見出し画像

【ゾッとする話】「気付かないうちに侵入していた未知の世界」がある幸せ

もう20年以上前の話

自分が大学生だった頃の1日の行動パターンはほぼ決まっていて

大学で講義を受けた後は、大学近くにある無料の広場でフットサル

しばらくしたら学生優待がある雀荘に行って、ファミレスで話して、バイトして帰宅



社会人になってから知りましたが

自分がこんなルーティーンを繰り返す一方で、留学やボランティアで経験値を上げていた強者も少なからずいたようなので



今となって振り返ると

(あのときの時間の使い方はもったいなかったかな・・・)

なんて後悔にも似た感情が少し湧いてきたりもします



そんなルーティーンをこなしていたある夏の日


いつものように、講義、フットサルを終えて雀荘に向かいます


その雀荘は、大学近くにあるビルの地下1階にあり

入店すると、オーナー夫人と思われるご高齢の婦人が明るく出迎えてくれます

毎日通う自分たちに優しく接してくれていて

学生割引をさらに割り引いてくれることもありました


雀荘のあるビルの階段を下り扉を開けると、いつもはガラガラの店内が、なぜかこの日は満席


「ごめんねぇ、結構待つことになるかも・・・」

オーナー夫人いわく、ちょうど今、満席になったとのこと


麻雀は、数時間、下手すると翌朝まで打ち続けるゲーム


どれだけ待たされるかわからないので、潔く麻雀を諦めて、ファミレスに行くことにしました


ところが、その日はファミレスもいっぱい


行きなれたところからお初のエリアまで広範囲に探しましたが、どこも満席でした


「今日は諦めて帰ろうか」


炎天下を歩き回ってくたびれた自分たちは駅に向かってとぼとぼと歩き出しました




「おっ、なんか喫茶店の看板があるよ」




初めて通る道で見付けた喫茶店

うっかり見過ごしそうな控えめな看板で

レトロな雰囲気を醸し出していました



「こういうとこ高いんじゃない?」 

学生の自分たちは基本的にお金に余裕がなく

いつも行くのはファミレスやコーヒーショップ

いわゆる純喫茶は敷居の高い場所でした



「いい加減のど乾いたし、行ってみよーよー」

炎天下を歩き回っていた自分達

癒しを求めてお店に入ることにしました



カランコロンカランっ



扉を開けると、喫茶店のアレが自分たちの入店を知らせます



「はい、何名様?」

どことなくダークな雰囲気を纏った中年のマスターが出迎えます


「6人ですけど、入れますか?」


パッと見た店内は狭く、6名がまとまって座れる席はなさそう

諦めて帰ることになるかと思ったそのとき



「2階どうぞ」

よく見ると、店の奥に2階へ続く階段があります



(このお店、2階があるのか・・・)



マスターに連れられて2階に上がると

そこには、ズラッとテーブルゲームが並べられ

テーブルゲームに向かい合うようにソファが配置されたフロアが広がっています



「うぉー、テーブルゲームって実物見るの初めてだわ」



テーブルゲームとは、1970~80年代に流行ったテーブル型のゲーム機

当時の喫茶店には当たり前のように置かれていて

当時の若者は「パックマン」やら「インベーダーゲーム」に夢中になっていたようです



「お好きな席にどうぞ」



マスターがその場を去ると、自分たちは一斉にテーブルゲームを覗き込みます


テーブルゲームの画面には、パックマンやインベーダーゲームなど色んな種類のゲームが表示・・・




・・・されていません



どのテーブルも同じ画面

唯一そこには、「麻雀ゲーム」だけがありました



2階フロアには、自分たち以外にスーツを着た営業系サラリーマンが1名だけ居ましたが

その方も麻雀ゲームをやっているようでした



「ここでも麻雀かよ!」

雀荘を諦めてきた矢先に、また麻雀

苦笑いしながら着席します




しばらくすると、マスターが氷水とおしぼり、そしてメニュー表を持ってきます


値段をチラッと確認して

「アイスコーヒー、アリアリで!」

と、全員がアイスコーヒーを注文



「アリアリ」というのは、麻雀用語で「ミルクあり、砂糖あり」の略語

普通のお店では通じない言葉ですが

これだけ麻雀ゲームにこだわっているお店だからか


「はい」

問題なくマスターは理解し、階段を下りていきました



「それにしてもあのサラリーマン、テーブルゲームにハマりすぎじゃない?」

サラリーマンのテーブルには、1杯のアイスコーヒーと高々と積み上げられた100円玉



「そんなに面白いのかな・・・」



サラリーマンがただのゲーマーという可能性もありますが

何かに取り憑かれたように没頭している様子を見てじわじわと興味が湧いてきます



自分たちのもとにアイスコーヒーが届いてからしばらくしてもあのサラリーマンはテーブルゲームに没頭



・・・どうにもこうにも、あのサラリーマンが気になります




あのサラリーマンは自分たちの入店前からテーブルゲームをしていて

今も耐えず100円玉を投入

そして、100円玉が無くなると、マスターを呼び両替してまでやり続けます



「・・・これって、そんなに面白いの?」

あのサラリーマンの様子に触発された自分たちは試しにテーブルゲームをやってみることにしました



自分を含めて3人

手持ちの100円玉を投入します


画面に表示されたのは、何の変哲もない麻雀ゲーム

自分が小学生の頃にあったファミコンぐらいのクオリティしかなく

人物も登場しなければ、演出も画面が点滅するぐらいのもので決して面白くありません


加えて、コンピューターが強過ぎてすぐに負けてしまうので

「何だこれ、金の無駄だわ」

と言って友人が次の100円玉を投入することはありませんでした




そんな中、なぜか自分は勝ち続けます


ピカピカピカ


コンピューターに勝つと画面が点滅


「よく勝てるね」

特に麻雀が強いわけではありませんが、なぜか勝ち続けます


ピカピカ

・・・

ピカピカ

・・・

何度目かの勝利画面で異変が起きます

ビカビカビカビカ、ビカーーーン

「笑うセールスマン」の喪黒福蔵が指を刺した時のような激しい点滅


麻雀の最高得点の上がり役である「役満」で上がったときの演出でした


「こんなときに役満出たわ・・・」


滅多に役満であがれることはなく、過去一度も役満の経験がなかった自分

初体験がテーブルゲームだったことに複雑な気持ちでした


その後も続けますが、自分の点数が減ることはなく、むしろ増え続けます


入店してから1時間ほど経過したとき


「そろそろ帰ろうぜー」

喫茶店に飽きた友人から声が上がります

何とかテーブルゲームを終らせたかった自分ですが、どうしても点数が無くならない


電源を抜いて終らせてしまおうかとも思いましたが、壊してしまうといけないので

お会計がてらマスターにテーブルゲームをリセットしてもらうことにしました


マスターを呼び、お会計とリセットをお願いすると



ダークな雰囲気のマスターの顔色が少し変わります

ただテーブルゲームをリセットするだけなのに、神妙な面持ちで画面を確認しています



「お会計しますので少々お待ちください」



コーヒー1杯500円

各々がお財布からお金を出し

集金が完了したところでマスターがお会計のトレーを持ってきます



「はい、こちらがお会計・・・



続けて、マスターの口から信じられない言葉が発せられます



・・・24,800円になります」



一瞬にしてその場の雰囲気が凍りつきます


メニュー表には確かにコーヒー1杯500円の記載かあった


しかし、メニュー表を回収された今、証拠はどこにもない


(マスターのダークな雰囲気は、このお店がボッタくり店だったからなのか・・・)


マスターに逆えば、きっと裏から怖い人たちが現れる


そんなことを考えたとき、マスターがトレーをグッと自分の前に差し出します




「24,800円・・・お受け取りください」




マスターが差し出すお会計のトレーには、もちろん伝票



そして、なぜか既に「お金」が乗っています




「えっと・・・どういう意味でしょうか?」




マスターは不愛想な顔のまま

「テーブルゲームの換金分ですので、お受け取りください」




・・・そうです、おそらくこのお店

そういうお店だったんです




「えっと・・・」

改めて場の雰囲気が凍り付いた後



全員顔を見合せ



「あっ、大丈夫です!ごちそうさまでした!」


お会計のトレーにコーヒー代を乗せて

そそくさと帰りましたとさ




以上!

いかがでしたでしょうか

24,800円を請求されたと思ったときはビビりましたが(汗)

24,800円を渡されそうになったときはもっとビビりました(ド汗)

一見普通の喫茶店で

真っ昼間に起きた出来事



今もあの喫茶店はあるのかなー

大学の周辺にはもうしばらく行ってないですし

そもそも一度しか通ったことのない道で遭遇した喫茶店なので二度と辿り着けないんだろうなー

ゾッとしたけど、面白い体験でした(笑)

皆さんも知らず知らず危ない世界に踏み込んでしまったような面白い体験があったらコメントいただけると嬉しいです

ではまた!


いいなと思ったら応援しよう!