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【全24試合プレイバック】スガコバの「キセキ」Vol.3
シーズン前はこんな「奇跡」が起こるなんて思いもよらなかった。
菅野智之が登板した24試合、全て小林誠司がスタメンマスクをかぶった。
幼いころから母親の影響でジャイアンツファンだったけれど
こんなにも好きになったきっかけは紛れもなく“スガコバ”バッテリーの存在。
私にとって宝物のようなシーズンだった今季。
2人の全24試合の「軌跡」を振り返りたい。
***
「3試合目:虎の子の1点を守れず! 大勢がサヨナラ負け投手に」
4月18日 巨人1-2阪神タイガース戦@甲子園
先発:菅野智之(巨人)vs 西 勇輝(阪神)
スガコバの試合は勝っても負けても面白い。
点の取られ方にもストーリーがある。
そう感じるのは私がスガコバファンだからだろうか?
1回裏から巨人バッテリーはピンチだった。阪神の2番中野拓夢にツーベースヒットを打たれ、3番森下翔太にはフォアボール。4番大山悠輔をセンターフライに打ち取るが2アウト1、2塁でバッターは5番の佐藤輝明。いくら調子が上がっていないとはいえホームランバッターだ。一発を警戒しなければならない。しかし、菅野は佐藤の打ち取り方を心得ていた。アウトコースの落ちる球を見せた後に高めのストレートで空振り三振。無失点で切り抜けた。
小林がまた打った!
2回表、1アウトから5番丸がレフト前ヒットで出塁。続く6番泉口友汰のあたりはライト前へ抜けるかと思われたが、阪神のセカンド中野の好プレーでアウトに。この間に1塁走者だった丸は2塁へ進んだ。2アウトながら得点圏にランナーを置いてバッターは7番キャッチャー小林誠司。カウント1ボール2ストライクからの4球目、低めに落ちるチェンジアップにおっつけるようにバットを出し、センター前ヒット。4月11日のヤクルト戦に続き、先制点をあげた。打てない代名詞のように言われている小林だが今季はいいところで打っている。小林が打つとベンチが盛り上がる。菅野の嬉しそうな笑顔も映し出された。小林ファンにとっては、毎試合後に欠かさず行っているというウエイトトレーニングと素振りの積み重ねが報われたと感じられる瞬間でもあった。
菅野と西。互いのリスペクトを感じる師弟関係
阪神の西は1点取られはしたがその後は無失点ピッチング。巨人の菅野もヒットを打たれながらも要所を締める投球で得点は許さなかった。自主トレを共にしたこともある師弟関係の菅野と西。お互い、投げている球にいつも以上に力がこもっている気がした。また、バッターボックスに入るたび「打ってやる」と闘志をむき出しにした構えをしたり、空振りした後に「やっぱ打てないっす、先輩の球」みたいな表情をしたりしているのもエモい。決してなれ合うのではなく、リスペクトしているからこそ真剣勝負を楽しんでいる様子が、見ていて心地よかった。
東海大相模の後輩・森下に同点打を打たれる!
8回表まで1-0。ここまで来ると巨人がこのまま勝つのではという期待が高まる。ところが8回裏、西の打席でピンチヒッターの前川右京が送られると流れが傾いた。菅野が投げた球はインコースに構えていた小林のミットよりも真ん中付近に甘く入り、前川は見逃さずにレフト前ヒット。1塁の前川に代わり、ピンチランナーは植田海。足で揺さぶりをかける。続く近本光司もヒットを放ち、1アウト1、2塁に。2番中野はバントの構え。中野の打球はピッチャー前に転がる。菅野は抜群のフィールディングで3塁へ投げ、走者をアウトにした。流れを巨人サイドに引き戻したかと思ったがバッターは3番の森下。菅野は勝負強い森下に苦手意識があるのか投げにくそうにしていた。森下は見逃せばボール球を見事にレフト前へ打ち返した。開幕から20イニング無失点だった菅野は21イニング目で失点。ここまで抑えてきた菅野を攻めることはできない。2回以降、打線が追加点を取れなかったのが痛かった。
大勢、負け投手になる
これで阪神の西の負けは消えた。しかし、菅野はこのまま逆転されると負け投手になってしまう。それを救ったのが2023年のドラ1ルーキー西舘勇陽だった。菅野はマウンドに来た小林に「誠司、ごめん」と言って小林の胸をポンと叩き、悔しそうな表情でベンチへと下がった。1アウト1、2塁。依然ピンチは続く。西舘はきっと内心は動揺しながらもポーカーフェイスで4番大山悠輔をライトフライに。5番佐藤輝明には粘られ四球を与えたものの6番ノイジーをファーストフライに打ち取った。制球が定まらないながらも踏ん張り、同点で抑え切り、菅野を負け投手にはしなかった。
同点で迎えた10回裏、巨人の守護神・大勢から佐藤輝明がプロ初のサヨナラタイムリーを打って試合終了。豊富な球種で打席ごとに組み立てを変え、佐藤を3打席連続空振り三振に仕留めた菅野。変化球の調子がよくなく直球で勝負するしかなかった大勢。こんな日もある。だから野球は面白い。佐藤のサヨナラヒットだけが記憶に残りがちだが、菅野と西の対決、菅野と小林の配球は結果以上に見応えのある試合だった。
次もスガコバが作る試合に期待したい。