三島由紀夫について
「諸君は、去年の10.21*から後だ。
もはや、憲法を守る軍隊になってしまったんだよ。
自衛隊が二十年間、血と涙で待った憲法改正ってものの機会はないんだよ。
もうそれは政治的プログラムから外されたんだ。
ついに外されたんだ、それは。
どうしてそれに気がついてくれなかったんだ。
日本を守る事。
日本を守るとは何だ。
日本を守るとは、天皇を中心とする、歴史と文化の伝統を守る事である。
おまえら聞けぇ、聞け!
静かにせい
静聴せい!
話を聞け!男一匹が、命を懸けて諸君に訴えてるんだぞ。
小さい根性ばっかりに惑わされて、本当に日本の為に立ち上がる時は無いんだ。
抵抗したからだ。
憲法の為に、日本を骨無しにした憲法に従って来たという事を知らないのか。
諸君の中に一人でも俺と一緒に立つ奴は居ないのか。
一人も居ないんだな。
よし。
武というものはだ、刀というものは何だ。
自分の使命に対して…?…という言葉だ。
それでも武士か!
それでも武士か!
まだ諸君は、憲法改正の為に立ち上がらないと見極めがついた。これで俺の自衛隊に対する夢は無くなったんだ。
それではここで、俺は天皇陛下万歳を叫ぶ。」※三島由紀夫(みしま ゆきお、本名:平岡公威、1925年1月14日 - 1970年11月25日)は、日本の小説家、劇作家、詩人、そして思想家として知られる重要な文人だ。彼は戦後日本文学の重要な作家の一人であり、その作品や思想は日本社会に大きな影響を与えた。三島の代表作には、『金閣寺』、『仮面の告白』、『豊饒の海』四部作などがあり、これらは彼の独特な美意識や人生観を反映している。特に『金閣寺』は実際の火事と彼自身の内面的葛藤を描いた作品で、多くの読者に愛されている。※
上記の三島由紀夫の訴えは、
1970年11月25日、三島は自衛隊の宿舎で自ら命を絶つ前の音声を一部文字に起こしたものである。
三島由紀夫を語ることは、大量の文献や学問体系が存在している為切り口が難しいテーマでもある。自衛隊の宿舎で切腹自殺をした過激な思想家のイメージがあるが、実際小説の内容は緻密で繊細である。
また東大全闘争についてのドキュメント映画で三島由紀夫を観ることが出来る。実際の三島は、とても知性的であり、日本一の東大学徒の弁明を聞く姿勢は、ギリシャの哲学者ソクラテスのようにもみえる。是非一度鑑賞していた〖東大全闘争について〗
東大全闘争(とうだいぜんとうそう)は、1968年から1969年にかけて、東京大学を中心に学生による大規模な抗議運動やストライキが展開された事件です。この運動は、日本における教育制度、社会のあり方、そして戦争責任などに対してさまざまな不満や要求を掲げて行われていた。
学生たちは、戦争を支持するような政策や体制に対抗し、より自由な教育と社会の構築を求めた。特に、アメリカとの関係や、大学の体制に対する批判が強調された。
この闘争は日本の大学における学生運動の象徴となり、全共闘(全学共闘会議)と呼ばれる運動が成立し、多くの大学で同様の運動が広がることになった。しかし、最終的には政府と大学側の措置により、運動は収束していった。
三島由紀夫は、1960年代の反体制運動や学生運動に対して非常に批判的だった。彼は国家や文化の重要性を強調し、当時の学生たちが掲げる反体制的な思想や運動に対して強く反発していた。
三島は、日本の伝統や武士道精神を重んじる立場から、当時の学生運動を軽蔑し、批判した。彼にとって、自由や安易な平和を求める運動は、闘志や国家への忠誠を欠いたものであり、逆に日本の精神や文化を脅かすものと考えていた。
三島由紀夫と東大全闘争の関係は、彼の思想的立場と当時の社会運動の対立を象徴するものであり、三島自身は反体制の動きに背を向け、むしろ伝統的な価値観や国家の重要性を主要なテーマとしていた。この対立は、彼の最期の行動や思想に至るまで影響を及ぼした。彼の死後もこの時代を象徴する出来事として日本の歴史に残り、様々な解釈や議論の対象となっている。
〖現代と三島由紀夫について〗
三島由紀夫は、何故自死したのか?
そして未だに、何故議論が終わらないのか?
一体何を訴えていたのか?現代人からしたらその時代の熱量が強すぎて理解に苦しむだろう。
しかし三島由紀夫が恐れていた命題は、じわじわの我々の時代において迫っている。
その理由として3点程挙げられる。
1.第三次世界大戦が起こる可能性。
ロシア・ウクライナ戦争勃発後、イスラエルとガザの戦争等々続々と戦闘の火種が飛び火している。今後、中国が台湾進行もおかしくない。日本は、第三次世界大戦の渦中に巻き込まれる可能性は否定できない。
2.南海トラフ
今現在、大型地震が続いている。これは首都直下型地震や南海トラフの到来を示唆している。また静岡県の富士山噴火が勃発や環境破壊からくる異常気象によって日本社会が崩壊する危険を予想できる。
3.資本主義社会の限界
何度も人類が経験してきた、経済資本主義クライシス。問題は、貧富の差(力の差)が広がり、食料危機、難民問題、スリム化等々課題は山積だ。また上記の世界大戦や南海トラフによって日本国は壊滅的状況に陥ることは、容易に想像できる。
三島由紀夫が何と戦っていたのか。
それは専門家に任せるとして、我々に出来ることは何だろうか?
私は三島由紀夫を見ていると、人間とは熱量で決まるんじゃないかと感じてしまう。
生命が絶滅寸前の危機に瀕した時、圧倒的進化を成し遂げてきたのは、生きる熱量だと思う。人類も社会システムの適応化によって、生物 界の覇者となったことも、血生臭い戦いと知恵によってである。その野性と理性の狭間に、人間的生命力のヒントが見え隠れしないだろうか。
ある意味乱雑さもある、エントロピー人間学といえようか。
\\[ S = k \\ln \\Omega \\]この熱量こそ、三島由紀夫が我々に訴える方程式なのかもしれない。