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東大受験を支えてくれたのは白だった

こんにちは。仕事を1年半で辞めて大学院に戻る菜子です。

今年の東大の試験日程は2月25~27日(27日は理科三類のみ)だそう。
受験生は心と身体を整えているころでしょう。

私は体調に細心の注意を払っていたのに、当日体調不良になってしまった苦い思い出があります。

体調悪いいいいいい
数学ゼロ完だああああ
リスニング聴こえんんん


この最悪の状況を救ってくれたのは、

白でした。


この記事では、受験生のチカラになることを願いながら、白への偏愛を爆発させます。
(私も緊張感を持つために時間制限を設けて執筆します!!)


※以前書いた通り、私は地方から東大を目指す受験生を応援したい星人です。たまに受験関連の記事を投稿します。

白との出会い


白と出会ったのは、高校入学を控えた3月。
もちろん卵の黄身じゃないほうも、日本を代表する主食も、「白い」と表現できることは知っていた。そしてそれらは間違いなく白だと思っていた。
だけど、本当の意味での白と出会ったのは、15歳の春だった。

白がたくさん

私が通った高校では、入学前に『白』という本が配られる。春休みの間に読んで、感想文を書くのだ。

この本は、白を単なる色としてではなく、全感覚で捉えるもの・美意識として立ち上がるものとして語っている。
そして、2009年に東京大学の国語第1問で出題されたことでも有名である。

著者の原研哉さんは無印良品のボードメンバー等として活躍されている日本を代表するデザイナーで、白を基調とした洗練されたデザインを追求なさっている。GINZA SIXや蔦屋書店など、街を歩くと原さんが携わったデザインを見ることができる。

そんな原さんの本によって、私の白の概念は根底からひっくり返された。
今まで白いと思っていたものが白く感じられなくなったし、白いと思っていなかったものを白く感じられるようになったのだ。

例えば、第1章はこんな風に始まる。

白があるのではない。
白いと感じる感受性があるのだ。
だから白を探してはいけない。
白いと感じる感じ方を探るのだ。
白という感受性を探ることによって、僕らは普通の白よりももう少し白い白に意識を通わせることができるようになる。

『白』ー第1章 白の発見ー

これは白だという事実があるのではなく、白いと感じる感受性によって白を認識するのだと、私は解釈している。たしかに、薄いクリーム色を見たとき、白だと感じる人もいれば黄色だと感じる人もいる。また、白を色としてでなく、空白や静寂の中に感じることもある。その意味で、白が元々そこにあるのではなく、白いと感じたときにはじめて白を発見するのかもしれない。

この考えに触れたとき、自分の中の白という感受性が強烈に表れるのを感じた。今まで意識していなかった感覚が研ぎ澄まされ、白を感じようとする欲求が立ち上がってくる気がした。

『白』原研哉著

原さんが手がけた作品

出典:原デザイン研究所
出典:原デザイン研究所
出典:原デザイン研究所

白と受験直前


高校入学時に「白」を読み強烈なインパクトを受けたものの、進級するにつれて白を忘れかけていた。部活や文化祭に熱中し、ありふれた青春を謳歌していた。

しかし、最後の最後に白と再会したのである。

それは受験を直前に控えた高3の冬。教室にピリピリと緊張感が走り、先生はインフルの予防に必死になるあの時期。

私は、各教科の先生方にあいさつして回っていた。指導してくれた先生方に感謝を伝えつつ、エールをもらおうと思い立ったのだ。数学、物理、英語という順番で回り、最後が国語の先生だった。

軽く言葉を交わした後、彼は私に1枚の紙を渡してきた。それは当時の東大国語の解答用紙であり、解答欄には『白』をモチーフにした先生からのメッセージが綴られていた。

2月25日からの前期日程。君たちは白い答案用紙に立ち向かう。白は人間にとって後戻りできないものの象徴だ。「ダメなら次回がある。」とかいった二の矢への依存を捨て高い集中力を保ちながら、受験生にとって至高のこの一回性の時空を楽しんでこい。

恩師からの熱いエール

心がブワっと高揚するのを感じた。
先生ありがとう~~~~と言いつつ、闘争心がメラメラと盛り上がってくる。
そうか、この1年間勉強してきたけど、本番は一度きりなんだ。白い紙にインクを落とすと後戻りできないように、受験は一発勝負なんだ。

しゃきっとした気持ちを抱えて、東京へと飛び立った。

ちなみに先生がモチーフにしたであろう『白』の一節はこちら。

白い紙に記されたものは不可逆である。後戻りが出来ない。
ー中略ー
弓矢の初級者に向けた忠告として「諸矢を手挟みて的に向かふ」ことをいさめる逸話が『徒然草』にある。標的に向かう時に二本目の矢を持って弓を構えてはいけない。その刹那に訪れる二の矢への無意識の依存が一の矢への切実な集中を鈍らせるという指摘である。この、矢を一本だけ持って的に向かう集中の中に白がある。

『白』ー第4章 白へー

白と受験当日


迎えた試験当日。会場に向かいながら、体調が悪化している自分に気づき始めていた。

目痛い、頭も痛い、鼻水ずびー ♪

謎テンションで歌いながら、これは花粉症だとわかった。
大分より東京の方が花粉多いんかい!
心の中でツッコミながら、万全の体調でないことに焦りを感じる。花粉症も受験生からしてみればかなり厄介だ。
実力を発揮できるだろうか、最後まで集中できるだろうか。
そんな私を不安から救ってくれたのは、白だった。

白助けてくれーと、すがる思いで鞄の中から先生がくれた紙を取り出し、丁寧に言葉をなぞっていく。
「二の矢への依存を捨て高い集中力を保ちながら、受験生にとって至高のこの一回性の時空を楽しんでこい。」
心がまた、ブワっと高まってきた。やるしかない、やってやる。

こうして白を味方につけた私は、IQ200(のつもり)になって試験に挑んだ。手ごたえがなくて途中でまた不安になった時も、白を思い出しては自分を奮い立たせた。そして、合格をじりじりと手繰り寄せたのである。

先生からもらった実際の紙。大事に取ってある。


白とその後の人生


大学受験が終わってからも、私は人生の節々で意識的に白を感じるようにしている。どっぷり白の世界に浸りたいときは、『白』を読み返す。同じ本は一度しか読まない派の私が、唯一繰り返し読んでいる本だ。

こんなに白を感じようとする理由は、
感覚が研ぎ澄まされてエネルギーがわいてくるから
・シンプルな心になれるから
・何気ない日常を美しく感じられるから

だから、人生の大事な選択をするときは白を意識する。モヤモヤしているときも白を味方につける。自分を甘やかしたい日も白を感じてみる。白との出会いは間違いなく、これまでそしてこれからの人生に影響を与え続けている。

以上、受験そして白への偏愛にお付き合いくださり、ありがとうございました。
受験生のみなさんが、入試を楽しく悔いなく終えられることを心より応援しています。

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『白』を詳細に考察なさっている、本屋 余白さんのnote。

東大入試に出題された『白』の解説をなさっている、togenkaさんのnote。

『白』が好きすぎるので、amazonのリンクも貼らせてください。


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