わたしは幻想世界へ「生きているもの」「いのち」を持ちこむとして避けられ、排除されていた。
無菌室に有害な菌「いのち」「魂」「自分であること」を持ちこむ者。
赤い魂の塊を持って、締め出されたわたしは階段でうろうろしていた。
丸眼鏡の感じのいいおじさん(中村嘉葎夫さんに似てる)が階段を下りてきて「魂」はお湯に浸せばもどる、と教えてくれた。これはうれしかった。
ふたりの女の子が部屋に招き入れてくれた。寒々しくて狭かった。
愛想よく招いてくれたふたりだったが、わたしを好きではないことがやかてわかった。
思いっきり上げ底のぺらぺらな黒の器に盛られた豪華な料理を出してくれた。
いろいろな湯のみの中から好きなのを選んで自分でお茶をいれようとしたら、わたしに選ばせず、これどうぞと出してくれたお茶は少ししか入ってなかった。
全然食べたくなかったけど、食べようとして、お茶をこぼした。
そのときのふたりの目と目!
毒入りのお茶をわたしがこぼしたのを忌々しく思ったような、恐くて気持ちの悪い目配せ。
(子どものころの気分を味わった。)
*短篇
真っ黒な雲が覆う空の下をわたしは楽しく歩いていた。太陽がどこにいるか知っているし、いまに姿を現すことを知っているから。