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【全24試合プレイバック】スガコバの「キセキ」Vol.4

シーズン前はこんな「奇跡」が起こるなんて思いもよらなかった。
菅野智之が登板した24試合、全て小林誠司がスタメンマスクをかぶった。
幼いころから母親の影響でジャイアンツファンだったけれど
こんなにも好きになったきっかけは紛れもなく“スガコバ”バッテリーの存在。
私にとって宝物のようなシーズンだった2024。
2人の全24試合の「軌跡」を振り返りたい。

***

「4試合目:勇人さん、ありがとうございます」

4月25日 巨人3-2中日ドラゴンズ@東京ドーム 
先発:菅野智之(巨人):柳裕也(中日)


共に最優秀防御率、最優秀バッテリー賞を取ったことのある菅野智之と柳裕也の投げ合い。前日に予告先発が発表されたときから楽しみにしていた。2023年8月、柳が広島戦で幻のノーヒットノーラン(9回無安打無失点で0-0のまま降板。延長戦でサヨナラ勝ちしたが勝利投手はマルティネス)を成し遂げたときに、菅野と中日の大野雄大が柳のために祝勝会をしたとの報道があった。ノーヒットノーランを達成した経験のある2人から「本当にすごいね」とお祝いされ、柳も「ノーヒットノーランよりもはるかに嬉しかった」とコメント。記録には残らないけれど、より鮮やかに温かな記憶として残っているに違いない。そんな交流のある2人の対戦が始まる。

両チームの2塁手が守備で魅せる

初回、菅野は先頭の岡林勇希にセンターへ抜けそうなあたりを打たれるも、名手・吉川尚輝が逆シングルで華麗にさばき、アウト。菅野はグラブを叩いて吉川を称賛。わずか7球で中日打線を三者凡退に仕留めた。対する柳も初回からエンジン全開。1番門脇誠、2番ルーキーの佐々木俊輔を連続三振。3番坂本勇人を二ゴロとこちらも7球で初回を終えた。坂本の打球はイレギュラーバウンドで誰もいないところへ飛んだが、中日のセカンド、田中幹也が俊敏にキャッチしてアウト。166㎝と小柄だけれど体幹が強く、捕球してからの送球も早くて正確。見ていて気持ちいい守備。2回表にも丸佳浩の打球を忍者のような身のこなしでキャッチし、アウトにしていた。3回表は中日の8番・村松開人がセカンドの頭上をはるかに超える打球を放ったが、吉川が絶妙なタイミングでジャンプしてキャッチ。難しい打球も吉川が捕ると簡単そうに見えるから不思議だ。両チーム共、2塁手の堅実な守備に阻まれ、4回まで0-0が続いた。

#なぜ坂本勇人は神なのか

均衡が破れたのは5回表。8番村松がヒットで塁に出ると9番柳がすかさず送りバント。1アウト2塁から1番岡林のタイムリーツーベースヒットで中日が1点を先制した。さらには6回表に5番細川成也がソロホームランを打ち、追加点を挙げた。

巨人は柳の巧みな投球術の前に5回までノーヒット。今日こそ真のノーヒットノーランになってしまうのでは。6回表に2-0になった時点で、私の中では絶望感が増した。チームが負けることも悲しいが、スガコバが解体されてしまうのは?という思いがよぎる。阿部監督がスガコバに求めているのはクオリティスタート(6イニング3自責点以内)でもハイクオリティスタート(7イニング2自責点以内)でもなく、「先制点を取るまで、とにかく相手を0点に抑えること」のように感じていた。ただの私の憶測ではあるが、スガコバは常にそういう気迫を持って試合に臨んでいたように思う。

「次はバッテリーが変わるかも……」
ガックリとうなだれる私に一瞬で希望の光が差した。

6回裏、2アウトから坂本勇人が逆転のスリーランを放った。11試合ぶりの3号ホームラン。ありがとう、勇人! 「♯なぜ坂本勇人は神なのか」そのハッシュタグの意味が心からわかる。何回言っても足りないよ。ありがとう、ありがとう!

7回からは西舘勇陽、8回バルドナード、9回大勢の盤石のリリーフ陣で菅野に3勝目をもたらした。大勢が9回に村松から見逃し三振を奪ったとき、今見返すと少しだけストライクゾーンより低めに感じる。「小林のキャッチングだよなぁ」と素人ながらつぶやいた。リリーフ陣の調子のよさは大前提として、チームを、菅野を勝たせたいと願う小林の気持ちの強さも投手たちの強気のピッチングを引き出している気がする。先発投手に勝ちをつけるには継投するピッチャーをリードするキャッチャーの力量も大きいと思う。

ヒーローインタビューに立った坂本と菅野。インタビュアーに「坂本選手に何か言いたいことはありますか?」と訊かれ、菅野は「言いたいこと……? 勇人さん、ありがとうございます!」と言って東京ドームを沸かせた。

一発に泣いた柳。一発で笑顔に変わった菅野。野球は最後までわからない。

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