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【全24試合プレイバック】スガコバの「キセキ」Vol.6

シーズン前はこんな「奇跡」が起こるなんて思いもよらなかった。
菅野智之が登板した24試合、全て小林誠司がスタメンマスクをかぶった。
幼いころから母親の影響でジャイアンツファンだったけれど
こんなにも好きになったきっかけは紛れもなく“スガコバ”バッテリーの存在。
私にとって宝物のようなシーズンだった2024。
2人の全24試合の「軌跡」を振り返りたい。

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「6試合目:スガコバの作戦勝ちで菅野4勝目」

5月11日(土) 巨人 4‐3 東京ヤクルトスワローズ@神宮球場
先発:菅野智之(巨人):小川泰弘(ヤクルト)

見どころの詰まった試合だった。
「岡本和真、2打席連続ホームラン」「菅野1500奪三振達成で4勝目! 巨人単独首位」というトピックスで端的に言い表せるほど簡単に勝てた試合ではなかった。ヤクルト打線は強力でしぶとかったし、流れを渡しそうな場面もたくさんあった。勝因はなんだったのだろう? 6つのポイントをあげてみたい。

1.ヤクルト打線を抑えるためにスガコバが練ってきた戦略

初回から菅野はピンチを迎えた。ヤクルトの1番塩見がショートへの内野安打で出塁すると、2番丸山もヒットで続き、あっという間にノーアウト1,3塁。3番オスナ、4番村上、5番サンタナの最強クリーンナップが巡ってくる。スガコババッテリーは「3人で1点に抑えればいい」、きっとそんなプランを描いていたと思う。オスナには犠牲フライを打たれて1点を先制されたが、村上は空振り三振、3・4月月間MVPのサンタナをショートゴロに打ち取ってスリーアウト。結局、オスナも村上も菅野に対して3打席ノーヒット。サンタナは1,2打席がノーヒット、やっと3打席目にシングルヒット1本。この3人に単打は許しても長打、連打は許さない戦略でヤクルトの強力打線を7回まで2点に抑えることができた。

2. 岡本和真のホームランだけで終わらなかった4回表の攻撃

1回裏に先制された後、2回表すぐに巨人の主砲・岡本がソロホームランで振り出しに戻してくれたのが大きかった。4回には2打席連続となるホームランを放ち、2点勝ち越した。さらには下位打線の秋広、小林の連続ヒットで4点目を入れた。ホームランだけで終わらず、ヒットでつないで追加点をもぎ取ったのがよかった。結果的には小林のタイムリーが決勝点となった。

3. 200号本塁打まであと1本。4番村上宗隆との6回裏の真っ向勝負

固唾を飲んで見守ったのが6回の菅野vs村上の打席。村上は今季当たっていないといっても日本一のスラッガーだ。菅野は内→外→内と投げ込み、村上もファールで粘ってついてくる。ストレート、スライダー、カーブを織り交ぜながら様々な軌道で揺さぶる。そして8球目、村上は内角低めの縦に落ちるスライダーを空振り三振。小林は菅野を指差して称賛、菅野はガッツポーズ。いいな、このシーン。解説の館山昌平さんも「今季の菅野投手はほんとにテンポがよくなりましたよね」「小林捕手と会話しながら、アイディアを出しながら、勝負を楽しんでいますよね」と話していた。村上から通算1500奪三振目を奪った菅野は試合後「いい打者からとれたらいいな思っていた。思い出に残る記録だと思う」と語った。

4. 流れを渡さなかった坂本勇人のファインプレー

4-2で迎えた7回裏、ノーアウトからサンタナがヒットで出塁。菅野の99球目だった。次は2安打(内1ホームラン)を放っている長岡。ここで阿部監督はスパッと投手交代。左腕の大江がマウンドに上がった。長岡は3塁線にバント。絶妙な角度、勢いの殺し方で、長岡の足なら1塁もセーフになりそうだ。しかしサードにコンバートした坂本が魅せる。素早くキャッチし、難しい態勢からの正確な送球。サンタナは2塁に進塁したが長岡はアウトに。

5. ピンチの場面での大江竜生の開き直り投球

1アウト2塁になったものの、7回裏のピンチは続く。大江が2塁へ投げた牽制球が悪送球となり、1アウト3塁に。7番中村にもフォアボールを与え、1アウト1,3塁。大江は闘志を前面に出すタイプではなく、儚げな表情で淡々と投げるタイプ。見ているこちら側は不安が増す。続く打者は8番武岡に代わって代打・青木。怖すぎる。キャッチャー小林は両こぶしに力を込め「頑張れ、強気で!」と大江を鼓舞する。ジャイアンツベンチは慌ただしくなり、船迫が準備を始める。私は「大江~頼む!」と祈るしかできなかったが、ふと見ると大江の目に鋭い光が宿っていた。大江はコースを間違わないように小林の構えたミットに思い切り投げた。結果、4-6-3のダブルプレー。無失点で切り抜けた。そうだよ、開き直りが大事。大江、ありがとう。

6. 勝ち越されなければOKの小林リードとバルドナードの踏ん張り

4-2のまま試合は進み、9回裏ヤクルトの攻撃、巨人のクローザーはバルドナード。いきなりサンタナにフェンス直撃のツーベースヒットを打たれ、続く長岡もヒット。ノーアウト1、3塁となった。点差は2点。小林とバルドナードは0点に抑えるよりもアウトの数を増やすことを選択した。中村の併殺打の間に1点を返されたが2アウトになり、代打・北村拓巳をライトフライに抑えてゲームセット。

巨人は接戦を制し、単独首位に浮上した。
ピンチを作りながらも継投した投手陣は勝ち越しを許さず、菅野の4勝目を守り切った。
チームでつかんだ1勝。チームでつないだ価値ある菅野の4勝目だ。

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