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耳鳴り

耳鳴りがボリューム上げたのはいつかな?
疲れてごろんとして考えた。何ヵ月前だったか、あれ、耳鳴り、音おっきくなってる?って気づいて、え、いつからなんだろう?って思ってから、度々同じこと考える。そんなのわかりっこないし、わかったからなんだっていうのかってなことを毎回考えてしまう。
さいわい気にならないので、苦ではない。
耳鳴りを聴こう、はじめて思って、耳を傾けた。
暗い、寒々した午後のあの日の子どもが見えた。7歳か8歳だったかな。いまの自分よりもよほどあの子は疲れていた。眠りたかった。でも、お母さんはパートタイマーでわたしたちのために働いている、いま。だから、寝たりしちゃいけない。
安心して居られるところ──冷たくない、恐い目がない、のびやかに広がれる、ほのぼのとあたたかい、やわらかい──はどこにもない、とわかったのも同じころ。
次に、やっぱり暗くて冷ややかな誰もいない家でぼんやりしてる幽霊みたいな子が見えた。3歳くらいか?
次に、寿司桶の丸い輪の中でたこさんの形に並んだ鉄火巻きが見えた。あしは8本もない。はじめの1日2日か3日はおいしく食べた。おいしかった。何日目かな、もう食べたくないと思った。お父さんの暴力でお母さんが何度目かの家出をしたとき、5歳か6歳のときのこと。


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