幾つか
1997年10月19日(日)
彼はなかなかいいおじさんになっていた。
世界のあっちこっちでたくさんの人と係わって楽しく生きていた。
わたしは未だこどもなのに。二十代後半で。
中二のときの担任が「学校のお荷物なので自主退学してくれ」と言った。
わたしはもう卒業しちゃったから、中退してもいいかな、と思ったけど、返事が出なかった。悲しくもあった。
「お母さんに言うからね! もうがまんしないで言うからね!
なんでも嫌なことをわたしのせいにしないで!」
叫んで泣いた。胸が痛くてならなかった。
「ただいま」と言った。
母は完全に目を逸らして、ことばだけ「おかえり」と言った。
言い忘れた。
「おまえの為に、おまえの非道いお父さんのところから逃げないんだよ」なんて言わないで!も言っておきたかった。