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【不思議体験】「居るはずのない誰かが居るかもしれない」がある幸せ

10年ぐらい前の夏のこと

その頃の自分は、土日を有効に使うために、平日の仕事終わりに床屋に通っていました

そのとき通っていた床屋は、社会人になってから見付けたお店

会社から家までの帰路にないため、普段使わない電車とバスを乗り継いで行く必要がありましたが、腕が良くて話の上手い担当の方に髪を切ってもらいに、長い移動時間を要してもなお通い続けていました

そんなある日の床屋帰りの出来事です

散髪を終えて会計を済ませ、お店に預けていた上着とカバンを受け取ると、カバンの奥でマナーモードにしている携帯が震えていることに気付きます

急いで担当の方に挨拶してお店を離れ、カバンから携帯を取り出すと、ちょうどそのタイミングで携帯の振動が止まります

仕事の連絡かもしれない

折り返すべく着信履歴を調べると、上から下まで妻からの着信履歴がビッシリ

家に帰るためのバス停に向かいながら電話を掛けようとしたその瞬間、また携帯が震えます

発信者は、やはり妻

「もしもし」と電話に出ると、声にならないほどの小さな声で

「家に誰かいるの!早く帰ってきて」

家に誰かいる・・・泥棒?不審者?とにかく妻が何かの存在に怯えていることは伝わってきます

「何?どうしたの?」

ちょうどそのタイミングでバスが来ました

詳細を聞き取るべく一本やり過ごして電話を続けるか、帰路を急ぐべく電話を切ってバスに乗るか・・・

迷う自分に妻が大きく息をもらすように叫びます

「いいから、早く帰ってきて!」

急いでバスに飛び乗り、一番後ろの座席に座って下を向きながら小声で会話を続けます

「どうしたの?今バスに乗ったから、もう少しで帰れると思うよ」

ここからのバスの乗車時間は約15分

しかし、このバスが着くのは家から走って約10分ほどのところにあるバス停

合わせて30分近く待たせるのに、「もう少しで帰れる」はハッキリ言って嘘でしたが、妻を落ち着かせるためにはこう言わざるを得ませんでした

「落ち着いて、何があったのか教えて」

妻が動揺しながらも少しずつ話します

「ガスコンロの火が付かなかったからガス屋さんに電話したら、電池の交換時期じゃないかって言われて・・・」

ビルトインタイプのガスコンロは着火のための電池が必要

自分の実家もビルトインタイプのガスコンロだったので、度々電池を交換した経験がありましたが、妻はそれまで一度も電池を交換したことがなかったようでした

「言われた通りに電池がある場所を探して、蓋を開けてみたらね・・・電池のプラス?突起した部分が、どっちも外向きになってて・・・」

えっ・・・強烈な違和感とともに、じわじわと妻の恐怖が自分にも流れ込んできます

「電池の向きがおかしいなと思ったから、片方の電池をね、逆向きにしたの・・・そうしたらね、火が付いたの」

その瞬間、妻が怯えている理由の全貌が明らかになりました

少なくとも今朝までは普通にガスコンロは着火していて

ガスコンロが着火していたということは、電池は正しくガスコンロに設置されていた

ところが、今になって火が点かなくなり、その原因が電池の向きだったということは・・・

「ねぇ、今朝会社に行く前に電池交換とかしてないよね?」

自分に電池交換した記憶はない




・・・ということは、妻と自分以外の誰かが

携帯の電池が切れてしまうといけないので、一度電話を切り、家の近くのバス停に着くまで何が起きているのか頭を整理します

会社に行くときは1階にも2階にも気配はなかった、もしかしたら小屋裏にいたのか・・・「そいつ」はどこに潜んでいたんだろう?

ストーカーか、住むところに困った人間か・・・「そいつ」は何のために居たんだろう?

鍵を掛け忘れたときに忍び込んだのか、それとも引っ越してきたときからずっといたのか・・・「そいつ」はいつから家にいたのだろう?

いつかテレビで見た恐ろしい事件が脳裏をよぎります



・・・妻が「そいつ」の存在に気付いたことを知ったら、「そいつ」はどんな行動に出るのだろう?

「今どこにいるの?」

バスから降りて全力で走りながら通話を再開します

「玄関にいるよ、外に出るのも怖いから、玄関に座ってる」

社会人になって鈍った.体が悲鳴を上げ、自分の肺から鉄の匂いが鼻の辺りに立ち込めてきますが、必死に足を前に出し続けます

角を曲がると家が見えるそのとき

「もう着くよ、家から出ておいで!!」

妻に号令を掛けると、玄関の明かりがパッと点き、妻が外に飛び出してきました

とりあえず妻が無事でよかった、と一安心したものの、まだ事は解決していない

「どうしよう、まだ中に誰かいるかもしれない」

妻が恐怖に震えた声を絞り出して、警察を呼ぶことを提案しますが、悩んだ挙句、自分1人で家を確認することにしました

大袈裟なほどに大きな音を出しながら家に入り、1階のシャッターを開けて脱出経路を確保します

その後、イチイチ大きな音を出しながら、1階、2階、小屋裏を見回していきます

寝室、トイレ、風呂場はもちろん、足高になったソファの下、クローゼットの中、物陰の裏側、パントリー・・・人が入れそうなスペースは隈なく確認します

・・・が、誰もいない

そして、人が居た形跡もない

全てを確認した後、1階のシャッターを閉めて、外で待って居た妻に声を掛けます

「誰も居なかったよ」

・・・誰も居なくてよかったけど、誰も居ないはずはない


・・・だって、電池が逆さまになっていたんだから

と、この事件はこれで終り

10年ほど経った今も身の危険は一切ありませんが、なぜ電池が逆になっていたのかはわからないまま

単に妻が疲れていて、何かを勘違いしただけなのか

しかし、あの状況で勘違いすることってあり得るのか

・・・もしかして、今もまだどこかに潜み続けてたりして(こわっ)

ということで、皆さんもこんな経験ありますでしょうか?

ちなみに、この家であった不思議体験はもう一つあるのですが、それはまた別の機会に

ではまた

またねー

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