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【ゾッとする話】「恐山(おそれざん)の小屋にある秘密のノート」がある幸せ

入社して3年ほど経った頃

当時はまだワークライフバランスが会社で叫ばれることはなく

毎日23時まで働き、終電で帰るという生活を繰り返していました




そんなある日の帰り道

駅の階段を上りながら、こんな考えが頭をよぎります

(自分が今上ってるこの階段・・・あと数時間したら、下ることになるんだな)


まさに家と会社の往復



社会人になったら、世界を飛び回ることになるのかなー

入社したときに描いた理想と真逆の現実が目の前にある気がしました

振り返ってみると、世界どころか日本すらまともに行ってない



このまま時間が経っていくのかな・・・

明後日には年末年始休暇が迫っているにもかかわらず、何の予定もない

そんな自分に、漠然とした不安が大きくなっていきます


(そうだ、独り旅に出よう!)


自分以外に誰も乗っていない車両の座席からボーッと外を眺めながらの思い付きでした


その翌日

明日から旅行の自分は、仕事を何とか早く切り上げて本屋に向かいます

閉店ギリギリに入店した自分が足早に目指すは旅行誌コーナー

(さて、どこ行くか)

特に行きたい場所が思い付かなかった自分

北海道から沖縄までズラっと並ぶ旅行誌を見て

ピピっときたところに旅行することにしました


閉店まであと10分

(うーん、これ!)

手に取ったのは「青森」



選んだ理由は

そのときの上司が

「昔、青森の恐山(おそれざん)に行ったけど、すげー怖いぞー」

と言ってたのを思い出したから



テレビの心霊特番か何かで見たことがある霊場「恐山」を見てみたい

単なる怖いもの見たさで始まる旅でしたが

当時の自分は、一歩踏み出せたことに大満足でした



翌朝はいつものお出掛けカバンに下着だけ詰めて家を出発

地元駅で新幹線のチケットを買い、新幹線の中でホテルを予約

(バタバタで決まった旅だけど、何とかなるもんだなー・・・全てが定価でちょっともったいないけど(苦笑))

そんなことを思いながら、無事に青森に着きます




2泊3日の青森旅行

ゴールデンウィーク休暇に来てたら桜が満開だったであろう弘前城

夏季休暇だったら寒くなくて快適に回れたであろう三内丸山遺跡

ねぶた祭りはやってない

無計画な旅行を反省しつつも、いつもと違う日常を満喫していました



旅行誌のオススメスポットを一通り回った自分

ついに、そのときは訪れます

そうです・・・


残すは、この旅のクライマックス「恐山」



記憶がかなり曖昧ですが

電車とバスを乗り継いで

相当な時間を掛けて辿り着いた記憶があります



バスを降りたときはまだ日が出ていたものの

もう少しすると暗くなり始めそうな頃の到着でした

(ふーん、こんなものか)

前評判が怖すぎた自分の恐山に対する最初の感想


ズラっと並ぶ小屋には、亡くなった方を口寄せすると言われる「イタコさん」とその相談者

何やら真剣に話をする様子を横目に歩みを進めます



しばらく歩いたそのとき

急に異様な空気が自分を包み込みます


(なんだ、これ・・・)


見渡す限りの岩場

その岩場に所狭しと並ぶ故人と思われる写真と大小様々な風車

そして、血の池地獄と名付けられた池


(黄泉の国との境目があるとしたら、こんな場所なんじゃないか・・・)


つい目を見張ってしまう

しかし、見てはいけないような不思議な感覚



圧倒されるままに歩き着いた先には、海と見紛うような湖

不気味だけど美しい

生と死を感じた瞬間でした



恐山を一通り回って、後は帰るだけ

来た道を辿ってバス停に戻るものの、時刻表の示す次のバスの到着時刻はまだしばらく先

十分な防寒具も揃えずに旅に出たため

もう日が落ちようとする状況で、このまま待ち続けるには寒すぎる


(どこか寒さを凌げる場所はないかな)


辺りを見渡すと、待合所と思われる小屋があり

中には点々と並ぶベンチ

そして、一冊のノートが置かれた机がありました



1日の終盤で携帯の電池残量もあとわずか

旅行誌も見飽きた自分には、他に暇を潰せるものもなく

迷わずノートに向かいます



ペラペラとノートをめくると

故人を偲ぶ言葉やイタコさんを通じて故人と会えたと思われる方の感動のエピソードなどがビッシリ

それらの言葉は本当に生々しく真剣で

(怖いもの見たさで来る場所じゃなかったのかな・・・)

と、怖いもの見たさで恐山を訪れた自分の行動を少し恥ずかしく感じるほどでした



さて、そろそろバスが来る時間

ノートを閉じてバス停に向かおうとしたそのとき

ある恐ろしい言葉が目に飛び込んできました


今でもハッキリ覚えていて

一生忘れないであろう衝撃的な一言

自身の感情をノートにぶつけたような

きれいな字とはとても言えない

まさに殴り書き



それは・・・


こんな内容でした・・・





「恐れ入ったぜ、恐山!」





不謹慎ながらにそのコメントに笑いが堪えられず

小屋に自分の笑い声が響き渡りましたとさ


以上!


いかがだったでしょうか

子供の無邪気なたった一行の文章が

恐山のあの独特の雰囲気をガラッと変えて

自分を笑顔にした


不謹慎だと叩かれそうな気もしますが

素直に笑いってすごいなー

と、思いました

自分の勝手な推測ですが

あの一言が暗い気持ちになっていた誰かを笑顔にしているんじゃないかなー

と思ったりします


かく言う自分も仕事の疲れが吹っ飛びました(笑)


そう言えば、次に恐山に行ったらイタコさんにおじいちゃんを口寄せしてもらいたいな

イタコさんに口寄せしてもらったことのある方感想をコメントいただけると嬉しいです

ではまた!

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