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小説 のだくん14
実行委員長になって3ヶ月目。僕はあまり乗り気ではなかった。その時整体の店長をしていたし、プロレスパフォーマンスをして忙しかったからだ。何より不登校ひきこもりが集まるとは思っても見なかった。ミュージカルyを始める第一の課題は、人集めだ。そもそも外に出られないひきこもりを集めるのは至難の技である。
ひきこもりにもランクがある。
最初は不登校で学校に行けない、行かない人。
第2ステップは3ヶ月~1年にかけてひきこもりが続いている人。
そして第3ステップは、1年以上ひきこもっている人。
現在不登校ひきこもりから10年~30年間を経た中年ひきこもりが続出している。これは外の世界より内の世界時間が多くなった結果で、順化適応の段階である。
ひきこもりも最初はキツい。
孤独だし、自己嫌悪や不安感が半端じゃない。
そして有り余る暇な時間に
、押し潰されそうになる。この時期に自分の本当の居場所や良い環境が手にはいると、人は変われる。
しかし人間は進化の過程で、慣れという得意能力をもつ。
無人島の生活も2~3年もすれば恐らく慣れる。石の上にも3年とはこの事だ。
僕達が、対象にした人は全ての人だ。
しかし恐らく第2ステップのひきこもりしか集まらないだろう予測はしていた。
自分の経験上飛躍的に変わるひきこもりは、第2ステップで第3ステップになると順化適応が進み過ぎて、もっと基本的リハビリが必要になる。ミュージカルをするにあたっては身体も心もついていかない。
しかしミュージカルはどうなんだろう?疑問のまま募集ポスターを掲示板に貼る。
募集人数は100人とトンでもない人数を想定して集めていた。
脚本家、演出家、振り付けし、作詞作曲家、音響、照明、舞台美術、ダンサー、役者、実行委員、ボランティア、その他スタッフのぼしゅうは困難を極める。
今ところスタッフは4人。
マリオ、豚ピッぴ、俺、あと一人はトミーだった。
トミーの紹介をしよう。 彼は生粋のひきこもりである。
彼との付き合いは長い。
小学生の時キャンプ上で出会う。
僕たちは山が好きな、ひきこもりであった。
何故かキャンプが終わっても、トミーは野田家に居座った。野田家ひきこもりになった。
その後やはり格闘技にはまり一緒にプロレスパフォーマンスをする仲間になる。
成り行きでミュージカルyの実行委員にもなっている。
そしてやる気のない僕に情報をくれたのも彼だった。
ワークショップをしよう!そう決まったそうだ。そしてポスターには、不登校ひきこもり募集!と書いたそうだ。
そして当日になったそうだ。
僕の予想は0人。
来る筈ないのだ。
ミュージカルの団員募集!不登校ひきこもり集まれ!かなり危ない団体にしか見えない。
警戒心の強い彼らには見向きもされないだろう。
と思っていた。
ワークショップの当日。
その日も僕は仕事で、ワークショップは欠席だった。店長は忙しいのだ。
そして夜。
疲れた身体を癒す為にシャワーを浴びる前、トミーからメールがきた。
〈終わった〉
いつも通りの単文。
〈どうだった?誰も来なかったでしょ?〉
と僕。
〈いや、、、〉
とメールが暫く来なくなる。
面倒くさいので電話をしてみると、予想と違う。
なんと不登校ひきこもりが来たのである。
トミー曰くステップ3のひきこもりで超個性派が何人も!!
もしかしたら100人集まるのではないか??
しかも脚本もない内から一年後に公演も決定していた。これは、本腰をいれて活動しないと大変なことになるのでは?そう考えていた。