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胃袋は正直で助かるが

ご飯は腹八分目にしましょうね。
 
学校の保健の勉強でも社会人になっても
定期的に目にするあの言葉。
 
胃袋の満たされ具合。
 
自分だけが知っている秘密。
 
小柄で胃袋の大きい人が感じる腹八分目は
食べ過ぎなんじゃなかろうか?
 
大柄で胃袋が小さい人が感じる腹八分目は
栄養失調ではなかろうか?
 
無意味な人の心配をしながら
中肉中背は緑のアイコンを開く。
 
ベトナム料理が並んだカートを眺めながら考える。
 
食べ切れるだろうか?
 
満腹虫垂に生じたバグとの戦いは
食前に始まっているのだ。
 
僕は頑張った自身を労いたい夜か
何か忘れたい夜に手を伸ばす。
 
好きな物、食べてもいいよね、どこまでも。
 
ベトナムチキンボウル
ベトナムサンドウィッチ
ベトナム春巻きロール
 
ベトナムチキンボウル
ベトナムサンドウィッチ
春巻き、加えて、消してを、繰り返す。
 
お金は不思議なもので
人を狂わせ、人を鎮める。
 
並んだ金額を冷静に凝視した結果
春巻きが家の玄関を跨ぐ事はなかった。
 
食欲をパンパンに満たす事で鎮まりたい時は
ベトナム料理を食べる事をオススメする。
 
ジューシーな肉、野菜、大量の白米。
 
邪な欲を満たしながら、栄養もくれる。
Mで罪なアイツとは訳が違うのだ。
 
チキンボウルを完食した
僕はお腹一杯になっていた。
 
残されたサンドウィッチ。
 
昔は食べられたサンドウィッチ。
 
食欲と胃袋は違う。
 
今日はお腹をパンパンにして
欲望を満たしたい夜だったのに
僕の胃袋が首を横に振る。
 
胃袋が今日はお終いねと言ってくれたようで
不思議と清々しい気持ちになる事ができた。
 
午後七時。
 
ただ、その後、またお腹が減って、頬張った、結局。
 
午後十一時。
 
まだいける。と気持ちは昂っていたが、
胃袋がバツを掲示したので大人しく寝た。
 
胃袋は正直でとても助かる。決めてくれるのだから。


一時期、友達から、あるメッセージがよく届いた。
 
マッチングアプリのやり取りの結果報告である。
 
僕からそんな報告をお願いした覚えはない。
 
「この子からメッセージ来なくなった。どうしよう。」

「最近、やり取りが続いてきた。」
 
心の底から、知らん、知らん、と思いつつも
暇だったので、適当に相槌を打っていた。
 
彼は面喰い。写真が何度も送られてきた。
 
失礼な話、彼が釣り合うとは全く思えなかった。
 
滑稽だ。
 
酒に酔った勢いで爆弾を投下した。
 
「ほんま、面喰い。無理やで。」
 
「それは分かっている。けどさ、望むのは勝手や。」
 
彼には自身の欲が在る。
 
滑稽だ、と思う感情は
自分にはない物を魅せられた
拒否反応なのかもしれない。

僕から見えた彼への評価なんて
お構いなしなんだから。
 
指が疲れたか、最近は活動休止中らしい。
 


欲とは何だろうか?
 
欲があらゆる願望と定義するのであれば
僕の欲は萎んできているような気がする。
 
想像する外側からの見え方によって
膨らんだり萎んだり。
 
内側で、やっぱ、俺駄目な奴だ。と思えば
外側で、彼は駄目な奴だ。と思われている事を想像する。

そんな僕は高望みしては駄目だと
勝手に自身の欲を萎めていく。
 
ある意味、想像上または実際に他者から見られる自分を通して
こさえた欲望が僕の欲望になっているのかもしれない。
 
若者?(もう該当しないけど)にありがちなのか
自分の欲すら決める事が出来ないのだ。
 
 
米国を見ると、日本は意外と自由なのかもしれない。
 
人種によって給与の乖離もない。
寄付額に基づいた教育格差もない。
他国の人達と職を奪い合う事もない。
 
ただ、決める事が出来ない人間に自由は重く伸し掛かる。
 
自由を目の前にして、決められない事は、
いつまでも見えない不安と戦う事なのかもしれない。

リストカットをする人達は痛みを肌で感じる以外に
自身のアイデンティティを確立できないからだと誰かが言った。

膨れ上がる食欲を片目に
胃袋にお伺いを立てて決めるのか。
 
今日はこれを僕は食べると
胃袋を相談して決めるのか。

目的なしに気絶する為に食べるのか。
 
どちらにしよ、自身の在り方を決めているのだろう。


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