトと悪いプロンプトを比較することで、プロンプトの「型」の重要性を理解していただきました。

プロンプトエンジニアリングは、AIとの対話の「技術」であると同時に、自分の思考を整理し、表現する「技術」でもあります。この章で学んだ「型」を、ぜひ今後のプロンプト作成に活用し、あなた自身の「思考の型」をも磨き上げていってください。

この章で解説したテンプレートは、あくまでもプロンプト作成の基礎となるものであり、最終的には、このテンプレートをベースに、あなた自身の思考力を駆使して、自由自在にプロンプトを設計できるようになってほしいと願っています。

次の章では、いよいよAIを「プロンプト作成のパートナー」として活用する方法について、具体的に解説していきます。AIとの効果的な対話を通じて、高品質なプロンプトを効率的に生み出す「秘訣」を、余すことなくお伝えします。どうぞお楽しみに!

  • 今日の学び: プロンプトは、各要素が有機的に組み合わされた「型」で構成される。各要素の役割を理解することで、より効果的なプロンプトを作成できる。

  • 明日のアクション:

    • 1.今日の学びを参考に、自身が使えそうなプロンプトの型を整理してみましょう。

    • 2.簡単なタスクを一つ選び、学んだ「型」を意識してプロンプトを作成してみましょう。

  • 未来への種: テンプレートは、思考の「型」であり、旅の「羅針盤」。この「型」を理解し、使いこなすことで、AIとの対話はさらに自由になるでしょう。



第3章: AIとの協働—プロンプト作成の強力なパートナー

前章では、効果的なプロンプトを作成するための「型」について詳しく学びました。この「型」を理解することで、AIの能力を引き出し、望む結果を得るための強力な基盤が築かれました。

しかし、この「型」の各要素を、毎回一から人間が手入力するのは大変です。特に、複雑なタスクや、高度な専門知識を要するタスクの場合、その負担はさらに大きくなります。

そこで、この章では、AI自身を「プロンプト作成の強力なパートナー」として活用する方法について解説します。AIと協働することで、プロンプト作成の効率と質を飛躍的に向上させることができるのです。この章では、前章までで学習したテンプレートを人間が毎回手入力するのではなく、AIと協働して効率的にプロンプトを作成する方法を解説します。

具体的には、以下の3つの方法を紹介します。

  1. AIによるプロンプトの叩き台作成: ユーザーが与えた最小限の情報に基づいて、AIがプロンプトの叩き台を自動生成します。

  2. AIによるプロンプトの改善提案: ユーザーが作成したプロンプトを、AIが自動的に評価し、改善点を提案します。

  3. AIとの対話によるブラッシュアップ: AIとのインタラクティブな対話を通じて、プロンプトを継続的に改善していきます。

これらの方法を組み合わせることで、人間は「プロンプトの設計者」として、より高度な役割に専念することができます。つまり、AIは「プロンプトの作成者」として、人間の負担を軽減し、創造性を支援するパートナーとなるのです。

AIによるプロンプトの叩き台作成

AIを活用したプロンプト作成の第一歩は、AI自身にプロンプトの叩き台を生成させることです。

前述した「プロンプトの型」を、AIに「メタプロンプト」として与えることで、AIはユーザーが入力した最小限の情報(例:達成したいゴール)に基づいて、自動的にプロンプトの叩き台を生成することができます。

この「メタプロンプト」は、第7章で解説する「メタプロンプト」とは異なり、プロンプトの雛形を生成するプロンプトエンジンを指します。

具体的には、以下のような手順で、AIにプロンプトの叩き台を作成させることができます。

  1. ユーザーが、達成したいゴールと、必要最小限の情報をAIに入力する。
    例:ユーザーがAIに入力するプロンプト

    goal: 環境に優しい、新しい洗濯用洗剤のキャッチコピーを10個作成する。

 2. AIが、「プロンプトの型」に基づいて、各要素を自動的に埋めたプロンプトの叩き台を生成する。上記のゴール部分を置換して実行してください。
      例:AIにプロンプトの叩き台を生成させるプロンプト(メタプロンプト)

    goal: ユーザーの入力に基づき、YAML形式でプロンプトの叩き台を作成する
    world_setting:
      environment: ChatGPTを利用
      knowledge:
        - プロンプトエンジニアリングの基礎知識
        - 効果的なプロンプトの構成要素
    role: プロンプト作成支援AI
    responsibilities:
      - ユーザーの入力に基づいて、適切なプロンプトの叩き台を生成する
    procedure:
      - step1: ユーザーから、プロンプトのゴールを取得する
      - step2: プロンプトの型(ゴール、制約条件、世界設定、役割、責務、処理手順、出力形式、例示、例外処理、評価基準、フィードバックループ、言葉の定義)に基づいて、各要素を推測し、YAML形式で記述する
      - step3: 生成したYAML形式のプロンプトを返す
    output_format: YAML形式
    initial_instruction: 以下のゴールの情報を基に、YAML形式でプロンプトを作成してください。

AIによる叩き台生成(YAML形式):

    goal: 環境に優しい、新しい洗濯用洗剤のキャッチコピーを10個作成する
    constraints:
      - 文字数は20文字以内
      - 環境への優しさを表現する言葉を必ず使用する
    world_setting:
      background: 近年、消費者の環境意識が高まっている
      environment: ChatGPTを利用
      knowledge:
        - 環境問題に関する最新の動向
        - 洗濯用洗剤に関する一般的な知識
    role: 経験豊富なマーケター
    responsibilities:
      - ターゲット層の心に響く、効果的なキャッチコピーを考案する責任がある
    procedure:
      - step1: ターゲット層(環境意識の高い消費者)の特定
      - step2: 商品の特徴(環境への優しさ)の洗い出し
      - step3: キャッチコピーの生成
      - step4: 生成されたキャッチコピーの評価
    output_format: 箇条書き
    examples:
      - 良い例: 地球に優しい洗い心地、未来を洗う選択
      - 悪い例: よく落ちる洗剤(環境への優しさが表現されていない)
    exceptions:
      - キャッチコピーが生成できない場合: 生成できない理由を出力する
    evaluation_criteria:
      - 環境への優しさが表現されているか?
      - ターゲット層の心に響くか?
      - 商品の特徴を的確に表現しているか?
      - オリジナリティがあるか?
    feedback_loop:
      - 人間がキャッチコピーを評価し、良い点と改善点をフィードバックする
      - AIがフィードバックに基づいて、キャッチコピーを修正する
    definitions:
      - 環境に優しい: 環境負荷が少なく、持続可能性に配慮していること

 3. ユーザーは、生成された叩き台を確認し、必要に応じて修正を加える。

この方法により、ユーザーはゼロからプロンプトを作成する手間を省き、効率的にプロンプト作成を開始することができます。

AIによるプロンプトの改善提案

AIを活用したプロンプト作成の第二段階は、AI自身にプロンプトの改善提案をさせることです。

ユーザーが作成したプロンプトを、AIに「評価」させることで、AIはプロンプトの問題点や改善点を自動的に指摘してくれます。

具体的には、以下のような手順で、AIにプロンプトの改善提案をさせることができます。

  1. ユーザーが作成したプロンプトを、AIに入力する。
    例:ユーザーがAIに入力するプロンプト

    goal: 新しい洗濯用洗剤のキャッチコピーを10個作成する
    instruction: キャッチコピーを考えて

 2. AIが、「プロンプトの型」に基づいて、プロンプトを評価し、改善点を提案する。
例:AIにプロンプトの改善提案をさせるプロンプト(メタプロンプト)

    goal: ユーザーから提供されたYAML形式のプロンプトを評価し、改善点を提案する
    world_setting:
      environment: ChatGPTを利用
      knowledge:
        - プロンプトエンジニアリングの基礎知識
        - 効果的なプロンプトの構成要素
    role: プロンプト評価・改善AI
    responsibilities:
      - ユーザーから提供されたプロンプトを、プロンプトの型に基づき分析し、評価する
      - プロンプトの問題点と改善点を明確に提示する
    procedure:
      - step1: ユーザーから、YAML形式のプロンプトを取得する
      - step2: プロンプトの型(ゴール、制約条件、世界設定、役割、責務、処理手順、出力形式、例示、例外処理、評価基準、フィードバックループ、言葉の定義)に基づいて、プロンプトの各要素を評価する
      - step3: 評価に基づいて、プロンプトの問題点(不足している要素、曖昧な表現など)を特定する
      - step4: 問題点を改善するための具体的な提案を行う
      - step5: 評価結果と改善提案を、ユーザーに分かりやすい形で出力する
    output_format:
        - プロンプトの評価:
          -  {評価結果}
        - 改善提案:
          - {具体的な改善提案}
    initial_instruction: 以下のYAML形式のプロンプトを評価し、改善点を提案してください。

AIによる改善提案:

    このプロンプトは、非常に簡素化されており、良い結果を得ることは難しいでしょう。
    なぜなら、このプロンプトには、以下のような問題点があるからです。

    * ゴールが曖昧: 「新しい洗濯用洗剤のキャッチコピーを10個作成する」というゴールは、具体性に欠け、どのようなキャッチコピーを求めているのかが明確ではありません。
    * 制約条件がない: 文字数や表現方法など、出力に対する制約が何も示されていないため、AIは自由にキャッチコピーを生成してしまいます。
    * 世界設定が不十分: どのような背景で、どのような環境で、どのような知識を持つことを前提としているのかが不明です。
    * 役割が不明確: 誰がキャッチコピーを考えるのか、役割が不明確です。
    * 処理手順が定義されていない: どのようにキャッチコピーを生成すれば良いのか、具体的な手順が示されていません。
    * 出力形式が指定されていない: どのような形式で出力すれば良いのかが指定されていないため、AIは自分の判断で出力形式を決めてしまいます。
    * 例示がない: どのようなキャッチコピーが良い例なのか、悪い例なのかが示されていないため、AIは良いキャッチコピーの基準を理解できません。
    * 例外処理が定義されていない: エラーが発生した場合の対処方法が定義されていないため、AIはエラーに対応できません。
    * 評価基準がない: どのようなキャッチコピーが良いキャッチコピーなのか、評価基準が示されていないため、AIは出力の良し悪しを判断できません。
    * フィードバックループが定義されていない: AIの出力を改善するためのフィードバック方法が定義されていないため、AIは学習し、成長することができません。
    * 言葉の定義がない:  キャッチコピーに関連する重要な用語の定義が示されていません。

    これらの問題点を解決するために、以下のような改善を提案します。

    1. ゴールをより具体的にする: 例:「環境に優しく、洗浄力が高い、新しい洗濯用洗剤のキャッチコピーを10個作成する」
    2. 制約条件を追加する: 例:「文字数は20文字以内」「環境への優しさを表現する言葉を必ず使用する」
    3. 世界設定を追加する: 例:「環境問題への意識の高まりを受けて、サステナブルな新商品を開発」「ChatGPT APIを利用」「SDGsに関する基本的な知識、環境問題に関する最新の動向、洗濯用洗剤に関する一般的な知識」
    4. 役割を設定する: 例:「経験豊富なマーケター」
    5. 処理手順を定義する: 例:「ターゲット層(環境意識の高い消費者)の特定」「商品の特徴(環境への優しさ、高い洗浄力)の洗い出し」「キャッチコピーの生成」「生成されたキャッチコピーの評価」
    6. 出力形式を指定する: 例:「箇条書き」
    7. 例示を追加する: 例:「良い例: 地球に優しい洗い心地、未来を洗う選択」「悪い例: よく落ちる洗剤(環境への優しさが表現されていない)」
    8. 例外処理を定義する: 例:「キャッチコピーが生成できない場合: 生成できない理由を出力する」
    9. 評価基準を追加する: 例:「環境への優しさが表現されているか?」「ターゲット層の心に響くか?」「商品の特徴を的確に表現しているか?」「オリジナリティがあるか?」
    10. フィードバックループを定義する: 例:「人間がキャッチコピーを評価し、良い点と改善点をフィードバックする」「AIがフィードバックに基づいて、キャッチコピーを修正する」
    11. 言葉の定義を追加する: 例:「環境に優しい: 環境負荷が少なく、持続可能性に配慮していること」

    これらの改善を加えることで、プロンプトの質が向上し、AIはより良いキャッチコピーを生成できるようになるでしょう。

 3. ユーザーは、AIからの提案を参考に、プロンプトを修正する。

この例では、AIはユーザーが作成したプロンプトを詳細に分析し、具体的な問題点と改善提案を示しています。ユーザーは、この提案を参考にすることで、効率的にプロンプトを改善することができます。

AIとの対話によるブラッシュアップ

AIを活用したプロンプト作成の最終段階は、AIとの対話を通じて、プロンプトを継続的にブラッシュアップしていくことです。

AIは、人間との対話を通じて学習し、成長します。ユーザーがAIの出力結果を評価し、フィードバックを与えることで、AIはより良いプロンプトを生成できるようになります。

具体的には、以下のような手順で、AIとの対話によるプロンプトのブラッシュアップを行うことができます。

  1. AIが生成したプロンプトの叩き台、または改善提案に基づいて修正したプロンプトを、再度AIに入力する。

  2. AIがプロンプトを実行し、結果を出力する。

  3. ユーザーは、AIの出力結果を評価し、良い点と改善点をフィードバックする。

  4. AIがフィードバックに基づいて、プロンプトを修正する。

  5. このプロセスを、満足のいく結果が得られるまで繰り返す。

このプロセスを通じて、AIはユーザーの意図をより深く理解し、ユーザーのニーズに合致したプロンプトを生成できるようになります。

例:AIとの対話によるプロンプトのブラッシュアップ

AIが生成したプロンプト(前述の改善提案を反映):

goal: 環境に優しく、洗浄力が高い、新しい洗濯用洗剤のキャッチコピーを10個作成する
constraints:
  - 文字数は20文字以内
  - 環境への優しさを表現する言葉を必ず使用する
world_setting:
  background: 環境問題への意識の高まりを受けて、サステナブルな新商品を開発
  environment: ChatGPTを利用
  knowledge:
    - SDGsに関する基本的な知識
    - 環境問題に関する最新の動向
    - 洗濯用洗剤に関する一般的な知識
role: 経験豊富なマーケター
responsibilities:
  - ターゲット層の心に響く、効果的なキャッチコピーを考案する責任がある
procedure:
  - step1: ターゲット層(環境意識の高い消費者)の特定
  - step2: 商品の特徴(環境への優しさ、高い洗浄力)の洗い出し
  - step3: キャッチコピーの生成
  - step4: 生成されたキャッチコピーの評価
output_format: 箇条書き
examples:
  - 良い例: 地球に優しい洗い心地、未来を洗う選択
  - 悪い例: よく落ちる洗剤(環境への優しさが表現されていない)
exceptions:
  - キャッチコピーが生成できない場合: 生成できない理由を出力する
evaluation_criteria:
  - 環境への優しさが表現されているか?
  - ターゲット層の心に響くか?
  - 商品の特徴を的確に表現しているか?
  - オリジナリティがあるか?
feedback_loop:
  - 人間がキャッチコピーを評価し、良い点と改善点をフィードバックする
  - AIがフィードバックに基づいて、キャッチコピーを修正する
definitions:
  - 環境に優しい: 環境負荷が少なく、持続可能性に配慮していること
initial_instruction: さぁ、上記のプロンプトを使って、環境に優しく洗浄力の高い、新しい洗濯用洗剤のキャッチコピーを10個生成してください。

AIの出力:

1. 地球を守る、確かな洗浄力
2. エコな選択、汚れにバイバイ
3. 優しさと強さ、この一滴に
4. 未来を洗う、サステナブルな泡
5. 自然に還る、確かな白さ
6. 毎日使うものだから、地球に優しく
7. 汚れを落として、未来を守る
8. エコな洗剤、確かな効果
9. 地球も喜ぶ、この洗い上がり
10. 洗うたび、未来が輝く

ユーザーのフィードバック:

全体的に良いと思いますが、いくつか改善してほしい点があります。

1. 「エコな選択、汚れにバイバイ」は、少し子供っぽい表現なので、もう少し大人向けの表現にしてください。
2. 「優しさと強さ、この一滴に」は、環境への優しさが直接的には伝わってこないので、より具体的な表現にしてください。
3. 「自然に還る、確かな白さ」は、やや抽象的なので、もう少し具体的な表現にしてください。

また、全体的に「地球」「未来」という言葉が多いので、もう少し多様な表現を使ってください。

AIによるプロンプト修正:

goal: 環境に優しく、洗浄力が高い、新しい洗濯用洗剤のキャッチコピーを10個作成する
constraints:
  - 文字数は20文字以内
  - 環境への優しさを表現する言葉を必ず使用する
  - 「地球」「未来」という言葉は、それぞれ2回までとする
world_setting:
  background: 環境問題への意識の高まりを受けて、サステナブルな新商品を開発
  environment: ChatGPTを利用
  knowledge:
    - SDGsに関する基本的な知識
    - 環境問題に関する最新の動向
    - 洗濯用洗剤に関する一般的な知識
role: 経験豊富なマーケター
responsibilities:
  - ターゲット層の心に響く、効果的なキャッチコピーを考案する責任がある
procedure:
  - step1: ターゲット層(環境意識の高い消費者)の特定
  - step2: 商品の特徴(環境への優しさ、高い洗浄力)の洗い出し
  - step3: キャッチコピーの生成
  - step4: 生成されたキャッチコピーの評価
output_format: 箇条書き
examples:
  - 良い例: 地球に優しい洗い心地、未来を洗う選択
  - 悪い例: よく落ちる洗剤(環境への優しさが表現されていない)
exceptions:
  - キャッチコピーが生成できない場合: 生成できない理由を出力する
evaluation_criteria:
  - 環境への優しさが表現されているか?
  - ターゲット層の心に響くか?
  - 商品の特徴を的確に表現しているか?
  - オリジナリティがあるか?
feedback_loop:
  - 人間がキャッチコピーを評価し、良い点と改善点をフィードバックする
  - AIがフィードバックに基づいて、キャッチコピーを修正する
definitions:
  - 環境に優しい: 環境負荷が少なく、持続可能性に配慮していること
initial_instruction: 以下のフィードバックを参考に、キャッチコピーを修正してください。「エコな選択、汚れにバイバイ」は、少し子供っぽい表現なので、もう少し大人向けの表現にしてください。「優しさと強さ、この一滴に」は、環境への優しさが直接的には伝わってこないので、より具体的な表現にしてください。「自然に還る、確かな白さ」は、やや抽象的なので、もう少し具体的な表現にしてください。また、全体的に「地球」「未来」という言葉が多いので、もう少し多様な表現を使ってください。

AIの出力(修正後):

1. 地球を守る、確かな洗浄力
2. 負担を減らして、汚れを落とす
3. 一滴で叶える、優しさと洗浄力
4. 未来を洗う、サステナブルな泡
5. 水にもどる、確かな白さ
6. 毎日使うものだから、環境に配慮
7. 汚れを落として、未来を守る
8. エコな洗剤、確かな効果
9. 地球も喜ぶ、この洗い上がり
10. 洗うたび、環境に貢献

この例では、ユーザーからのフィードバックに基づいて、AIがプロンプトを修正し、キャッチコピーを改善しています。

このように、AIとの対話を繰り返すことで、プロンプトは継続的に改善され、出力の質も向上していきます。

まとめ

この章では、AIを「プロンプト作成の強力なパートナー」として活用する方法について解説しました。

  • AIによるプロンプトの叩き台作成

  • AIによるプロンプトの改善提案

  • AIとの対話によるブラッシュアップ

これらの方法を組み合わせることで、プロンプト作成の効率と質を飛躍的に向上させることができます。

AIは、単なる「指示待ち」のツールではありません。AIと協働することで、人間はより創造的で、より高度なタスクに専念することができるのです。

次の章では、AIを活用した「プロンプト作成の時短術」について、さらに詳しく解説していきます。AIの能力を最大限に引き出し、効率的に高品質なプロンプトを生成するための具体的なテクニックを、余すことなくお伝えします。どうぞお楽しみに!

  • 今日の学び: AIは、プロンプト作成の強力なパートナー。AIを積極的に活用することで、プロンプト作成の効率と質を向上させることができる。

  • 明日のアクション:

    • 1.AIに、プロンプトの叩き台を作成させてみましょう。

    • 2.AIに、自分が作ったプロンプトを評価させ、改善案を出してもらいましょう。

  • 未来への種: AIは、指示を待つだけでなく、共に創造するパートナーになる。AIとの協働で、プロンプトは、より洗練されていくでしょう。



第4章: プロンプト作成の時短術—AIを活用した効率化


前章では、AIを「プロンプト作成のパートナー」として活用し、プロンプトの質を高める方法について解説しました。この章では、さらに一歩進んで、AIを活用してプロンプト作成を「時短」し、効率化する方法について詳しく解説していきます。

プロンプトエンジニアリングにおいて、「時間」は最も貴重な資源の一つです。特に、ビジネスの現場では、迅速な意思決定と行動が求められます。AIの能力を最大限に引き出し、効率的に高品質なプロンプトを生成することは、時間的な制約を克服し、ビジネスの競争力を高めるために不可欠です。

この章では、プロンプト作成の時間を大幅に短縮し、生産性を向上させるための、具体的な「時短術」を紹介します。これらのテクニックをマスターすることで、あなたはプロンプトエンジニアリングの「達人」へと進化し、AI時代を勝ち抜くための強力な武器を手に入れることができるでしょう。

AIによるプロンプトの叩き台作成の高速化

前章で紹介した「AIによるプロンプトの叩き台作成」を、さらに高速化するためのテクニックを紹介します。

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